第1章 三話 『ダーロの洞窟 上』
「___お兄様、今日あの能力を使ったのは誠でございますか?」
太陽が沈んで、暗く闇に包まれている部屋で部屋着の姿でベットに座りアルセンとルナは静かに言葉を交わしていた。
ルナは、今日学園で能力を使ったアルセンの事を何処か不安気で心配そうにアルセンを佇んで見る。
そんな佇みながら自分の事を見るルナを目の前にアルセンは頭を掻きながら少し戸惑った後、ゆっくりと口を開いた。
「ああ、悪い。」
「いえ、お兄様が行った事です、何か意味があっての事でしょう。」
「ま、まあ。今日の事に関してはやや想定外だったが、もともとの目的は達成する事が出来た。」
「それは、どういった目的で?」
「それは____蛇の魔女『エキドナ』の血を引くシーナの魔女血力アルタを略奪するためだ。」
「やはり、シーナが蛇の魔女の血を……あの、大罪魔女の……」
ルナは、いつもの冷静な態度と打って変わり何処か不安気になっている。
対してアルセンは、いつものふざけた様子は見せず多々真剣にルナの言葉を受け入れていた。
「まあ、そう言う事になるな」
「それで、お兄様はシーナの命を?」
「いや、そこまではしない。あの子はまだ子供だ殺したりはしない_____ただ、あの子は俺の計画の駒としてこれから動いて貰う。」
「まさか、あの子を国家魔術師に!?」
「いや、無いな。魔術剣スペクターの扱いは一流だが、魔力値が足りない。」
「……そうですか」
アルセンの言葉を聞いて安心したのかルナは胸を撫で下しあんどの表情を見せる。
「安心しろルナの友人の命を取ったりなどはし無い。」
その言葉を聞いたルナはいつものルナではない様に、顔を赤く染め真っ直ぐアルセンの胸に飛び込んだ。
アルセンは少し驚愕したが、泣いているルナの頭を再び優しく撫でる。まるで子供を抱いている親の様に___
「お兄ちゃん……私、ずっと会いたかった……」
「安心しろもう何処にも行かないと誓う」
「……うん、約束」
そのまま、ルナは安心して気が緩んだのか、アルセンの胸の中で深い眠りについた。
その姿はまるで、永遠の眠りについた白雪姫の様に____美しく。
♦♢♦♢
暗く太陽の光でさえ届かない____まさに、地上と切り離されたもう一つの世界の様な洞窟の奥深くで自ら『固有魔術 フラッシュボルト』を使い自らの指先から火を灯、アルセンは洞窟の狭い道をコツコツと音を立てながら進んでいく
「はっくしょん!」
アルセンの大きなくしゃみがやまびこしながら洞窟に響き渡る。その途端、アルセンの東西南北全てが真っ赤に光り輝く瞳を持ち身体は真っ黒で如何にも洞窟に住んでいますよ?みたいな感じの生物に囲まれる。その真っ黒な生物は悠々と空を飛び周り、沢山いるのにも関わらず一匹もぶつから無いで飛んでいた。
如何やら、俺のくしゃみに驚き自分達の住処を荒らしに来た、とでも思った様だ。
「うわあああァァァ____ッ!」
アルセンは、両手両足を全力で振り走って逃走する____そのまま、謎の生物とアルセンの駆けっこが始まった。だが、200メートル程で現役魔術師のアルセンにかなう筈も無く真っ黒の生物はアルセンからどんどん差をつけられあえなく真っ黒の生物はキーキーと悔しそうな鳴き声を上げ何処かへ姿を消してしまった。
「ハハハーー!俺の勝ちいいい____ッ!」
誰もいない真っ暗闇な洞窟の中にアルセンの勝ったぞ宣言が洞窟の奥深くまで響き渡る。
そして、アルセンが自分の服に目をやるとボロボロに破れたり引き裂かれたりと奇天烈な状態____
「あ~やってくれたな……」
今、俺が着ている服は学園の制服、このまま学園になんて通ったら間違いなく厳しい処罰が下されるだろうな……
「よしっ!」
アルセンは、数分悩んだ後、何かを決心したかのように自分の左手を見つめる。
すると、アルセンの左手が光り輝き、手の上で術式が展開されていく____その術式は半世紀前に消滅したとされる『ホウミロ術式』で形成されていた。
「ホウミロの書 第四章 『復活の術式』 アルテール・ソルバ! 」
そう唱えた途端、先程までボロボロで穴が開いていた制服が青い光に包まれ再生していく、ゆっくりと、そして美しく。
「ふうー、これでよし」
アルセンは、一回深呼吸をした後見違えった自分の制服を見て満足気に頷き、先程までの様に洞窟の奥深くへ向かって足を進めた____
___何分歩いただろうか、足にかなりの疲労がたまっているのを考えるとかなり遠くまで来たはずだ。
めんどくさがりのアルセンが謎の生物に襲われながらもそこまでして目指していた場所は、大きく開けた鍾乳洞になっており鍾乳石が自から淡い光を放ち青白く光っている立ち込めた冷気が直接肌に感じて少し身震いをする。
アルセンは、その真ん中にそびえ立つ一際大きい鍾乳石の前に立ち自分の左手を当てて、瞳を潰り口を開く
「解放の呪文 カテス・オーガ」
アルセンがそう唱えると、鍾乳石の形が変換しアルセンが触れていた場所が開かれ、そこに謎の入り口が誕生した。なかは、真っ暗でフラッシュボルトが無ければ何も見えないだろう
やっと追いついたか……
アルセンは心の中でそっと呟いた。
「後をつけてんのは知ってる。出てこい。」
「ちっ!」
アルセン以外、誰も居ない・・・・・はずの鍾乳洞に誰かの舌打ちが響く
それに対しアルセンはいつもの様に相手を見下す目で、鍾乳石の裏に隠れている何者かを、、、、ジッと見詰める。
そんなアルセンを見て観念したのかその何者か、、、は鍾乳石の裏から姿を現した。そこにいたのは、悠々とその場に立ち、暗闇の中でさえ輝く金髪碧眼美少女____シーナ
「どうして、分かったのです?」
「ん?そんなの簡単じゃん、お前に『追跡の呪文 キャリ』を掛けていたんだから。」
「そ、そんなのいつ____ッ!?」
同様を隠せずアルセンの言葉に驚愕するシーナ、そんなシーナを見てアルセンは当たり前の様に透かした顔で
「え?昨日の術式戦争イディオの時だよ?気付かなかったの?」
そうか、昨日の術式戦争イディオで負けた私が気を失っている時にキャリを……
シーナはこの時、いま目の前に面倒くさそうな態度で立っている男の凄さそして、怖さを知った。
「き、貴様……」
恐怖のあまり、シーナはアルセンの顔を見る事が出来ず地面を見ると今、自分の足が震えている事に気付く
「どうして……私が____」
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