落ちて行った世界では〜俺より仲間たちの方が強くてカッコイイんだが〜
ゲ砂焼き鳥
落ちて行った世界では
『やっぱり、別れましょ』
その一言が俺の端末に送られてきた文だ。
付き合ってそんなにたってないのに別れの文。
よく考えてみれば...いや、よく考えなくても俺は昔から
モテない。
中学校の頃なんか4回以上ふられた。
いや、もしかしたら...もっとかもしれない。
自己防衛本能のおかげで曖昧になっているのかもしれない。
そんな俺がようやく高校で付き合えれた!!
と思ったら....
これだよ。
最も、理由があるんだろうけどな...。
俺は両親がいなければ金もない。
両親は行方不明で、収入は俺のバイトのみ。
そのバイトもバイトって言えるもんじゃなく、手伝いみたいなもんだから、絶対行かなければならないってわけじゃない。
おっと。
ショックで精神がおかしくなってきてるな。
俺はそんなキャラじゃないんだ!!
前を向いて歩こうぜ!!
不幸の後はきっといいことが!!
...俺は気づけなかった。足元がないことに...
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
無意識の内に叫んでいる!!
俺は崖から落ちたのだ!!
何で崖にとかそういうのは出てこない。
ただ、走馬灯のようなものが!!
「付き合ってください!」
「ごめんなさい!」
「ずっと前から好きです!」
「他に好きな人がいるんです」
「ごめんなさい」
「無理です」
「やっぱ無理です」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
嫌な記憶しかねぇぞ!!
もっと、こう、バカやってた記憶を!
最後なんだからいい記憶を!!
走馬灯に精神をやられ、崖に身体をやられる。
絶望しかねぇ!!!
あぁ、そーいや、キスもしたことなかったなぁ。
初めての相手は地面か...
....
ん?ん?なんだ?俺、意識がある!!
いや、し、しかし今の俺は!!
地面にキスをしている。初めての〜...
「うわっ!!ぺっ!ぺっ!!砂だぁぁ!」
口に入ったかもしれない砂を出した。
....あれ?俺、確かに落ちたのに。
そう、高い崖から落ちたハズなのに、俺は森の中にいた。
その森は、草木が生い茂っていて人の手が加わっていない自然そのもののようである。
例えるなら、白亜紀の森のようである。
この摩訶不思議現象は一体どういう事なのだろうか?
恐ろしい事に、俺はここに来たことがない。
全く知らない森であり、何処までも存在する植物によりどこか暗く、恐怖を覚える。
「大丈夫ですか〜?」
そんな中、不意に声が聞こえたため、俺はそちらへと振り向く。
すると、そこには、俺と同じ歳くらいの少女がいた。
少女は愛くるしい金髪のショートヘアー、安らぎを与えるかのような美しい碧眼を持ち、溢れ出す明るいオーラにより、『とても元気な可愛い女の子』と言ったイメージを持つ。
「えっと...なんとか大丈夫っちゃあ大丈夫だけど」
「それは良かったですよ〜!!」
少女は明るい笑顔を作って見せた。
可愛い...
いや、そうではなくて。
「えーと。信じて貰えるか分からないけど、俺は崖から落ちて、気づいたらここにいて....」
「あっ!!言って無かったですよ〜!!ここは、あなたがいたあの世界とは違う世界なのですよ〜!!」
......
「なるほど、ここは俺がいた世界とは違う世界か......」
「はいっ!!」
その元気よく迷いなくハッキリと言い切った一言により、俺はこの言葉を信じるしか...
いや、冗談キツイで。
この訳の分からない森林で、この可愛い女の子は厨二病を患っているのか。
いくら何でも「別の世界に来ました」って言われて、「はいそうですか」って理解することは出来ない。
俺はな。
....しかし、その設定
実に気になる!!
それはこの俺に厨二病が未だ残っているからなのか、別の世界に行くことに憧れていたからなのか、分からないが聞いてみることにした。
「何で俺が崖から落ちたらこの世界に?」
「あの崖から落ちて死ぬ所を私が助けたからです〜!!」
金髪の少女はえっへんっ!と言わんばかりに両手を腰に置いて胸を貼っている。
おぉ、大きい...
ってそうでもなくて
「えーと、君に崖から落ちているの所を助けられたって事?」
「そーですよ〜!!」
「いや!どうやってあれほどの高さの所から落ちた人間を助けれるの!?」
そう、あの高さから落ちればひとたまりもない。ビルの数階から落ちる人をキャッチするだけでも難しいというのに。
「それは....これがあるからですっ!!」
少女は腰を突き出してきたので、そこに目をやると、真っ白な美しい翼があった。
これほど美しい翼を見たのは始めてであるが、形質、色彩などから白鳥の翼をイメージさせるだろう。
「こ、これは...」
「私の翼です!!」
その一言を聞いてもなお、俺は理解することが出来ない。
しかし、その証拠にと、翼をピクッピクッと動かして見せられ、信じざるを得ない状態となる。
さらに、よく見れば、うっすらと、黄色い輪っかが浮いてある。
白き翼。
黄色い輪っか。
これらの条件から導き出される答えは....
