第19話「曇天に舞う」

  

「何か、さあ」

「なんでゲスかい、ベオの旦那?」


 ドワーフ領、砂漠の真ん中にあるオアシスを囲むように作られた基地を興味深そうに見渡しながら、ベオは傍らに立つ、自分の胸程までの身長を持つドワーフ「マルコポロ」の顔をじっとみやった。


「あんた、いい身分のようだな?」

「この基地の、ね」


 かなり大規模な前線基地、おそらくエルフの侵攻に備えて増築されたと思われる真新しい施設群。


「基地の司令とは、顔馴染みでヤンスのでね」

「それだけではないだろう?」

「イヤはや、それは……」


 そして、格納ハンガーデッキなどと呼ばれている、いわばPM用の詰所と言えるそれなどは、さすがにポイント・マテリアル生産の最先端を往くドワーフ達が成せるものと言える。


「ドワーフ技巧王からの信任状、手形もあったモンで」

「フン……」


 と、ベオは彼マルコポロを軽く睨み付けこそはしたものの。


 スゥ……


「コイツヘ、マルコポロへ敬礼をしてみせる兵達の顔がどこかぎこちない……」


 目前をよぎった二人のドワーフPM女性操縦士、彼女達は手をかざして彼マルコポロへ敬意を見せているものの、どこかその顔が強張っている事がベオには解らない話だ。


「しかし……」


 カゥア……


 照りつける日射、砂塵へと降り注ぐあまりに強いその太陽の光は。


「暑い、な」


 温暖な気候であった旧アルデシア地方、そしてこのドワーフ領の東隣へと位置する肥沃な人間達の領域での生活に馴れたベオにとって「砂漠」という過酷な土地、そしてその地を支配する太陽は、かなり彼の身体へと堪えさせてくれるものであった。




――――――







「祭司殿、大君主の愛人がどうしたと?」

「ウム、それが……」


 オーク偵察兵が放つ疑問の言葉にすぐには答えず、老オーク「ブリティティ」は何回か目を瞬かせ、軽くその目蓋を指でこする。


「どうやら二体の魔物、おそらくはデーモンと思しき奴等と祭司殿が……」

「またエルフ共がきたよ、ブリティティ爺さま」

「全く、あわただしい……」


 ジャ、ア……


 先程に墜ちたと思われていた人間の女傭兵が駆るアンゼア・タイプ。それが再び曇天の元を飛翔し、エルフ機達から追われている姿がブリティティの目前をよぎった時。


「本当に、ワシは衰えたかな……?」


 老オークは再度その目、自身の瞳を疑う。


「奴を支援するか、それとも……」

「騎士アーティナの状況も気になるわ、爺さま」

「そうだ、そしてそれ以前に」


 女傭兵のアンゼアがブリティティ達からやや離れた下方の空域、ヨロヨロとした挙動を機体へ与えている彼女をしとめるべくに、黒一色に統一されたエルフPM達が。

 

 ドゥ、ドウ……!!


 青く輝く光をその手から放ち、連打をかけ続けている姿が老オーク達の視界へと入ってくる。


「嫌な消耗戦だ、手を引きたい……」


 スゥ……


 その腕を伸ばせば厚雲の中へブリティティの指が差し入る程に高い高度、位置から老オーク達が宙域全体を見渡しても薄暗い空の中で行われている散発戦、乱戦はオーク勢の方が数量こそ多い、しかしに。


