彼女Side

「この服装、喜んでくれるかな……」


 私はそう独り言を言いながら、道路を歩いていた。


 これから彼氏に会ってデートする約束となっている。一年前に告白されてから付き合っている人で、割と話が合うと思っている。

 合流場所に着くと、噴水近くで立っている彼を見つけた。早速私は声を掛ける。


「ごめん、お待たせ。遅くなっちゃったね……大丈夫だった?」

「ん? ああ、大丈夫だよ。それよりも、その衣装似合うね」

「そ、そうかな……」


 彼が服装について褒めてくれた。嬉しくて頬が熱くなってしまう。

 


 ……でもこの服装、本当は安物なんだけどね。


 もし仮にそれがバレてしまったら、彼どんな顔をしてしまうんだろう……。蔑むか……もしかしたらキモいと言われてしまうかも……ああ、考えるだけでも怖い!

 そう、私は心配性や不安など負の感情を抱きやすい。相手がどう思っているというのはよく分からないのが、何より怖い。


 とりあえず今日の所は楽しくやろう……こんな所を彼にバレたらと思うと……。


「じゃあ行こうか。水族館はすぐそこだから」

「うん」


 とりあえず私達は、水族館へと向かう事にした。

 途中手を繋いで感触を試していると、いつの間にか水族館に着いていた。それで巨大水槽へと行ってみると、数多くの魚達が泳いでいる。


 何とも綺麗……なんだが、こんなに人が集まっていると財布とか盗まれそうだ。用心しないと……。


「君が好きなのってある?」

「……ん? ああ、マンタが好きかな。ほら、あそこに泳いでるじゃない」


 そう言って私はマンタを指さした。マンタって形が可愛いので、よくぬいぐるみを買っているのだ。

 ……でも本当はサメが好きなんだけどね。いや、マンタが嫌いって訳じゃないが、変にサメだと言って「ドン引きだ。別れるわ」と言われそうで怖いのだ。


 ああ、やっぱり不安がよぎってしまう! こんなんで彼の相手が務まるのか不安だ……。


 しかしそんな事を口が裂けても言えない。私はなるべく不安を隠したまま、彼と水族館を回った。


「……も、もう終わったようだね。どうだった、水族館?」


 気が付けば出口まで着いていた。

 もう水族館が終わってしまったという寂しさが出てきたが、それでも楽しかったのは変わりない(不安があったけど)。


「うん、楽しかった。また行きたいね」

「……そうだね」


 何か台詞が残念そうだ……言い方がまずかっただろうか。

 もっと感想を言ったり、魚の事を言ったりとか……ああでも言いそびれてしまったし、全く私の馬鹿。


「じゃあそろそろ帰ろうか……」

「うん……あっ、でも……」

「ん?」

「……ああ、何でもない」


 この時、私は不安で言うに言えなかった。


 何故なら「ホテルに行こう」というエッチな発言なのだ。もしOK出してくれるならまだしも、それでドン引きされてしまったら元も子もない!

 でも本当は〇〇〇〇したかったし……はぁ、全く私ってば変態!

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