エピローグ
「うーん……」
半ズボンをはいているその小さな女の子は、雑貨店の前で立ち止まっていた。ガラスの向こうへ、物欲しげな光に帯びた目差しを注いでいる。ほうっておくと、いつまでもそこにいそうだ。パーカーのポケットから右手を出したり入れたり。左手は、彼女よりも高いところから垂れている腕の、細い乳白色の手を、たよるようににぎっている。
「どうしたの?」
「うーん、まあ、いいよ。お金がないから……」
「あれが、欲しいのね?」
「うん、来月、中学生になるから、お金も使うことになるよね」
「そうね、それなら、わたくしが買ってさしあげましょう」
小さな女の子に応えた乳白色の手の持ち主は、背が高く、紫色のセーラー服を着こなして、腰まで長い髪をおろしていた。
春の、高くなりはじめた日射しで、顔は影の中に隠れてよくみえない。だがどこか淋しそうだ。
だから、半ズボンの子は機嫌をとる笑顔で見上げた。
「えへへ」
スミレ色な贈り物 私掠船柊 @violet-planet
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