暇な時は暇

 気付いたら三万文字も書いていることに気付いた。

 当初から読んで下さっている方におかれましては、感謝申し上げると同時に大丈夫ですか? このエッセイが貴方の貴重な人生のリソースを割いてしまっていませんか? と、ある種の被害妄想に似た懸念を抱いていることを素直にお伝えする。


 ふと振り返ってみれば、社畜のような徒然を書き綴っているに過ぎないエッセイである。きっと読んでいる人の大部分は私のことをこう思っているのではないだろうか。「一年中忙殺されている社畜」だと。

 もしそう思っている方がいるなら、このあたりで誤解を解いておきたい。

 私達は忙しい時は周りをドン引きさせるほど忙しいが、暇な時はとんでもなく暇なのである。


 徹夜に休出、食事抜き。そんな苛烈な仕事を終えた後には驚くほどの暇が待っている。

 ゲームに例えるなら、中ボスの後にセーブポイントがあるようなものである。


 苛烈な仕事の時は、そこの案件以外は抱えていないことが多い。

 勿論、地位が上の人や有能な人は別である。私はどちらにも当てはまらないので、一つの案件で済んでいる。よって、稼働が無事に済むと暇になるのだ。だって他にやることがないのだから。


 大体は二週間から一ヶ月、それまでの忙殺が嘘のような安寧が訪れる。稼働した案件の報告書を作ったり、その間に出来なかったメールの処理などは行うが、それをやったところで深夜二時までかかったり、朝五時に出発する必要はない。定時出勤定時退社。極めて平和だ。


 だがそれにも罠がある。

 平和過ぎてやることが本当になくなるのだ。


 「いいじゃないか、やることがないなら」と思うかもしれない。しかし考えてみてほしい。九時から十八時まで何もしないのは、かなりの苦行に等しい物がある。

 休めば良いと思うかもしれない。でも一日ならいざ知らず二週間も続いたら有休なんてすぐに使い果たしてしまう。そもそも特に予定もないのにダラダラ休むほど暇ではない(矛盾)。


 朝会社に来て席に腰を下ろし、することと言えばExcelを立ち上げては閉じることのみ。白い画面がディスプレイに広がっては、また消える。それを延々と退社時間まで繰り返すのだ。することがないから。

 開発系ではないから開発に足るスペックのパソコンも与えられていない。本当に何も出来ない。ネットサーフィンをしようにも、私の真後ろは専務である。


 何もしなくて良い天国が、何も出来ない地獄へと変わっていく。

 そして、Excelのセルを数える作業にも飽きた時に、しみじみと思うのだ。


 嗚呼、仕事がしたい。忙しくなりたい。

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