「エルフ共が少しでも引かないと、こちらも撤退が出来ん……」


 どういう理由だかは解らないが、エルフ側の士気が高い、まるで死を恐れぬかのような戦い方を。


「じい様、ブリティティ!!」

「おう、何だ!?」


 肉食獣に追われるウサギのようなアンゼアやオルカス、そして飛竜といったオーク略奪補給隊の面子を攻めたてる黒色のスプリート、エルフPM達の戦い方は。


「連中がこちらへガンを向けた!!」

「わかった!!」


 まさに昔のオーク、戦死を至上の名誉と考えるそれに近い。


 シュウァ……‼


 その逃げ回る人間のアンゼア機、それがアンゼア・タイプの機体特性的に危険な雨雲へ飛びこんだ姿を目にしたエルフのスプリート隊は。


「スプリートの冷風エンジンでは、雨雲へ飛び込むのはリスクが大き過ぎる!!」


 アンゼアよりもさらにデリケートな自機の特性を認識しているエルフ達、彼らはPMスプリートの「一つ目」を。


 ブゥン……


 特徴的な単眼の霊波センサーアイを確かにブリティティ達へと向ける。


「疫病神のアンゼアが!!」

「雲の下を這うぞ!!」

「りょ、了解!!」


 黒雲の中へ逃げ込んだアンゼアに向けて悪態をつく偵察兵のワイバーンには火力が無く、ブリティティ本人の霊力ライフルも全て残弾を撃ちきっている。このオーク女兵の苛立ちも老オークには解るというものだ。


「数機のオルカスが、たむろしているあの辺り!!」

「そこへこのエルフ共を!?」


 ブリティティの命令に、オーク偵察兵は一瞬のみ後ろ斜め、その下方へと身を捻って望遠鏡を目に当てかすめ見た、その直後に。


 シャア……


 接近してきたエルフ機達からの遠距離射撃、霊力弾を彼女オーク女兵は乗騎へ拍車をかけてかわし、僅かにその飛竜ワイバーンの躯が上の厚雲の中へと突き差さる。


「ボヤッとしている奴等の所まで、この黒エルフ共を連れていく!!」

「りょ、了解!!」

「雲へと身を押し込めたりしながら、相手の目を眩ませよ!!」

「やはり雲の下、爺さま!!」

「あたりまえ、だろうに!!」


 直接に、一直線に仲間の元へと向かっても相手のマトになるだけである、それゆえのブリティティの判断ではあるが。


 バァフウ!!


「機動力が他のスプリート、エルフ機とは違いすぎる……!!」


 何かしらの方法を使ってブリティティ達に一瞬と間合いを詰めてきた、そのスプリートへ向けて。


 ブォウン!!


「くそ、オークの飛竜ごときが!!」


 乗竜である漆黒のワイバーンがその尻尾を薙ぎ払い、黒いPM機体を弾いてくれなければ危うい所であった、それを考えると。


「スプリート改では、ワイバーンにすら馬鹿にされるのかしらね、腹の立つ!」

「知るもんかよ、エルフの女!!」

「補助コンバーターが、おのれ……!!」


 あの回避行動を取り続けたアンゼア、人間の女パイロットの腕前は大したものだとブリティティは思わざるを得ない。


 ズゥ……!!


「ジジさま達が襲われているぞ!!」

「遅いのだよ、まったく……!!」


 その彼等ブリティティ達の危機、それに誘導目標宙域へと散らばっていたオルカス・タイプ中核のオーク部隊が気が付いて。


「あんな雲スレスレの上で、ジジさま達は何をやっているんだよ!!」


 ブォオ……!!


 各々に機体を急加速させて、支援に駆けつけようとしてくれたのはいいが。


「まずいな、ワシ」


 上方を刃、鈍く光る黒刀を構えた一機のスプリートにと取られ、雲を使い相手を撹乱させようとしたブリティティの思惑は阻止される。やむを得ず彼は乗竜ワイバーンを下降させたが。


「ワシだけに狙いを定めたか、エルフめ」


 偵察女兵が駆る飛竜は早々と雲の中へと飛び込み、その彼女を追尾するエルフ機体が無いことは良いのだが、老オークは次に自分の身の安全を確保しなくてはならない。


 バァフ!!


 厚い雨雲の中、上方を取ったエルフ機から放たれる拡散霊力弾、PMとは違い、生身の身体をさらけ出しているブリティティにとっては一撃が致命傷となる。


「グワァ!!」


 ジュ、プゥ……!!


