本論(2)高柱猫の信頼「白い砂浜、青い海、眩しい太陽、きたねえ、きたねえ、――死んじまえ」

 旅行先は海でした。白い砂浜、青い海、眩しい太陽、ってなことがマジでできちゃう島でしたね。

 沖縄に行ったんだけど……沖縄の美しさに罪があるワケじゃないし、僕は沖縄にはほんとに恨みがない、ただ、いいとこでしたし、みなさんにも今後旅行先としてもオススメですよって、言っときます、ほんとほんと。

 ……まああの島がね。かりに、ひとりでもだれか住人がいる有人島だったら、僕はもしかしてその島ごといや沖縄ごといやあそこの海ごといやそんな生易しいもんじゃない、この日本ごと、いますぐ滅ぼそうって思っちゃったかもね。あ。それは、いまもか。ハハ。……でもまあ僕はまだ人間を信じてる。だから、こうやって、……こんな思いしてまで僕は語りかけてるんじゃねーかよ。

 それにね、僕自身はね、……南国、嫌いになっちゃった。やっぱり。

 ごめんね。……沖縄にも、南の島にも、なにも罪がないことはわかってんだ。

 それでも、それでも、――キレイな海を見ると、泣き出しちまうんだよ。俺。いまだに。馬鹿みてえだろ? ――それにたとえば身なりはこんなかーわいい女の子の俺が暮れなずむキレイな海辺の砂浜でひとりぽつねん、立ってたら、――またレイプされるっての。ハハ……。



 アイツらねえ、ズルいなあ。

 だって僕にだけ黙ってたんですよ? ――や、ま、そりゃそうかあ、だってだって僕を輪姦するための旅行なんですもんねえ、秘密にするのも、そうかそうか、そうかそうか……。



 でもアイツら黙ってやがったんだ。



 旅行の準備するときにも俺にもまるで未来永劫の良いダチみたいに語りかけてきた! どこがいい猫、って。場所からだよ。僕はどこでもよかった。アイツらのことを信じてた、いやそんなこと意識に浮かばないくらいに信じてた! 男六人で旅行なんだって俺は根っから疑ってなかったんだよ、ああ、ああ、――アイツらからすりゃさぞかしそんな俺は滑稽だったんだろうよ! 許せない、ああ、――ゆるさねえ。一生かけたって俺はアイツらを引きずり落としてやる。あんなヤツらがのうのうと人間やれる社会はおかしい……。

 ……あ。先生。また本題から逸れてるって? いいじゃんよ。――どうせココにいるのは僕が人間未満とみなしたか、そうじゃなきゃある程度僕のおはなし聴いてくれるだけの耳とアタマがある人間のひとたちなんだからさ。それともなんですか。僕の精神的トラウマは言ってはいけないと? はあ? ねえそういうことですかね先生。――だったらこんな研究なんざいますぐやめてやるよ俺だって、ちげえだろ先生、先生が俺に世界を滅ぼすくらいならちゃあんと研究しなさいってゆったんだろ、だから俺世界をいますぐ滅ぼすのやめてこうやってちゃんと人間の言葉で人間の論理で人間の理屈で人間の感情で人間の場で! 人間らしくさあ! しゃべってやってんじゃねえか! はあ……はああ?

 ――ああ。わかったよ。だったら、続けるよ。クソッ。――はいはいわかってますよ、俺が殺すべきはせんせーじゃなくってアイツらですう、私をにゃんにゃん輪姦したにゃんにゃんにゃーんのにゃんくんたちですう、――ハー、いますぐ殺してえ……。



 ……はあ。はい。失礼しましたよ。って、いちおう言っときますよ、……ここには人間のかたがたもいるわけですしね。はい。理性的ですね。僕という人間はね。すっげえ理性的。ヤバい。こんなに理性をもった人間がこの世にいるだろうかいやいない反語っ、なぜなら現状世界のトップのエデュケーション機関である世界大学でさえ、――あんなにケモノだらけだったからあ!



 ……どこがいい? ってさ、はなし。しますでしょ?

 で、まあどこでもいいけどお、夏休みだし海行くかーってなはなしに、なってさ。

 まあ海なら沖縄っしょーみたいな。なんか大学生ってそーゆー風潮あんじゃん? ないの? ――ないんだとしたらアイツらそこも僕を騙してやがったんですね。

 で、沖縄行くけど、どーするよ。みたいな。

 本島もいいけど、まあみんな修学旅行とか家族旅行で経験あんじゃーん、って。

 だったら離島にする? って……ああ、――ああだからアイツらそんとき示し合わせてたのかなあ畜生めが。――文字通りの人間未満の畜生どもめが。



 言ったんですよお、ものまねしたげる、

「どうせぇ、島行くならぁ、無人島に、しねぇ?」

「おぉーっ、ちょぉー、さんせえぇー!」

「無人島、まじぃ、タギるわぁー」



 ――ハッ。汚らわしい。

 タギるってえのはテメエのきったねえ宙ぶらりんの男性器だろ? きたねえ、きたねえ、――死んじまえ。




 ……あんとき正直に「いいね!」とか言っちゃった僕は、馬鹿だった。

 僕は、ほんとに、――馬鹿だったよ。あいつら以上に、おめでたい。なんだって僕はあんなときに――あんなに笑って、でも、やっぱり、……楽しかったんだろう……。

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