ファンタジーの世界観とロボットアクション。
この二つの相性は悪いのか?
いや、そんなことはない。
この作品はエルフやオーク、ドワーフといった亜人種と人間が戦乱を繰り広げる正統な中世ファンタジーだが、そこにPM(ポイントマテリアル)と呼ばれるロボットが混入する。
普通に考えればロボットは科学技術の塊であって、ファンタジーお得意の魔法や中世の技術とは互いに反する存在のものだ。しかし、本作では魔法と科学技術を見事に融合させている。
例えば、このPMの動力は様々な属性の精霊から得られるエネルギーであり、それを利用して駆動し空を駆ける。コックピット内のディスプレイも魔法による表示方法だ。手にする銃器も魔法弾を連射する。しかし、魔法に長けたエルフではなく技術を得意とするドワーフや人間の方が強い機体を作ったりする。魔法の力で動くが、あくまでもPMは機械なのだ。
ほかにも人間用から大型のPM用として火縄銃が登場するのだが、その発射方法が面白い。火縄銃なので火薬に点火させる火種が必要なのだが、この世界では火種の代わりに着火の魔法を使っているのである。こういう、魔法と技術を上手く応用した設定や描写が随所に見られるところが本作の魅力の一つだろう。
ストーリーは亡国の王子が際限なく広がる戦乱の中で親兄弟の復讐を果たそうとする王道なもの。ただの傭兵として戦っていたところ、偶然にも黄金に輝く謎の特別機を手に入れて……という所から始まる、これもロボットものとしては満点な位の導入だ。現時点では話が動き始めたところだが、主人公がどのように行動していくのかが楽しみである。
本作の特徴として、文体や台詞回しが独特なものであることが挙げられる。これはガンダムで有名な富野監督が用いる特徴的な言い回しを意識しているとのこと。初見の方には少々とっつきにくいだろうが、読み進めていけば次第に目も慣れてくる。この点は他の作品にはない武器だと思うので作者様には一層頑張ってもらいたい。
気になった点として、誰がどのセリフを発言しているかが分かりにくい箇所がいくつかあった。おそらく、上述の特徴的な文体との兼ね合いにより発言者が分かりにくくなっているのだと思う。文体をそのままに、かつ、セリフ周りの表現を工夫してみてはいかがだろうか。
最後に、この作品はファンタジー、ロボットのどちらの面からも楽しめる作品なので、気になった方は是非とも読むことをお勧めする。