学生時代1

 今は昔、「システムエンジニアになる」と言ったら、大学の教授に「はぁ?」みたいな反応をされた。

 バリバリの文系で、卒論の『黄泉の国における魂の所在と肉体の定義』を手書きで出した後だから尚更だったんだろう。

 「君は研究室に呼ぼうと思ってたんだけど……」と言われたが、まぁ正直私もそっちの方が向いていたと思う。

 何しろコミュニケーション能力が低かった。電話もメールも満足に出来ないし、知らない人とはいつまで経っても打ち解けられないし、そもそも人の名前を覚えるのが苦手だった。

 もう大学時代の友達なんて半分も記憶していない。

 人に何を求められているのか全然わからないから、幼稚園でピーマンが食べれずに昼休みを取り上げられた時も目の前の給食トレイには見向きもせず、天井の模様を見て過ごし、先生を辟易させた。


 そんな人間がSEになったのは、こんなにコミュ力が必要だと思わなかったからである。もっと鬱蒼と茂りし電源ケーブルの下で黙って生きてるものだと思っていた。


 なのに気付けば、対人関係が物をいうチームに配属されていた。

 スパルタ上司に資料を渡されて「客に説明してこい」と言われ、なんだかんだ気付かないうちに、度胸が付いてきた。

 企業フェスで説明役にされて、五十人の前で製品説明。さして良くもない機能を魅力的に説明し、顧客を得ること複数回。

 客と仲良くなりすぎて、行くとポテチと珈琲をご馳走になる有様。

 酒を飲みに行く悪癖にもそれは付いて回って、常連として認識されてる店がいくつもある。


 今でも出来れば人と話さずに引きこもっていたいなと思うけど、昔みたいに苦ではなくなった。

 人生ってわからないものだ。

 しかし社畜とかにはなりたくないと、日々思いながら血反吐を吐いている。

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