「もしかして、天使?」
少女に問いながらも俺は考える。
これは、もしかすると本当に別の世界に来たのでは無いのかと。
「はいっ!....いや、正確には、『元』天使ですよ〜!!」
「元天使??」
「私は、神様によって決められていたルールを破ってしまったので、『堕天使』としてこの世界に墜ちて来ました!!」
「な、堕天使!?それに、神様のルールって...」
『ーーーーッッッ!!』
ーー瞬間ッッーー
深く太い唸り声が響き渡る!!
この草木が生い茂る自然全てが揺らめくざわめく!!
風が吹いているかのように!
まるで、危険を知らせるかのように!
その声が響くと同時に、俺とその少女は走り始めた!!
「逃げるですよ〜!!!!」
「同感ーーー!!」
独特な形をしている植物が身体中に当たってくるが今はそのようなことを気にしている暇はない!!
とにかく、走る!!
走り続ける!!
その無我夢中で走り続けていると意外にも早く森から抜けることができ、草原へとたどり着く。
それと同時に少女が息の上がった状態で口を開く。
「こ、このまま!あの街まで行くですよ〜!!」
「り、了解!!」
足が痺れつつあるが、歯を食いしばり、意地でも走り続けるのだった!!
「はぁはぁはぁ...なんとか着いた」
「....ですよぉ〜」
肩が動くほど荒い呼吸を整え、この街並みを拝見すると、そこはまるで中世時代のようであった。
建物はレンガで作られているのがほとんどであり、屋台があちらこちらにあり、馬車も走っていたりもする。
賑やかな雰囲気が入口にいる俺らにも伝わってくるのだ。
息の上がった俺たちに、この街の女性の内の1人が何か聞いて欲しそうな目で、訴えてくるので情報収集といきます
「えぇと、ここはどんな街なんですか?遠い所から旅して来たんですけど...」
「ようこそ!アイズマイズへ!ここでは自然が豊かで、モンスターも比較的大人しい所です。沢山のギルドがあるため、これから冒険者になろうとする人にはオススメです!どうです?冒険者に?」
笑顔で勧められました。
冒険者?
さらに、ちゃっかりモンスターって言ってたなぁ。
いわゆるファンタジーな世界に来たってわけか。
「なるほど、その冒険者になるためのギルドってのは何処にあるのでしょうか〜?」
・
女性の説明に従って人混みを紛れながら歩いていると、それらしき所についた。
建物はこれまた広く、旗が屋根に付けられている。
旗のデザインは赤色がバックで、剣と盾のイラストが交差して描かれている。
さらによく見れば...
思いっきり『冒険者ギルド』って書いてある。
「そう言えば、名前を聞いて無かったな。えーと...」
「私の名は『ルシュタム』です!!」
「ルシュタム....よし、行くぞ!たむちゃん!」
「た、たむ!?...たむ!いいですね!」
ルシュタムちゃんのアダ名はたむちゃんだな。
入るとそこには、木製のテーブルと椅子が大量にあり、壁には生物...ここでいうモンスターの頭の作り物がいくつか飾ってある。
また、斧や剣といった切断系の武器も飾られている。
まさに冒険者という荒くれ者の仕事場だ。
だが、しかし、ゴミなどは一切なく清潔感が出ているという不思議な感じだ。
では早速、俺は受付に行った。
なぜ受付が分かったかって?
思いっきり上に『受付』って書いてあるもの。
受付はお姉さんで、黒髪のロングだ。
「すみません、冒険者になりたいんですけど。」
「なるほど、ならば登録料と試験がありますが、大丈夫でしょうか?」
「...えーと、そのいくらになるんですか?」
「お1人3000イェンです。」
「はい、3000イェンですね...ん?。。たむちゃん3000イェンある?」
「ありますよ〜はいど〜ぞ」
そーいや、なんでこっちの世界の金持ってるんだろうな?
まぁいいけど...
「確かに、お2人合計6000イェン頂きました。では、次は試験のことについてです。試験クエストとして『ドゥードゥーバードの5羽討伐』をお願いします。」
「えと、そのドゥードゥーバードってのは、いったいどんなモンスターなんですか?」
「ドゥードゥーって鳴く鳥ですが、飛べません。1m前後の鳥ですね。あ、1人5羽討伐でお願いします。」
なるほど、合計じゃなく、1人5羽。
必ず5羽討伐しないと良くないってわけか。
....ん?
「でも、どうやって5羽倒したってわかるんです〜?」
「確かにな。」
「それは、この『ジョブカード』に自動でカウントされますのでご心配無用です。どうぞ。」
『ジョブカード』
その所持者の名前、ジョブ(職業のこと)、HP、MP、物理攻撃力、物理守備力、魔法攻撃力、魔法防御力などといったステータスが記入されている。
また、討伐したモンスターの種類と数、現在受けているクエストについて、残り討伐数、そして冒険者のランクが書かれる。冒険者のためのガイド的な役割をする文もある。
見た目はただのカードだが、俺らの知っているカードではない。触れるとホログラムの立体映像の画面ようなものがでてきて、それに触れて動かすと映し出されている画面も動くといった感じだ。
んーと、スマホの画面が立体映像で飛び出して映し出されてるって感じだ。
「なるほど、では、早速行ってきます」
「はい!あっ、武器とかはクエストの目的地の近くに係の者から貰ってください。では、ご健闘をお祈りしています。」
「行ってきます〜」
そう言って俺と堕天使のたむちゃんは、初めての試験クエストへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます