chapter 02

 眩しい朝日と、賑やかな鳥の声。

 ああ、朝が来たんだ。そう気づいて、微睡みの中にある体を起こす。

 きょうも、きっといつもと同じ


 お家の外に出て、おおきな木に登る。

 まっかなきのみ。おいしいきのみ。

 ひとつ摘んで食べると、お口が幸せの味になるの。だから、この実はすき。くだものなのかもわからない、あまいきのみ。


 けど、ここはいつも退屈。

 なんにもない。誰もこない。


「ことりさん、こんにちは」


 だからことりさんとお話するの。

 遊んでくれるのは海の波だけ、話を聞いてくれるのは空の鳥だけ。わたしのおもちゃは、砂浜と本だけ。


「きょうは、あたたかいね。ひさしぶりに海に入ろうかなあ」


 独り言を交えながら、ことりさんにお話する。

 ときどき返してくれる鳴き声が愛おしくて、ああ、おともだちになれたら——。


「ごめんね。変なこと考えちゃった」


 ぴぃぴぃ、小さい声で返事をくれる。たまに飛んでいっちゃうけど、いつもはちゃんとこうして聞いてくれるの。

 わたしの言葉、わかるのかな。


「……あなたにも、家族がいるの?」


 ぴぃぴぃ。さっきとおんなじ。

 そうだよね、わからないよね。だって、わたしもあなたの言葉がわからない。


「わたしね、お父さんもお母さんもいないの。だから、みんなが羨ましい。あなたに家族がいたら、きっと大切にしてね」


 ぴぃぴぃ、ぴぃぴぃ。楽しそうに鳴いて、どこかに飛んで行っちゃった。

 お話してくれてありがとう、って言ったけど、聞こえてたかな。

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月光イルカ 雪餅シュクル @yukimoti_sucre

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