 その散弾をかわしきれず、何度も全身を金槌で殴られたかのような痛みと共に老オークの緑色の皮膚、身体のあちこみから血が跳ね、乗竜ワイバーンの鱗も血飛沫と共に辺りへと飛び散った。


「いよいよ終わりかな、ワシも……?」


 ボゥウ!!


 ワイバーンのロード種正面へと回り込んだスプリート、女のエルフが乗る機体からの霊力波こそ火炎のブレスで相殺できたが、その脇をすり抜けるもう一機のエルフ機。


「だが、ワシにも意地がある!!」


 その三機めの漆黒のPM。その機体の手のひらからが自分へ向けられる光景をじっと見つめながらも、老オークは腰の投げ斧を、PMの装甲にとっては石ころ同然のそれを投げつけようと身構えた。


「とどめだ、オーク!!」

「大君主にアーティナ様、オサラバです!!」


 一つオーク主神「ガルミーシュ」へ向けて祈りの短節を呟いた後、彼ブリティティの脳裏には自らの主君とその娘である女騎士、そして。


「すまぬな……」


 老オークの脳裏には、死んだ人間の妻と彼女との忘れ形見、オークの大地から飛び出したきり、何十年も会っていない息子の顔が浮かび上がる。


 ズゥガァ!!


「何!?」


 死を覚悟したブリティティ、老オークの目前へと迫っていたエルフ機の右肩が突然爆発を起こした光景に、反射的に彼は乗竜ワイバーンの手綱を強く引く。


 ドゥ、ドゥウ……!!


 強力なアンティマジック、魔力防護障壁へとその身を包んだスプリート・タイプへ向けてルクッチィ機、青い塗装を施された人間の傭兵が駆るオルカスが巨大ライフル、マッチロック・ターレットを斉射しながら上空の厚雲を切り裂き、落下をしてくる。


 ガゥ、ガ!!


「よく出来るものだ、あの人間の男は……」


 二十連ターレット・ライフルを片手で保持するなどという芸当は、エルフ達が保有するPMスプリートはおろか、パワー以外では全ての性能がオーク勢力の量産機オルカスよりも優れている「アンゼア・タイプ」と言えども出来るものではない。


 シャフ、ファ!!


 魔力防護障壁の魔術は無論に物理兵器、弩や火縄銃による攻撃には効果がない、風をあやつる「矢避け」の魔法でその身、自機を守ろうとしたエルフの気持ちは解る話ではある、が。


「矢避けの魔法なんぞが!!」


 渦巻く風を展開させたエルフ機、先程ルクッチィがその右肩を破損させたPMを、再びターレット・ライフルから発射された鉛玉が風のカーテンを切り裂きつつ。


「PM用のマスケットに効くもんかよ、エルフ!!」

「う、うわ!?」


 そのエルフ機スプリートのコクピット周りを、弾丸が容赦なく撃ち抜いた。


「一機撃墜!!」

「さすがにやるな、人間……」

「褒めても何も出ねぇよ、オークのジイサン!!」


 おそらくそのエルフ・パイロットは直撃弾により即死したのであろう、その黒いスプリートの霊力コンバーターから青い光が失われ、音も無くそのPMは地表へと落下を始める。


「次にやられたいエルフはどいつだ!?」

「火縄銃にはリスクも手間もあり、魔法程の利便性もないが……」

「後十発!!」


 ポイント・マテリアル、それの霊動エンジンの力を借りた矢避けの魔法は術者の力量が十分ならば大型のクロスボウ、弩による太矢(クォレル)による射撃をもその身から反らせる事が出来るが。


「それでも、このパワーこそが……」

「二機撃墜!!」


 通常サイズのマスケット・ライフル弾丸も退けられる矢避けの術にしても、この大口径を誇るPM用火縄銃の射撃弾は防げない。それがこの単発銃を皆、あらゆる勢力がデメリット面へと目をつむり、あえて使用している理由だ。


 バゥ……


「不発か、運の良い奴め!!」

「しかし、それでも我らオークのオルカス・タイプと言えども」


 オーク勢の主力機体オルカス。特殊なドワーフ製PMを除外した三機種、各種族を代表するPMの中で最大馬力を誇るオルカスにしても、この重火器による反動を制御するにはかなりの負荷を機体へ掛けなくてはならない。


 ズゥ、ン……!!


