第1章 四話 『ダーロの洞窟 中』
私は小さい頃から、何をしても一番にはなれなかった。
一番ではなく、上位を維持するだけの人生____正直、面白くない。
どうしても一番になりたくて魔術を勉強し世界一の魔術師になる為に、私はエルグランテ学園に入学した。
けれど、入学して直ぐに現実の辛さを思い知らされた。私の力じゃ一番なんて無理だと言う事に、
そうして私は、ある一つの答えにたどり着いた。
それは、人間は努力では無い生まれ持っての才能だ……と言う事に……
私は、弱い___分かってる。でも、一番になりたい……
シーナの心の中でその感情が生まれた。
そして、私の前に世界でさえ見下している様な目で立っているアルセンと言う一人の魔術師が現れた。
私はその男に、何らかの憧れを抱いていたのかもしれない。
____怖いそんな感情が心の中で生まれた。
今、私の目の前に立っているのは確実に普通の魔術師では無い。
昨日の術式戦争イディオで私はルーズ=アルセンに完敗した、勝負は一瞬で終わりその後は余り記憶に残ってい無い、あの時、あの瞬間、私は確実に魔術剣スペクターでルーズ=アルセンを仕留めた筈
なのに、地面に足を付けたのは私であった。
そう、私が負けた。
突然、シーナの耳に気力くの無い不適な声が響く____。
「なあ、そろそろいいか?時間が無いんだ。」
下を向き俯いているシーナを見てアルセンは草でも見ているかの様な目をしながらその言葉を口にする。
「あ、あなたは、何処へ向かっているの?」
「お前に答える義務は今の俺には、一切無い。」
アルセンの冷たい声が鍾乳洞窟にこだま、しながら響き渡る。そうだ、あいつが私に今の質問を答える義務は一切無い。
____あれ?
どうしてだろう、私の目から鍾乳石の光が写り輝いている涙がが零れ落ちている。
「学園上位者で『蛇の魔女 エキドナ』の血を引く子孫の私がこんな弱くて泣き虫で、意地っ張りで……」
「ちげーよ。」
突然、何処かの誰かが今までに無い適当な話し方で私の考えを否定してくれた。
そして、私の頭を優しく撫でてくれる。
「お前は、弱くない___十分強い。」
「……え?どうして、あんたが……私を?」
「理由なんてないだろ、泣いている女の子を置いてどこかへ行く男なんて居ないと思うぜ?」
「そんな……どうして、私があんたなんかに____」
そう言いつつ、その小さい女の子___シーナは今まで見せた事の無い弱々しい顔でアルセンに抱きつき、ずっと離さずアルセンの事を抱きついていた。
そんな、けなげな女の子をアルセンは見ている事しか出来ない____
♦♢♦♢
「そ、それで。どうして、アルセン、、、、……はこんな洞窟に?」
シーナは顔を赤くしながら恥ずかしそうに煽りの天才____アルセンをジッと見つめながら話掛ける。
「あっれ~?前まで俺のこと『貴様』とか『雑魚』とか言ってなかった~?」
「う、うるさい! いいの、もう……」
目を逸らして、そっぽを向くシーナ
その姿は、とても美しく
どうしたんだ?
なんか、今までツンツンキャラのシーナが____デレている!?
アルセンは、心の中でそんな事を考えながら
「おおーそうかそうか!じゃ、教えるねぇ?」
「____ねえ、馬鹿にしてんの?」
先程までのデレとは打って変わり、冷たく人ならざる者を見るような目でアルセンを睨むシーナの態度を見てアルセンは顔色を変えシーナの問い掛けに即答する。
「いやいや、してないしてない!」
両手を振り、全力で否定する。アルセンを見たシーナはどうだか……みたいな表情で両腕を組み口を開く
「ふん、それじゃあ早く教えて」
「はあ、たっくしゃねーな。お前『ダーロ魔術師団』って知ってるか?」
「ええ、バルト歴295年に魔術師の反乱で先頭に立って指揮をした魔術師団よね?でも、20年前に滅ぼされた筈でしょ?」
「そうだ、だがここ最近ダーロ魔術師団の目撃情報が入っているんだ。」
「その話とアルセンがこの場所に来た事、何の関係があるの?」
「____それは、ここ『アルビデス洞窟』にダーロ魔術師団の研究施設があったからだ。」
「ここに?」
この洞窟は、エルグランテ学園からそう離れて居ない場所にある。
こんな、近くにダーロ魔術師団の研究施設があったなんて……
「そこでだ、俺は俺達の通っているエルグランテ学園がダーロ魔術師団と何か関与してるのでは?と睨んでいる。」
「まさか!エルグランテ学園は今まで歴史に名を残す程の魔術師を選出して来た学園ですよ?そんな____」
「____そんな、名門学園がダーロ魔術師団と関係があるはずが、とでも思っているだろ?」
アルセンはシーナの言葉を遮り、いつもなく冷静な口調で話す。
「……え?」
「それが、狙いだよ。この、学園のな」
「……」
シーナは驚きを隠せず、口をポカンと開けたまま固まっていた。
どうして……私のおばあ様もこの学園に通っていた生徒、だけれどあのおばあ様がダーロ魔術師団と関係があるなんて思えない。
「そこでこの、俺が学園の裏を暴いてやろうって訳だ。」
「あなた、本当にテクナートですの?」
「そうだぜ?学園ランク最下位のテクナートだけど?」
再び、いつも通り人の心を見透かしているかの様な目でシーナを見るアルセン
そんな、アルセンを見てシーナは降参したかの様に両手を上げ
「あーもう、いいわ。その、顔不愉快だから。」
キツイ言葉を言うシーナは、頬を赤く染めプイっとそっぽをむく
おいおい、シーナ俺にデレてない?
マジ____か。
「不愉快ねえ~?」
不敵な笑みを浮かべながら、シーナに顔を近づけるアルセン
そんなアルセンの行動を見てシーナは、より一層顔を赤らめ
「く、くるなあー!」
目を呟り手をバタバタしながら、弱々しい抵抗を見せるシーナだが目の前に立っているアルセンに少しも当たって居ない。
そもそも、完全に抵抗する気はない様に見える。
「おいおい、どうした?俺はお前の髪の毛に何かついていたから取っただけなんだけど?」
「へ___?し、しってるわよ!うん……しってる……」
え____?もう、何なの!あいつ私にわざと近づいたり、触れたり……
あああァァ____ッ!私……私、あいつの事を……。
「へー知ってたんだーー?」
「も、もちろん!」
シーナは、額に汗を浮かべ両手を腰に当て自信満々に元気よく返事を返す。
それに対し、アルセンは何もかもを知っているかの様に不敵な笑みを浮かべている。
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