第1章 五話 『ダーロの洞窟 下』

アルセンへの、『怒り』。


シーナの心でその一言が飛び交う。

シーナにとって____アルセン自分をイラつかせるだけの存在であった。

自分の憶測が間違ってなどいない、そう信じていた。でも、あのアルセンによって全てが打ち砕かれる。

まるで、薄いガラスの様に簡単にそして綺麗に_____。



「で、その入り口は何なの____?」

「これか、これは……何だろう?」

「は____ッ!?」


洞窟にシーナの凄まじい声が響き渡る。

とてつもなくいい反応を見せたシーナを見てアルセンは笑を一生懸命堪えながら口を開いた。


「いや、嘘だけどね?」

「あああ!もう!」

「ごめんごめん。」


そう言いつつ、謎めいた笑みを浮かべ、ふてぶてしい表情でシーナの碧眼を見つめる。


「で、本命は?」

「本命ね……ここは____」

「____ダーロ魔術師団の旧地下研究施設入り口です。」


突如、聞こえてくる女性の声____その声は、脳裏にとどまり永遠と響き続ける綺麗で透き通った声

シーナがその声の持ち主へ目を向けると、そこには死んだ魚の様な目でシーナを眺めているルナが冷静で淡々と立っていた。


「え____?」

「だから、ダーロ魔術師団の旧地下研究施設です。」


頭の上にはてなマークを浮かべているシーナの問いにあからさまに、煩わしい表情で答えるルナ


「いや、そう言う事じゃなくて……なんで、ルナが?」

「そんなの決まっているじゃないですか、お兄____ッ!じゃなく、アルセンさんにお呼びされたからです。」


え……?今、お兄ちゃんって言おうとしてたよね____ッ!?

絶対に言おうとしてた____!!

ええええ?

アルセンがルナのお兄ちゃん……?


「おい、ルナ。別に隠さなくていいぞ、と言うか確実に今3分の2は言ったからな。」

「そんなのは、どうでもいいのです。お兄ちゃん…ではなくお兄様が無事であれば……」


態度一変……猫を被ったかの様に態度、仕草、感情を変えて兄____アルセンに近づいてゆくルナ

対してアルセンは、表情を一切変えずに只々ルナを眺めているだけ


「で、あの情報は____?」

「はい。入手しました。」


何か……私だけおいてかれてない?何かそんな感じがする。


「ねえ……どう言う事なの?」


シーナは小さく弱々しい声で、次々と話を進める二人に質問する。

そんなシーナの質問に対し二人は、涼しげな顔で……


「ああ、これは____俺達、国家魔術師団によるダーロ魔術師団殲滅計画だ。」

「そうですね、これは____私達、国家魔術師団によるダーロ魔術師団殲滅計画です。」


アルセンとシーナは瓜二つの表情で、透かした顔をしたままシーナの方を向き力強く人差し指を立てる。


「え____?えええぇぇ____ッ!?」


驚愕のあまり声を上澄らせたシーナは、未だに信じられない表情で____二人を見つめる。

それに対し、二人は両手で耳を塞ぎ目を呟り逆に驚愕していた。


「たっく、驚きすぎだろ!」

「はい、耳が壊れます!」

「あ……ごめん」

「で、どうしてそんな驚いてんだよ。」

「そ、そんなの!決まってるじゃない!あんた達が国家魔術師だったと言う事!」

「なんだ、そんな事か~」


頭の後ろで両手を組み、ふわ~とあくびをしながら話を進める。


「そんな、事じゃないでしょ!」

「え?なんで?」

「だって、国家魔術師だよ!?国家だよ____ッ!?」


にこやかに、

どこまでもにこやかにアルセンは口を開く


「うん、だから___?」

「……は?」


口をポカンと開けたまま佇むシーナは、思考が停止したと誰でも分かる様な表情をしている。


「お前、国家魔術師がどんな組織かしってんの?」


はっ!と意識が現実世界に戻ったシーナは、そんなのあたりまえと言わんばかりの自信満々な顔をしながら


「ふん! 当たり前じゃない!」

「へーなら説明してもらおうか?」

「ええ……もちろん____国公認魔術師って事……じゃ……?」


何故か分からない、と言うよりか今まで生きてきた日のなかで『国家魔術師』と言う単語は聞いたがどんな仕事でどんな組織なのかは一切聞いた事が無い……

詰まり国が、隠密にしている____?


「ないだろ?聞いた事はあるがどんな組織、役割なのかは定かでは無い……それが、国家魔術師だ。」


……え?詰まり、組織的な役割が無く名前だけって事?

そんな、疑問を脳裏に浮かべシーナは、頭を抱える。


今まで黙り込んでいたルナが突如口を開く__。


「役割が無い。それが、国家魔術師だと思う?」

「じゃ、じゃあなんの為に……?」

「それは___敵国家殲滅……。」

「で、でも!今の世界情勢は安定しています!そんな、敵国家殲滅なんて……」


そんな、常識的な事を発したシーナ、だがそれは世界中の国々が隠した偽りの考え、、であった。


「事実上は、、、、な?」


アルセンがしたその発言が、シーナの脳内でこだまとなり響き渡る。

今のアルセンが発した言葉、事実上は、、、、_____詰まり、世界各国は世界情勢が安定していると言う偽りの情報を民達に教えていた?


「事実上は____?どういう事なの?」

「はあ……」


アルセンは、気怠そう表情で溜息をこぼした後、口を開いた。


「今、俺達がいる。国____アルバス王国がダーロ魔術師団と組んでいると言う事実が他の国々にバレたのさ」

「この国が____ッ!?ダーロ魔術師団と!?」

「ああ、要約すると俺達が住んでいる国は、世界を敵に回したって事だ。」


アルセンが話した事は、シーナにとっては考えられない程の内容だった。

なんせ、小さい頃から暮らし育って来た国が黒魔術師の反乱を導いたダーロ魔術師団と組んでいたと言う事を突然、教えられたのだから。

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世界最強の魔術師が学園最弱のテクナートになった訳 瑠奈 @Re_zeroRemu1207

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