或る数編の恋の詩

永本雅

或る数編の恋の詩


恋の本質とは自傷行為と同じです。

なにかに心を蝕まれる苦痛と想い人がこちらを向かない恐怖に苛まれながら一人で首を絞める。

そうして最後には一人になってやっと蝕むなにかに目を向ける。

記憶は禍々しさに変換され夢か現か、あっちかこっちかの区別なんかつかなくなって死肉はあなたへと変わっていく。

あの日交わした約束なんて結局は慰めであって交わしたことにしか意味はない。

影があなたから離れないように、癒着をしてしまった癌のように。

麻酔が効いてきたところでぐにゃりといい具合に骨が曲がって滲むあなたは笑ってる。骨が最後に君の胸に抱かれるのなんて考えただけで幸せだ。



硝子越しに君の笑顔と輪郭をみたい。

声は聞こえないし何かを伝えられない。

口だけが開いて閉じて開いて閉じて。

あなたはこちらに目を向けることもないし私に気が付くこともない。

それでも私はあなたみてる。

でも、いつの間にか私は私を見ていることに気付く。

暗いここからは貴方の事は見えなくなる。

見えている君は美しい。春に日に頬を撫でていつもいない風のようだ。



夢の中で私は貴方の夢を見る。

光と影と朝と夜。流れていく時間の約束。工事現場と君の傘。

返らない時間は桜と共に流れてサグラダファミリアの喧騒にかき消された。

十一桁の数字たちはクシャリと曲がってる。

夢が覚めたときに私は夢の傷を引きずって臆病で君の愛想笑いを満面の笑みと見間違う。

そんな勘違いをする僕だから覚めない夢を現実だなんて思ってる。

君が笑って手を引いて、夕日の沈む海岸を僕は笑って眺めては反対車線の事だと車が来るまで気付かない。

そうして車が来た時に僕は君を失いたくなくてそっち側に駆けていく。夕日が僕の影を作ったらまた反対車線に君がいた。

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或る数編の恋の詩 永本雅 @kosumisiori

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