睡眠時間の狂い
何年前のことか忘れたが、集合時間が午前一時だったことがある。
午後ではない。午前。終電で行くしかない時間である。何でそんな時間に? と思うだろうけど、色々事情があるのだ。本筋には関係ないので書かないが。
さて問題は普段の生活態度である。
SEをしていると、圧倒的に夜型になる。朝九時からフル回転で頭が機能することは珍しい。昼を跨いで次第に加速していき、午後六時から九時を目安として力尽きるような仕事をしている。
そんなわけで、夜の一時に脳が動くようになっていない。
前日は休みだったが、都合よく終電間際まで寝られるような体質もしていない。
午後三時に布団に入って、十一時に起きて、身だしなみを整えて終電で旅立つなんて無茶である。逆なら平気だ。夜十一時に布団に入って三時に起きるなんて容易い。
従って、私が取った行動は「睡眠は取らないが極力リラックスをする」ことだった。
前日の午後三時まで華麗なる爆睡を決めて、起床。それから身だしなみを整えてマッサージ店へ。「わー、肩がこってますねー」という聞き慣れた台詞に相槌を打ち、まどろみの世界へ。
充分にほぐされたあと、そのマッサージ店の近くにあるスパへ赴き、風呂に入ったりサウナに浸ること二時間。
完璧にリラックスをすることで、中途半端な睡眠より数段上質な休憩を手に入れた。
この時の私は、自分の思いつきの素晴らしさに感涙していた。
一時に間に合うように現場に向かうと、疲れきった表情の仕事仲間達がソファーに埋もれていた。何人かは無精髭を生やしている。きっと充分に休養が取れなかったのだろう。可哀想に。
彼らの分まで私は頑張ろう。この金を掛けてリラックスした身体で。
と思ったが現実はそんなに甘くなかった。
周りが眠そうにしていると、自分も引きずられるのである。
まして、マッサージ師に十分に解された体に、その効果は覿面だった。
午前二時、コーヒーをスティックシュガーの残骸でかき混ぜる人の前で、私は強烈な眠気に耐えていた。まだネットが繋がれば、パソコンで何か暇を潰すことも可能だが、作業場所は電波が届かない地下室。終わった。
嗚呼、人って周りに流されやすいんだな。
朱に交われば赤くなる。先人の教えは正しい。
そう思いながら私は、横で寝落ちした先輩の肩をぶん殴った。眠かったので手加減は出来なかった。三十分後に倍返しされた。
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