最近のことと常日頃

 あるプロジェクトの社内ミーティングに出た。各システムでチーム編成されていて、それがほぼ全員集まって行うから、自ずと借りる会議室も大きくなる。それでも席順なんてものは決まっていないから、同じチームの人とバラバラに座ることも珍しくない。


 プロジェクトマネージャーがチーム毎の近況を確認していく。リーダーがそれぞれ、現在の状況と今後の予定を述べる。その中で私の属するチームが名指しされた時、一応リーダーとなっている人はコンマ二秒で私の方に報告を投げた。


「俺知らないから、淡島さんから聞いて下さい」

「何で知らないんだよ。ちゃんと把握しておけよ」


 プロマネは呆れたように言いながらも、時間が勿体無いので私に報告を促す。突然の無茶振りにも慌てることはない。何故なら予想の範囲内だから。


 一連の報告が済むと、プロマネは課題事項の確認を始めた。大型案件は気付くと課題が降り積もる。なのでこうして全員で情報共有をしておかないと、すっかり忘れて後で泣きを見る。


 課題の中に、後から追加になったシステムを構築する、という内容があった。内容は誰でも出来るが、皆出来ればやりたくない。純粋に作業が増えるからである。

 プロマネの「立候補で」という言葉が虚しく響くのも当然だった。

 十分ほど、皆で押し付け合いをしていると、業を煮やしたのかある善良な市民が「じゃあ俺が、Aさんとやりますよ」と言った。

 Aさんこと、説明ぶん投げリーダーは「別にいいけどぉ」と言いながら私の方を見る。


「俺が余計仕事しなくなると思って、淡島さんが凄い嫌そうな顔してるよ」


 自覚あるなら仕事しろよ! と言いかけてやめる。無駄だから。

 プロマネはより一層の呆れ顔で私とAさんを見たが、何も言わなかった。その後喫煙室でプロマネが私のところに来て、ミーティング中のやり取りについて確認をされた。


「Aは淡島さんの仕事把握してないの?」

「してないんじゃないですか」

「この前のベンダへのメールも淡島さんが出してたけど、Aは休みだったよね? 相談とかしなかったの?」

「してませんよ。どうせやるの私ですもん」


 プロマネは苦笑いしながら煙草のフィルターを噛み締めて「そこはちゃんと把握して欲しいんだけどなぁ」と言っていた。しかし私の知ったことではないので、やはり何も言わなかった。


 さて、問題は現在である。

 Aさんがやるはずだった、課題となっていた作業の応援依頼が私に来ている。不思議だなぁ、と思いながら断る文面を探している。どうせやることにはなるのだが、一応抵抗はしておきたい。


 因みにAさんとは、前にエッセイで書いた「メンタルが恐ろしく強靭な人」である。あんなにブレない人も、ある意味羨ましい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る