第10話
お兄ちゃん。幼い私が手を伸ばす。
私、いつかお兄ちゃんのお嫁さんになる。
そう笑う無邪気な私にヒロは少し困った顔をして、だけどこっそりと私の耳に囁いた。
「知ってる?誓いの言葉、ってやつを言うんだって。結婚式で」
「ちかいのことば?けっこんしき?」
不思議そうな顔をした私に、ヒロが微笑んだ。
「
幼い頃の誓いの言葉は甘くて、甘くて、私達の甘い、毒になった。
神様の前で誓えなかった私達。
あまい、あまい、お砂糖が溶けて今、私達、地獄へ堕ちてゆく。
あまい、あまい、地獄へ、堕ちてゆく。
きっと温かく柔い真綿のような幸福こそが、私達の首を絞めるのに最も適する道具なのだと思う。
「幸福って、そんなに簡単に私達を許してはくれないね」
繋いだ手は、離さない。
冬空の下、二人、身を寄せ合って目を閉じる。
あまい、あまい、お砂糖に、毒が一つ。
あまい、あまい、お砂糖に、
................私達の罪と罰が、一つ。
シカクの愛________FIN
シカクの愛 乙川美桜 @o_t_o_m_e__
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます