第40話 40層クリア
グランドドラゴンの火炎ブレスが俺の視界を覆う。
「くっ……」
『カーバンクルの盾』を前方に構えているお陰で火炎ブレスを防げているが、凄まじい熱気がこちらまで届いてくる。
あまりの暑さに全身が汗まみれになり、油断していると意識まで持っていかれそうだ。
だが俺は歯を食いしばり、必死に耐える。
俺の隣には、セリオスパーティーの盾役テレーゼがいる。
やはり俺と同じように巨大な盾を構えてブレスを防いでいる。
俺はグランドドラゴンの背後に視線を向ける。
セリオス達火力職が、各々の武器で必死にグランドドラゴンの背中や尻尾を攻撃している。
「くらえっ! ギルティブレイク!」
まずセリオスがSR斧『ガルーダアックス』を両手持ちして、大きく振りかぶってフルスイング。グランドドラゴンの背中に強烈な一撃を叩きつける。
「次はオレだ! 堕天魔王刃!!」
セリオスが後ろに下がり、それとバトンタッチするようにミロシュがグランドドラゴンに接近。SR刀『白竜刀・真打』による怒涛の10連撃をお見舞いする。
「おらおらおらおらおらー!!!」
ミロシュの10連撃がグランドドラゴンの背中に炸裂、敵のヘイトがミロシュに向かいそうになるのを、俺とテレーゼの「挑発スキル」で阻む。
「やりますわね、アラドさん」
必死に敵の注目を引き付けながらも、口角を上げて俺にそう声を掛けるテレーゼ。
「あんたこそな」
俺も前方に神経を集中させつつ、テレーゼにそう返した。
おそらくセリオスもミロシュも、全身全霊で技をぶち込んでいるはずだ。
自分達に注目が向くのも厭わず。
だからやわい挑発スキルでは、すぐに注目をセリオス達に取られてしまうだろう。
しかしテレーゼの挑発スキルは、決してセリオス達に注目が行くのを許さない。
圧倒的な安定感。
まあ俺のサポートがあっての事だが。
だがこれだけタンクが安定していれば、アタッカーは心おぎなく最大火力を叩き込む事ができるだろう。
「まだまだー!!」
ミロシュの10連撃が終わり、今度はヴェーネがSR大剣『雷剣プロメテウス』を両手持ちしながら飛び出してきた。
「いっけー!!」
ヴェーネは叫びながらミロシュの頭を飛び越え、大きく飛翔してその華奢な身体に似つかわしくない豪快な一撃をグランドドラゴンにお見舞いした。
メインアタッカー3人による、怒涛の波状攻撃。
その間にも、シャンテの針の穴を通すような的確なサポート攻撃と、リュミヌーとリディによる後方からの援護射撃が絶え間なくグランドドラゴンの背中にぶつけられ続けている。
さしものSSランクモンスターも、これだけの集中砲火を浴びてはひとたまりもあるまい。
あれほど頑強を誇っていたグランドドラゴンの面が、苦痛で酷く歪んで見える。
だが奴はこれだけ背後からボコボコにされているのに、盾を構える俺とテレーゼの挑発スキルにより前方に釘付けにされる。
「頑張れみんな! あと少しだ!」
カーバンクルの盾で矢継ぎ早に飛んでくる苛烈な攻撃を防ぎながら、俺はアタッカー勢の奮闘を見守る。
集中砲火によってグランドドラゴンの鋼鉄のような鱗が破れ、肉が断たれる。
鮮血があたりに飛び散る。
なおも攻撃の手は緩められない。
そして――。
「グギャアアアアア!!!」
鼓膜が破れるかと思うほどの音量で悲鳴をあげたグランドドラゴンの巨体がゆっくりと傾き、そして床に沈んだ。
フロア全体が一度大きく振動し、倒れたグランドドラゴンは完全に沈黙した。
「や、やったー!」
その場にいる全員が歓喜の声をあげる。
俺はずっと敵の猛攻に耐えていたので、さすがに身体中がギシギシ痛む。
その場にへたり込む。
するとリュミヌーがすぐに俺の傍まで駆けつけてきた。
「アラドさま、今回復魔法を」
「ああ、頼む」
リュミヌーの回復魔法が優しく俺の全身を癒していく。
心地よい感覚に身を委ねながら、俺の意識は遠のいていった。
◆◆◆◆
気がつくと、俺はテントの中に寝かせられていた。
「あ、気がつきましたか、アラドさま」
「リュミヌーか」
首を横に向けると、女の子座りしたリュミヌーの太ももが視界に入り、思わず顔をそむけてしまった。
下半身に血が溜まるのを感じる。
見慣れてるハズなのに、何度見てもリュミヌーの生足は性欲を刺激するな。
あの脚線美はもはや兵器に例えてもいい気がする。
黒いロングブーツがより太ももの白さを強調して、エロさを増幅させている。
って、俺は何を考えているんだ。
場所もわきまえず……。
そう言えばここはどこだっけ。
そうだ! ここは40層だ。
「どうかされました? アラドさま」
上の方から鈴の音を鳴らしたような声が振ってくる。
視線を上に向けると、リュミヌーが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
「いや、何でもない」
俺はなるべく心配させないように、出来るだけ軽い口調を意識して返事する。
「そう言えば、グランドドラゴンはどうなったんだ?」
「アラドさまや皆さんの奮闘のお陰で、無事討伐されました」
「そうか、そうだったな」
ようやくぼんやりしていた頭が回りだし、グランドドラゴンを討伐したことを思い出す。
「そう言えば皆はどうした?」
「アラドさまがなかなか起きないので、一足先に下の階に偵察に行きました。しばらくしたら戻るそうです」
「そうか……」
ということは、今この場にいるのは俺とリュミヌーだけなのか。
俺はリュミヌーの豊満な胸に視線を奪われながら、提案する。
「なあ、リュミヌー。ここ最近ご無沙汰だから、その……」
リュミヌーはそこから先の言葉を俺に言わせなかった。
「わかってます」と言いたげに、リュミヌーは優しく頬を緩ませて一つ頷く。
俺の鼻腔を何とも言えないフェロモンがくすぐった。
もう既に半分くらいリミッターが外れていたが、リュミヌーの同意を得られたので俺はまるで飢えた獣のように、リュミヌーの華奢な身体を力一杯抱きしめた。
リュミヌーの身体のラインを確かめるように、彼女の身体を撫でる。
いつも思うけど、本当にいい身体をしているな。
もし理想の女性の肉体というものがあるなら、まさにこれを言うのだろう。
お互い器用に服を脱いで、直に肌の温もりを伝え合う。
柔らかい感触が胸に広がり、性欲と愛情で頭が一杯になる。
そして俺たちはお互いを激しく求めあった。
もしかしたらこれが最後の性交になるかもしれないから、後悔しないよう全力で俺はリュミヌーを求めた。
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