第6話 呼んでいる
「大丈夫、おじさん?」
「あぁ、ゴメン」
落ち着きを取り戻すまで、少し時間がかかった。その間、カナト君は黙って見ていた。あまりにも動じない少年の振る舞いに、だんだんと気恥かしくなって冷静になったというのが本音だ。
年上として、場を取り持たなければ。
「さっきはゴメンね。ところで、 なんでカナト君はここに?」
「……わからないよ。 おじさんが知ってるんじゃないの?」
「俺なんにも知らないんだ。 どうして カナト君はそう思うの?」
「そう教えてもらったから。おじさんが来たら教えてくれるって」
「誰に?知ってる人?」
「見えなかったんだ。でも、ここで待っていれば教えてくれる人が来るからって……。ねぇ、その花、くれないかな?」
「あ、あぁ」
花を手渡すと、彼はありがとうと笑った。年相応のあどけなさと、笑顔を持った可愛らしい子じゃないか。
「真帆さんって言うんだ。大事な人なんだね」
「えっ……!?何で……」
真帆のことは一言も言っていない。この子、まさか……。
「カナト君……。もしかして君がやっているの?」
「僕じゃないよ。僕だってわからないんだ」
「じゃあ何で真帆のことが分かったの?俺、一言も言ってないよね!?」
「この子が視てたんだよ」
そう言ってカナト君は、赤い花を見せつけた。
花が視てた?この子、やはり少しおかしいみたいだ。でも、本気なのか?クソっ!この子、感情がなさすぎるんだよ!
(ドアが開く音)
「おじさん、また呼ばれているみたい」
「カナト君も一緒に行こう」
「僕はムリだよ。呼ばれてないもの」
「いいや、一緒に行こう」
「……わかった」
カナト君は俺が差し出した手を取って立ち上がる。……けっこう身長あるんだな。
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