「実に、な……」


 上空からの雲と立ち込める火薬の煙を霊動コンバーターからの気流で払い除け、そのターレット銃の斉射を続けているルクッチィ機。


「優れた人形兵器の使い手だ、あやつは……」


 身体中の傷の痛みにその眉をしかめながら体勢を整え直すブリティティ、老オークの視線の先で。


 ドゥ!!


「いい気になるなよ!!」


 青きルクッチィ機オルカスへと襲いかかる一機のスプリートが、その曲刀を大きく振り上げ。


「人間が!!」


 鋭く空を斬りながら、自機へと迫るその黒い曲刀を。


 ガァン!!


「人間、おのれ!!」

「甘いんだよ、エルフ!!」


 軽々と左手に持つ剣ではね飛ばしながら、ターレット・ライフルを撃ちきるといった芸当が出来る彼、ルクッチィ青年は。


「パイロットのみのレベルで考えれば、間違いなくあの人間は」

「くそぉ!!」


 ザァフ!!


 いくら貴重品であるとはいえ、敵機を目前にしながら空になった大型ターレット、PMガットリング・マスケットをその右手で保持しつつそのエルフ機と互角以上に刃を合わせられる彼、人間の男の力量は。


「個人的PM武勇ならば、世界でもトップクラスだな……」


 ガズゥ!!


 以前にこのルクッチィ青年と、まさしくこの元村落の中で戦った事があるブリティティの目前で、若いエルフが駆る漆黒のスプリートの脚が破損し、内部の「クレイ」がこぼれ落ちる。


 ピィ、ン……!!


「引き際だ、二番機」

「何だって、隊長!?」


 クロスボウ・ピストルによる牽制をルクッチィへと放つスプリート、そのエルフの声になおも追撃を行おうとしていた青年、黒い曲刀使いの彼が自機を僅かに青いオルカスから後退させた。


「しかし、この人間野郎は!!」

「ベアリーチェ様が、アンズワースが大きく被弾をされている」

「何だと!?」

「オーク達の増援も接近しつつある」

「ちっ……!!」


 黒ずくめ部隊の隊長機と思われるその機体、スプリートからの通信にエルフの青年は強く舌を打ち。


「おい、人間……!!」


 PM越しにも解るほどの殺気を彼はその舌へとたぎらせ、濃青色に塗装されたオルカス・タイプへと投げかけつつ。


「貴様、名前は!!」

「ルクッチィ、姓はない」

「人間の中でも下等な奴か!!」

「吠えるなよ、負け犬ならぬ負けエルフが……」


 憎しみに満ちた声、言葉をエルフの青年はルクッチィへとひとしきり放った後。


 グゥウ……!!


 彼は自機スプリートのコンバーター出力を上げ始め、燐光が涼やかな音を立てつつにそのエルフ機の背から煌き、舞う。


「どうするよ、オークさん?」


 ルクッチィはターレット・マスケットへと念のために紙早合を装填しつつも、その撤退態勢へと入ったエルフ機達からはその目を離さない。


「放っておけ、人間」

「そうか?」

「大君主の娘たる……」


 ドゥフ!!


