第43話「時代の終わり」
「聴こえるか、ダビデ……」
彼、ルクッチィこと「聖戦士ダビデ」が捕虜になったいるという情報をつかんだベオは、エイトヘヴンから
「聴こえるか、ダビデ」
「ベオ、か……?」
「応答せよ、ダビデ」
直感的に、彼と意思のリンクを重ねる。
「お前のパゥアー、どこにあると思う?」
「俺たちを助けてくれるんじゃ、ないのかよ……」
その言葉、その苦笑混じりの声にベオはダビデに(脳内で)笑って答えた。
「鹵獲機なら、恐らくはPM天幕の近くだ」
「サンキュな、ダビデ」
「何をするつもりだ、ベオ……?」
その言葉には、ベオはまたしても脳内で笑ったきりに答えない。
――――――
「見つからないようにと……」
その手に持つ「切断」を司るピトス「英魔剣」に対して念を入れながら、ベオは。
「あった、パゥアー……」
目当ての新鋭機「パゥアー」を探し当てる。
ドゥン!!
「うわ!?」
「なんだよ?」
「いや、なんでも……」
「いくぞ、パゥアー……!!」
ドゥ、ドゥウ……
パゥアー、それの起動にも
「おい、鹵獲機が!!」
さすがに、PMのエンジン音をかき消す程の効果はない。
「出てこい、ベアリーチェ!!」
「何!?」
「出てこいと言っている、この野営地にいるんだろう!?」
そのベオの無差別的な大声は、無論に。
「面白いじゃないの……!!」
エルフ王女にしてPM部隊総隊長「ベアリーチェ」にも聞こえている。
「アンズワースは?」
「整備は万端です」
「ピトス集はどうなっている?」
「それもまた、万端に!!」
「よし!!」
――――――
「いくら、そのパゥアーが最新鋭といってもさ!!」
ギィン!!
パゥアーのライフルランスが、氷の大鎌によってその形を変形させられて、使い物にならなくなる。
「無謀に過ぎるよね、人間!!」
「確かに!!」
自動運転、漫画を読みながら戦うほど、今のベアリーチェ機には余裕があるらしい。
「だが、お前の憎しみの力!!」
直ぐに半壊してしまったパゥアーのコクピットの中で、ベオは。
「断ち切る!!」
「なん、だって?」
「断ち切ってみせる!!」
「面白いじゃないの、人間!!」
「この
それに対しては直感、そうとしか言いようがない物がベオの身体を包む。
「フン!!」
カ、バォン!!
立て付けが悪くなったコクピットを思い切りに開きながら、ベオはその
「えいや!!」
ベアリーチェ機アンズワースに向かい、投げ付ける。
「なんだい、この卵は……!!」
その「卵」は
「生意気な!!」
ビュオウ!!
「ぐぅ、お……!!」
その自身の生身を襲った攻撃は致命傷、それがベオには理解が出来た。
「だが……」
死に逝くベオの顔には両親と姉弟、そして深い仲の近侍の少女の笑顔。
「これでいいだろ、リコリス……」
飾りの王子としての役割に疲れ、メイドの少女がまれに見せるエルフへの憎悪にも疲れ。
「休ませてくれ……」
実の弟、それと同じような境遇のエルフ少女の 憎しみに理解を示してしまったことが、ベオに無謀を行わせる原因となってしまったことは。
「疲れた……」
「なんだというの、この不快感は!!」
「お前も疲れただろう、ベアリーチェ……」
人の感情記憶を読み取る事が出来るベオ青年の、まさしく自身へのリターンである。
「もう、楽になるんだな……」
パ、チッ……!!
霊気系統に異常をきたしたパゥアーはそのまま空中で追撃の霊気弾により、自機を粉砕されたまま。
バォン!!
旧アルデシア王子「ベオ・アルデシア」もろとも、その身を宙の微塵とされた。
――――――
「え……」
近侍、メイドの少女が教会でベオの無事を祈っている最中。
ギィ……
教会の奥、銀の十字が静かに床へと落下した。
「ベオ様……?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます