資源は大事にしましょう
カクヨムプライベートコンテストで、テーマが「魔法×ミステリ」だったので、参加してみた。
しかしいつもは半月ぐらい考えてから書き始めるから、今回のような「そんなコンテストが!?書かなきゃ!」と勢いで書くと疲れる。
結果として八千文字になったが、まぁ割りと書けた方ではないだろうか。
書くと言えば、普段から仕様書を山ほど書いている。あれは何年書いても完璧にはならない。前に会社から「新人に教えるために仕様書の雛形を確立しろ」と無茶を言われたので、スルーを決め込んだ。あれから三年経過したが、まだその指示は宙に浮いている。
普段書く仕様書は、平均二十枚程度である。
これまで書いた中で最も多かったのは、三百枚だった。書いているうちに自分が今何をしているかさっぱりわからなくなるほど、その量は膨大だった。
それもただ、文字だけ書いたり、画面イメージだけ貼りつける訳では無い。
偉大なるmspaint(Windows標準)を駆使して、実装したいイメージを作り、それを貼り付け、動作と仕様とフローチャートなどを書き込んでいく。これをしないと開発から親指を下に付き下げられる。
なお、イラストレーター的なものは使えない。何も知らない人が「そんなのあのソフト使えば一発じゃん。なんで使わないの。会社に掛け合わないの」と鼻の穴を膨らませて言ってきたことがあるが、たかが平面イメージ描くのに必要とも思えない。それに会社として必要なものに達していないから仕方ない。
最終的にロゼッタ・ストーンみたいになった仕様書を、エンドユーザーに見せるためにプリントアウトする。この作業だけはどうにかならないかと思う。デジタルデータは改竄などのリスクを伴うから仕方ないといえば仕方ないのだが、コピー機の前で虚ろな目でプリントアウトされる時間を待つのが虚しい。
三百枚超えの仕様書を抱えて、さてこれをどうやってまとめようかと悩む。
普通ならホチキスでまとめるが、この分厚い仕様書を貫けるホチキスは弊社にはない。
パンチで穴を開けて紐を通すか?
まぁ今ここにある物で済ませるにはそれしか無さそうだ。
しかし業務用のパンチは壊れている。先日、お茶目な部長が段ボールに穴を開けようとしたからだ。呪われろ。
片手で持てる普通のパンチを持ち、椅子に座る。そして十枚ずつ取っては二つに折って、その折り目を目安にパンチで穴を開けることを繰り返した。
何だろう。嫌とか面倒とかじゃない。気分が下がる。
煙草を吸いに行きたいが、これを放置して行けば、周りに私のだらしなさがバレてしまう。だから我慢して穴を開ける。
暫くすると、マネージャーがやってきた。
山積みの仕様書を見て、ひとしきり笑ったあと、ペラペラと紙をめくる。そして、ふと何かに気付いて眉を寄せた。
「何ですか」
「これ、ページ番号変だよ?」
はい?
捲られている紙を覗き込むと、下部中央に表示されているページ番号が、途中から全部同じ数字になっていた。
ああぁあああ、コピー元間違えたァァァァァ。
「これ直せる?」
「直さなきゃ駄目ですか」
「駄目だよ……お客さんに渡すんだから」
そうだよなぁ。そうなんだろうなぁ。
このあたりがちゃんとしていないと、プロジェクト管理が出来ていないって評価になるし。
「じゃあもう一度プリントアウト……」
「あ、さっきコピー機に点検に入ったから暫く使えないよ」
この仕様書、いつ持っていくんだっけ。あぁ、あと三十分後か。
点検が終わるのを待っていたら間に合わない。
仕方なく、ペンケースからボールペンを取り出した。
存外、システムエンジニアなんてアナログな生き物なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます