第41話 41層攻略前
テントの中を熱気が充満する。
行為を終えた俺はしばらく横になりながら、快楽の余韻に浸っていた。
頭の中はボーっとしていて、さっきまでこのテントの中で展開されていた俺とリュミヌーの痴態が、断片的な映像としてフラッシュバックする。
もう少し余韻に浸っていたかったけど、そろそろヴェーネ達が戻ってきそうなので、俺はリュミヌーを起こそうと彼女の方を向いた。
リュミヌーは黒いロングブーツだけ履いたまま全裸になって横になり、ビクビクと小刻みに身体を痙攣させている。
まだ俺との行為による快楽の余韻がおさまらないようだ。
彼女の絹糸のような美しい金髪が乱れている。
男好きのする曲線をしたお尻から、白い液体が垂れてきているけど、リュミヌーはそんなことに頓着出来ないくらい快楽で酩酊しきっている。
あんまりまじまじと見つめていると、二回戦に突入したくなっちゃうので、視線を逸らしてクールダウン。
やれやれ、リュミヌーといると賢者タイムが短くなるので困る。
そんなアホな事を考えていると、テントの外から気配を感じたので、慌てて服を着る。
「リュミヌー、起きろ。皆帰ってきたぞ」
俺が声をかけても、リュミヌーは「アラドさま……、さっきはとても良かったです」とうっとりとした声をあげるだけで着換えようとしない。
さすがに危機感を抱き始めてきたので、俺は快楽の海から帰ってこないリュミヌーの身体を無理やり起こして服を着せてやる。
だけどリュミヌーは相変わらずふやけた顔をしていて、とろけるように身体をだらんとさせている。
「おい、しゃんとしろよ」
「は、はいっ、すみませんアラドさま……」
ようやく脳みそが回り始めたらしい。
テントの外から聞こえるヴェーネ達の話し声が大きくなってきた。
もうすぐそこまで来ているようだ。
どうにか間に合ったようだな。
俺はテントの外に出た。
「アラド! もう大丈夫なの?」
俺の姿を見るなり、ヴェーネがこちらに駆けつけ心配そうに声をかけてきた。
「ああ、もう平気だ」
「そう、グランドドラゴン戦の後にいきなり倒れたからビックリしちゃった。でももう大丈夫そうだね。よかった」
ヴェーネは本当に親身になって俺の身体を心配してくれている。
その顔を見て、少し後ろめたくなる。
まさかさっきまでテントの中でリュミヌーと楽しんでいたなんて、とても言えるわけがない。
するとテントから、服を着たリュミヌーが外に出てきた。
「皆様、偵察お疲れ様です」
リュミヌーは普段と変わらない調子で笑顔を振りまいている。
さっきまであんなにふやけていたのに……。
ただ心なしか、リュミヌーの雰囲気に張りが出てきたような気がする。
やはりリュミヌーも溜まっていたのだろうか。
「うん、リュミヌーもアラドの看病お疲れ」
何も知らないヴェーネはただ純粋にリュミヌーに声をかけた。
「ところでヴェーネ、下の階はどうだった?」
俺がそう訊ねると、ヴェーネは厳しい表情に変わる。
「うん、それがね……」
そう前置きして、ヴェーネは41層の様子を説明してくれた。
「ふむ、なるほど、そいつは厄介だな」
今ヴェーネから聞かされた話を頭の中でまとめる。
どうやら41層からフロア全体が溶岩に覆われていて、溶岩の間を縫うように走っている細い道を辿って進んでいくしかないらしい。
そしてこれまた厄介な事に、魔障の濃度がさらに濃くなっているようだ。
溶岩による高温と高濃度の魔障。
ただ立っているだけで体力が削られていく過酷な環境。
「つまりここからは攻略速度も重要になってくるってわけだ」
セリオスが感情を殺した声でそう告げる。
確かにセリオスの言う通り、41層からはモンスターから攻撃を受けなくても、少しずつじわじわと真綿で首を締めるように体力が削られていくんだから、こちらの体力が無くなるまでに攻略しないといけない。
だから安全マージンをとってゆっくりと確実に攻略していく、というやり方はこの先では通用しないわけか。
「わかった、取り敢えず今日はここで休んで体力を回復させよう。充分に休息をとってから一気に41層以降を突破していく。これでいいな」
俺の意見に皆頷く。
ミロシュはそっぽを向いているけど反抗はしない。
まあ無理して仲良くなろうとしなくても、反抗さえしてくれなければ俺は文句は言わない。
それに、41層からの攻略はミロシュのようなゴリ押し戦法のほうが合ってるしな。
そう結論付け、俺たちは40層で休むことにした。
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