最終話 うまれ、かわる。

 ドアはすでに開かれていた。。通路は打ちっぱなしのコンクリートで、俺たちは狭い上り階段を登っている。


「やっぱりここは真帆たちと暮らしていたアパートだったんだな」

「そうなんだ」

「そう。なんでここなんだろう」

「おじさんが帰りたかったからじゃない?」

「そっか」


 ガラスがはまったドアの前に立つ。ここを開ければ屋上だ。ガラスからは、まばゆい光がこぼれている。朝なのか、昼なのか。開ければすぐ分かるだろう。


「ねぇカナトくん。ここを開ければどうなるんだろう?」

「明日へとつながっているよ。僕らは未来に生き返るんだ」

「生き返るって……。カナトくんも死んでいるの?」

「違うよ」

「じゃあ君は?」

「なんだろう? 誰かが願ったものなのかな。おじさんに伝えてほしいって」

「へぇ」


 ドアノブに手を掛ける。そのときに、カナトくんが俺の腰に手をかけた。


「おじさん。もう一回言うよ。僕はおじさんの味方だ。常にそれは変わらない」

「ありがとう。今までありがとうね。俺、高須を絶対に殺すよ」

「必ずできる。でも、少し眠っていてほしい。その時がきたら起こすから。そうしないと奏さんが心配するから」

「どういうこと?」


 カナトくんが、俺の横をすり抜け、ドアを開く。先に外に出て、振り返った。その顔はいたずらっぽく笑っていて。

















「これからも一緒ってことさ……おじいさん」






(赤ん坊の声)(ドアが閉まる音)






                                     了

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