梅田という魔境
※完全な私見が混じっていますが、無害です
一年半ぶりぐらいに大阪行った。
電話越しに「面倒な作業が沢山あるんだよねー。来る?」という雑な誘いを受けたためだ。でもまぁ大阪は嫌いではない。食べ物は豊富だし、電車も東京ほど混んでいない。
だが梅田は駄目だ。梅田はわからない。
東京の駅に慣れ親しんでいると、梅田の駅は何と言うか「哲学が違う」。
東京の駅は土地の関係か「小さくて四角いフロアを沢山重ねてる」ことが多い。同じフロアに別の路線が突然絡んでくることは少ない。新宿駅だってそうである。JR線の中には沢山の線路があるが、どれも同じ方向を向いて整列しているから、自分の乗りたい路線を見つければあとは一直線である。
梅田は平面上に複数の路線が複雑に絡み合い、かつ突然「北新地」「東梅田」と違う駅の名前が出てきてしまうので困惑する。
慣れた人なら「そんなのちゃんと案内板見ればいいんだよ、この方向音痴めが」と思うかもしれない。無理。だって矢印の出し方が東京と違う。どうして途中で矢印を消すんだ。東京みたいにしつこいほどに矢印を壁にデデンと書いておいて欲しい(例:新宿駅)
私は池袋の駅は得意である。あれも平面だし、「西口にあるのが東武デパートで東口にあるのが西武デパート」というややこしい作りをしているために疎遠されがちだが、私にとっては容易い。
何故かというと、何度も通ううちに徐々に範囲を広げていったからである。頻繁に使う安全地帯を覚え、そこから横に逸れてみたり、別の道を探すことで駅全体を理解した。要するに平面駅に慣れるには何度も通って「絶対にここにならたどり着ける」という道を得なければいけないのである。そうしないと漏れ無く迷子。
魔境を抜けて作業場に向かうと、呼び出した当人が待っていた。
そこからは道に迷う心配もないし、慣れた作業なので楽なものである。鼻歌交じりに仕事をし、気付いたら九時を越えていた。
「どっかご飯行きましょうよ」
「いいけど、何処にする?」
「梅田。具体的には大阪駅の方から桜橋口を出るのに都合がいい場所」
「注文が多い」
「いいの! そこまでわかればホテルに辿りつけるの!」
可愛くもない駄々を捏ねて、梅田のよくわからない場所で焼き鳥を食べた。
酒を飲みながら口から出るのは「梅田わからない」ばかりだった。
「でも僕は池袋わからないけど」
「池袋簡単でしょ。線路は全部一方通行だし、駅の名前が途中で変わったりしませんもん」
「だからわからないんだって……。丸ノ内線と有楽町線とか似てるじゃん」
似てるかぁ? と思いながらハイボールを煽る。
社会人の「ご飯」は呑みである。白米を食うことはまずない。
飲みながら頭の中で、今日行くべきホテルの地図を思いだす。時期が時期だったために駅から少し離れた場所にあるホテルしか取れなかったのである。予約時に見たルート案内には確かにこう記載されていた。
大阪駅桜橋口から徒歩十分。
梅田の魔境から私が抜け出せるのはまだまだ先な予感がする、深夜十一時。
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