ドゥードゥーバード討伐では

俺たちは草原にいた。

何処までも続く美しい緑。空気も美味しくまるで身体が軽くなった気分になる。


すぅーはぁ〜


俺とたむちゃんは『試験クエスト・ドゥードゥーバードの討伐』をクリアして冒険者になるために、この草原にやってきたのだ。


「お?あの人か?すみませんー!武器を借りたいのですけどー!」

「来たようだな、さぁ、相棒を見つけな!」

「ん〜」


草原の、ど真ん中と言えそうな所に、ギルドの係の人がいた。

ん?なぜこの男性が係の人だって分かるかって?

『私が係の人です』

ってプレートを首にかけてるからだよ。

わかりやすい親切な世界だね!

見たところ武器は剣系、斧系、杖系、ハンマー系、槍系、弓系....など様々なものがある。

もちろん盾もあったよ。


正直、俺は運動が得意ではない。

運動したといったら、中学の時テニス部だったことくらいだろう。

って事を考えると、片手剣が見た目の大きさ的に良いだろう。

武器の距離感とかも掴めやすそうだし。


「じゃあ、俺は片手剣にしようかな。」

「おけ!それが相棒だな!姉ちゃんは決めたのか?」

「う〜ん、どうしましょうか〜。」

「迷うなら兄ちゃんと一緒の片手剣にしたらどうだ?片手剣スタートのやつは多いからよ」

「では、そうします〜!」

「よしっ、じゃあ、ドゥードゥーバードの討伐!気合い入れてこいよ!!」

「「はい!!」」

「あ、兄ちゃん!このビンを持ってきな!!」

「これは..?」

「何かいい植物とかあったら持って帰りな!!」

「ありがとうございます!!」


係のおやっさんから貰った鞘とビンを腰にかけていざ!ハンティング!

ドゥードゥーバードは本当に沢山いる。

周りを見渡せば必ず視界に10匹以上はいる。

話によると繁殖性が強いらしく、いくら狩ってもすぐに増えるのだとか。

さらに、味は美味しいらしく、大人も、子どもも、みんな、1度は食べたことのあるものらしい。


...よし!

あの丸々としているドゥードゥーを狙おう。


俺は...


ゆっくりと...


近づいて...


剣で1斬り!!

俺の剣の軌道に合わせて『ドゥー!』という小さな悲鳴をあげてドタッと息絶えたのだ。

動いていたそれは、もはや声もあげることのない

ただの肉と化してしまった。

今まで目を背けていたが、これが現実なのだ

すまない弱肉強食の世界だ。


「ふぅ、何とか一匹できたな。足を結んでっと...。たむちゃーん、そっちはどーだー?」

「にゃはは!結構、大量で〜すよぉ〜!!」

「まさか!その袋の中に入っているやつ...全部ドゥードゥーなのか!?」

「そ〜ですよぉ〜!!生け捕りの方が報酬が上がるそうです〜」


たむちゃんの袋には、13羽近くのドゥードゥーバードが入っていた。よく見ると袋にはちゃんと呼吸できるようにしてあるようだが....天使が笑顔で命を奪っていくというのは、また...いや、もう堕天使だからいいのか

...うーん。

って、それどころではなくて!


「たむちゃんがいっぱい生け捕りにしてるって事はいずれ居なくなるじゃねぇか!俺も急がないと!!」

「大丈夫ですよぉ〜まだまだこんなにたっくさん居ますから〜」





「そして、ドゥードゥーは、いなくなりました...」

「でも、たっくさん捕れましたよ〜?」

「俺はまだ、あと1匹足りません...」


たむちゃんの生け捕りの才能は本物だ。

俺が1匹倒している時には15匹近くを捕獲している。

つまり、たむちゃんは60匹ほど捕獲している。

大丈夫か?生態系バランス...。

大丈夫か?俺...。

このクエストは討伐。

たむちゃんは、ちゃっかり始めに5匹仕留めてから捕獲している。

でも、俺はまだ出来ていない...


「と、とにかく、たむちゃんはその袋を係の人に渡してきて」

「了解で〜す!」


どうしたものか...と考えていたら!

なんと!

奇跡的に1匹残っていたじゃあ、ありませんか!!

もう、やるしかない...!!

身体を低くし、ゆっくりとにじり寄る。


...あと10m


...あと5m


...あと2m!!


...あと1m15cm!!


...あと...


「ただいま戻ってきました〜!!私、堕天使のルシュタムです〜!!」

「ああぁぁぁぁぁ!!!!!逃げたぁぁぁ!!!!戻ってこぉぉぉぉぉおおいいい!!!」

「だから今戻ってきました〜って言ったじゃないですか〜」

「たむちゃんじゃねぇ!!ドゥードゥーだぁ!!アレがラストの1匹なんだ!!追うぜ!たむちゃんよぉ!!」


ドゥードゥーがたむちゃんの声に驚き森の方へ逃げていく。

だが、それを逃がすわけにはいかない!!

俺は殺気丸出しでドゥードゥーを追いかける!!


「待て待て待て待て待て...待ちやがれぇぇぇぇぇえ!!!!」

『ドゥードゥー!!』


瞬間、ドゥードゥーの足がつまずく!!

これが唯一無二のチャンスだぁぁ!!!


「...勝ったッッッ!!!」


俺は走っているスピードを落とさず垂直に飛び込むようにジャンプし、その勢いで斬った。

だが、それだけでは勢いは止まらずゴロゴロと前転、後転として大きな壁にぶつかって止まった。

頭やら背中やらに苦痛が走るがそれどころじゃない!!

俺はすぐに『ジョブカード』を確認するとクエストの所に『クエストクリア』という文字のスタンプがついていた。


「はっ、はははは!!やったぜぇぇ!!クエストクリアだぁ!!!」

「やったですね〜!ドゥードゥー倒せ...」


俺の声を聞いた後やってきた、たむちゃんが急に明るさが無くなり出した。

喜怒哀楽が激しいなぁ、たむちゃんは。

いったいどうしたと...


....


俺の頭に水が落ちてきたのだ。

それは透き通ったものではなく、

まるで粘り気を含んでいそうな...


俺は恐る恐る、顔を上げると...


『グァァァァァ....ヌチャ、グォォォォオオオ!!!』

「これまた、おっきい熊さんですねぇ...」


あるクエスト〜


森の中〜


巨大な熊さんに〜


出会った。

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落ちて行った世界では〜俺より仲間たちの方が強くてカッコイイんだが〜 ゲ砂焼き鳥 @GesunaYakitori

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