担当連携プレー

 サーバというのは、ちょっとした停電で落ちてしまってはいけないので、UPS(無停電電源装置)と呼ばれるバッテリーがついている。

 急に停電してコンセントから電気が供給されなくなっても、UPSから取ればいいという仕組みだ。


 ある時、現場に行ったらサーバの構築中で、さらに別件で営業が開発を伴って来ていた。こちらは保守の人に連れてこられた現場系SEなので、奇しくも同じ空間に「営業」「構築」「開発」「保守」「現場」が揃ったことになる。


 そんな面子でサーバルームで仕事についての他愛もない話をしていると、サーバを冷やすためにフル回転する空調の音に混じって異音が聞こえた。

 真っ先に気付いたのは営業だった。仕事柄耳はいい。ここから見事なまでの連携プレーが始まることとなる。


「何か音がしたよ」


 続いて、主にシステムやハード障害があると呼び出される保守が口を開いた。


「これはUPSの音じゃない?」


 言われてみれば、と行動力だけは良い現場(私)が床にしゃがみこんでサーバラックの下部にあるUPSを見る。黒い筐体についたパネルモニタは真っ赤なランプがついていて、そこに文字が浮かんでいた。


「エラーコード08!」


 読み上げたコードを聞いて、サーバを作るのが仕事である構築が慌てた声を出した。


「やばい! それコンセント抜けてる!」


 時間にしてわずか五秒だった。

 全員で抜けたコンセントを探したり、ラックの位置を直したりしても一分足らず。UPSは無事にコンセントを入れなおされて、ご機嫌な起動音に戻った。


 あぁ、びっくりした。気付いてよかった。

 五人も雁首並べておいて、UPSが落ちちゃいました、なんて洒落にもならない。

 胸を撫で下ろしながら、ふと傍らを見ると開発がボケッとした顔をしてそこに立ち尽くしていた。そういえば彼だけ何も発さなかったな、と思い出して声をかけてみると、なんとUPS自体を知らなかった。

 ハードに興味がなくてシステム開発だけしている人だから、まぁ当然と言えば当然かもしれない。でも手伝って欲しかった。


 システムは色々な人によって動いている。今回はたまたま上手く行ったから良いが、五人とも何も知らず、ピーピー煩い警告音を聞いても「なんだろうねー?」なんて疑問符飛ばしていた可能性だって無きにしもあらずだ。


 現場では何事にも気を配っていたほうが良い。きっといつか私も、自分のわからないことに巻き込まれる。例えば開発系とか開発系とか開発系とか。そうなったらどうしようか、なんて考えながら、今日も現場で気を張っている。

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