 漆黒の改良型スプリート達が燐の光を曇天の中へ放ちつつ、そのエルフの若者共々、エルフPM部隊は戦域から離脱していった。


「アーティナお嬢がな、気になる」

「解っているさ、オークのジイサン」

「フフ……」


 先程に厚い雲の上へと急上昇していった二機のPM、確かにルクッチィにしても彼女らの事は気には、なる。


「に、してもなあ……」


 この思わぬ戦い、エルフの仮設基地を襲撃したところで単なる警備部隊がいるだけだと、ブリティティ老人にしても思っていたが。


「こりゃ、場合によっては……」


 ここまでの大規模な戦いを繰り広げたとあれば、エルフ勢との全面戦争に突入する羽目になるかもしれない。そう思った彼。


「もしも、本当にエルフが悪魔共と手を組んだとしたら、我らオーク族だけでは太刀打ちが出来るものか……」


 老オークの戦士「ブリティティ」は一つため息をつきながら、眼下に見える破壊し尽くされたエルフ達の基地、それをじっと見やる。


 グルゥウ……


「おぉ、よしよし……」


 どうやら、腹を空かせたらしい乗竜の首を軽く叩き、なだめながらブリティティは。


「後で死んだエルフ共や、ガルミーシュの身元へ魂が行った脱け殻でも、食わせてやるか……」


 集まってきた生き残りの仲間達へ号令をかけながら、自らが仕えている女騎士アーティナの援護へ向かおうと、疲れた身体にムチを打つ。


「まあ、もっとも」


 ブリティティが乗るワイバーン、ロード種の飛竜が軽く上げる唸り声、空腹と疲労による不服を伝える声に対して後ろめたく感じながらも、老オークは雨雲へとその黒い鱗を持つ愛乗竜の躯を向けさせた。


「戦いの気配が消えた、勝敗がついているようだが、ね」

「だとしたらさ、ジイサン……」

「そうだな、お前さん達は」


 その老オークの近くまで自機を寄せたルクッチィのPM、彼に向けてブリティティは。


「あの破壊された、エルフ基地の見回りでもしてくれないか?」

「ああ、そうだな」


 スゥ……


 大型ガットリングをその背に納めたルクッチィの青色オルカスは、ブリティティの言葉に首を振ってみせるとその機体の身を翻す。


「生き残りも、いるみたいだしな」

「どうせ多くはエルフだろうに、人間の傭兵よ?」

「元々は人間の村だった所を、エルフ達が基地にしちまったんだ」

「そうだったな、傭兵ルクッチィよ……」


 確かに、一月だかそこら辺り前、エルフ基地となる前に人間の集落であったこの場所、そこを自分達オーク略奪隊が襲った時にもこの男ルクッチィの姿は、まさにブリティティはその目でしかと確認している。


「さすがに心が痛む、オークさんよ」


 ブゥフ……


 この青いPMへと乗っている傭兵、老オークの漆黒の大型ワイバーンから離れ、地上へ降り立とうとしている人間の男は。


「ワシらが、この村へ襲撃を仕掛けたあの時も」


 ブリティティが乗る、ロード種ワイバーンを相手にしてもあっぱれな奮迅をしていた。その事は彼オークの老戦士としても感心せざるを得ない。


「お前さん達は、お仲間共々よくワシらへ歯向かってくれたな」

「その事だが、オークのジイサンよ……」


 青色のオルカス、それが下降を続けながらに放たれるルクッチィ、人間の声。


「後で、少し聞きたい事がある」

「戦闘後の遠話の魔法、疲れないか?」

「疲れるさ、だから……」


 ボフゥ……


 身を翻し厚雲の中へ入った老オークの飛竜、そこからではうっすらとしかルクッチィの乗るPMの姿は見えない、直接の声が届く距離ではない。


「後で頼み、オークのジイサン」

「いいだろう、人間……」


 そのブリティティの声は人間の傭兵、ルクッチィには聴こえなかったようだ、魔法の効果距離外へと離れたのか、あるいは。


「何か気になる物でも、見つけたのであろうか……」


 視界が利かない黒雲、そしてそれに含まれる水滴等の冷たさが彼の身体中の傷へと障り、部分甲冑パーツアーマーの隙間から老オークの肌へと滑り込む。


 ブェクゥ……!!


 彼ブリティティは自身の乗竜が驚き、その長い首を乗り手である主へ向ける程に大きなクシャミを。


「ちくしょう、め……」


 雲の冷気の中で、一つ放った。

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