第33話「不毛の土地」
「オークの土地っていうのはな」
ルクッチィがサワーパンを千切りながら、不快げな口調でリーデイドに語りかける。
「呪われているんだとよ」
「呪われている、かしら?」
「作物が、ちっとも取れないらしい」
「へえ……」
ズキッ……!!
二日酔いが、リーデイドの頭を強く打つなか、彼女はそれでも彼ルクッチィに聞きたい事がある。
「ねえ、ルクッチィ」
「もうな、ルクッチィじゃねえよ」
「ごめんなさい、ダビデ」
「聖戦士ダビデ、柄じゃねえけどね」
実力、そして士気高揚を兼ねた聖戦士の称号と伝説の勇者の名、それを受け取ったルクッチィの機嫌は悪くはないが、一時期世話になったオーク達の土地の事を思うと、少しは機嫌が悪くなるのは無理がない。
「オークの土地の話だけどな」
「ブリティティとかいう、オークおじいちゃんの受け売りでしょ?」
「そうだけどよ、リーデイド」
パンを飲み下したダビデは、そのままヨーグルトへとその手をのばす。ややに気候が暑いが、風は爽やかであり過ごしやすい。
「植えても植えても枯れちまうんだと、よ」
「だから、なりふりかまわず略奪に精をだす……」
「相手が人間だろうがエルフだろうが、ドワーフだろうがな」
「なるほ、アイタタ……」
「あんな無茶な飲み方をするから」
「うるさいわね、聖戦士殿」
無敵のはずのパゥアーを破損させて、周囲から冷ややかな目で見られたのは、やけ酒を飲む理由として充分ではある。それはダビデも納得はできる。
「女には、やけ酒を呑みたくなる時があるのよ」
「だったら、ベオ王子なんかはとっくにアル中になっているさね」
「あいつ、メンタルが強いのよ」
「あまり実力はないのにな」
「それを言っちゃダメ」
「悪い、悪い……」
確かに、周りの人間からそのような目で見られ続ければ、ベオのメンタルは強くもなろう。
「だけど、まあ……」
ヨーグルトを食べながら、ルクッチィことダビデはオーク達の事をその脳裏へと思い浮かべる。
「相手が誰であろうと、なりふりを構わずに襲うしかないというのは、辛いな……」
「そのオークおじいちゃんが、そんな愚痴をこぼしたわけ?」
「ああ、散々にな」
「へえ……」
スッ……
少しでも頭痛を和らげようと、ダビデのヨーグルトを横取りしたリーデイドは、そのままの姿勢でオーク達の大地へとその視線を向けた。
「ダビデ、あなたオークじいさんに気に入られたのね」
「何か、勘当した息子に似ているとか何とか言われたな」
「そりゃ、また……」
痛む頭を抑えながら食べているせいかヨーグルトでむせながら、リーデイドはその視線を再びオーク達の土地へと向ける。
「最近は、ワイバーンとかの生き物の数も少なくなってきているらしいぜ」
「大変ね、オークは」
「昔みたいに、欲望のままに略奪をするという理由ではない」
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