過去の自分と気が合わない
花粉症の季節である。
鼻炎に主に症状が偏るため、ここ数年は「小青竜湯」を愛用している。物凄い味がするが、眠くもならないし口も乾かないし、何より鼻炎がすっきり収まるのが気に入っている。味は慣れないが。
今日も今日とて保湿ティッシュと仲良くしていたら、平素あまり話さない人に声を掛けられた。名前から取ってDさんとしよう。別に仲が悪いとかではない。単純に仕事が被らないので話す機会がないだけである。去年までは担当部署も違うし。
「H病院の件なんだけど、今度リプレースするんだよね」
「そうみたいですね」
「手伝って」
いつかと聞いたら、ゴールデンウィークだと言う。
まぁ別にいいけど。
元々H病院は私が新人の頃にやった仕事だから、概要は知っている。そこのリプレースなら、私に声が掛かるのも至極当然だ。
現在使用している機能を新しいシステムでも継承する必要があるため、その仕様書を書いて欲しいと言われた。勿論その機能は自分で仕様書を作ったものなので、どういうものかは大体覚えている。かなり昔なので忘れてしまっている部分もあるが、過去の仕様書を見ればわかるだろう。
そんな気持ちで、過去の資料の中から当時の仕様書を見つけて開いた。
結論から言う。
何が書いてあるのか、半分ほどわからなかった。
一体こいつは何を言いたいのか。何の動作を行ったら、この結果になるのか。そもそも対象となるデータベースは何処なのか。
わからない。こいつとは話が通じない気がする。
要するに未熟だった頃の仕様書なんて、誰かの真似でしかなく、自分で全て理解などしていない。そして周りも「こいつ新人だからね」という優しい気持ちで内容を汲み取ってくれるので、残された仕様書はこういうことになる。
よりにもよって、記憶に薄い箇所に限って何を書いてあるのかわからない。まぁそんな状態だから覚えてないのだろう。当然のことである。
一年前の仕様書だって、偶に見返すと「何だこの記述……」と自分の阿呆さに嘆きたくなるのに、新人時代なんてもはや黒歴史に等しい。そういえばこの時に開発に頓珍漢なことを言って、遠回しに窘められたなぁ、なんて余計な記憶まで思い出して額をデスクに打ち付けそうになった。
結局、調べないとわからない箇所がいくつか発生したので、Dさんに素直に報告した。Dさんは大体事情を察してくれたのか、次に現地行くときに同行することを許可してくれた。
まぁとりあえず、今は新人時代よりはマシな仕様書が書けているので良しとする。
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