第29話 魔導砲
村に戻ると、魔導砲の辺りに村人達が集まっていた。
俺達が帰ってきたのに気付いたリディが手を振って迎えてくれた。
「どうだ? 魔導砲は治ったか?」
「ご覧の通りよ!」
リディは自慢げに魔導砲を手でさし示した。
見ると、新品同然にピカピカになった魔導砲が威風堂々とした姿を放っていた。
その近くには、ロッティが大の字になって昼寝している。
「すげえ、あのボロボロだった魔導砲が見違えるようだ」
「ロッティの手にかかれば、このくらい朝飯前よ」
誇らしげに語るリディ。
「お前は何もしてないだろ?」
「あら、失礼ね。砲身を磨いたのは私なのよ」
リディは不満そうに鼻を鳴らした。
「わ、悪い……」
「わかればいいのよ」
そう言ってリディは腕組みして勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ふむ、ここまで完璧に修理できるとは、流石ジンガンの娘だ」
シャンテも魔導砲の仕上がりにご満悦の様子。
だが、実際のところこの魔導砲の威力はどれほどのものなのか。
試し撃ちしたいけど、モンスターがいないからなあ。
「ねえ、アラド」
ヴェーネが指さす方を見ると、ちょうどおあつらえ向きにフレイムワイバーンが一匹こちらに向かって飛んできている。
「うわあー! モンスターだー!」
村人達は慌てふためいて逃げ出そうとする。
「ちょっと待ちなさいよ! 何のためにロッティが魔導砲を直したと思ってんの!?」
リディの叫びに、村人達の足が止まる。
リディは魔導砲を操作し始めた。
「さあ、ロッティ特製の魔導砲のお披露目よっ!」
リディが何やらトリガーのようなものを引くと、砲口の辺りに魔法陣が描かれ、極太のレーザーが射出された。
レーザーはフレイムワイバーンを貫き、なおも直進してはるか向こうに見える山を削った。
フレイムワイバーンはレーザーに焼かれて消し炭になってしまった。
「す、すげえ威力」
さしもの俺も瞠目せざるを得ない。
俺だけじゃなく、村人達も驚いていたが、やがて歓声に変わる。
確かにこの魔導砲があれば、村の護衛は大丈夫そうだな。
なんせAランクモンスターを一発で灰にしてしまったんだから。
もし固定されてなかったら、災禍の王との戦いに持っていきたいほどだ。
その日の夜、俺は久しぶりにリュミヌーの手作り料理を堪能した。
甘辛い特製のタレを付けたしょうが焼きだ。
熱々に焼けた肉を頬張ると、口の中にぶわっと肉汁が広がって、得も言われぬ美味にほっぺが落ちそうになる。
「リュミヌー、料理うまくなったな」
「アラドさまのためにがんばったんです」
もじもじしながら照れ隠しするリュミヌー。
食卓を囲むのは、俺の他にリディとロッティ、それにヴェーネだ。
リディは無心にガツガツ皿の料理をかきこんでいる。
女子力高い娘だと思ったのは、どうやら俺の気のせいだったようだ。
一方ロッティは半目を開けてのんびりと箸を動かしている。
こいつはホント、工員の仕事以外は無頓着なんだな。
正餐が終わり、俺は自分の部屋に戻った。
後顧の憂いがなくなり、いよいよ災禍の王を討伐しに行くのだ。
災禍の王との戦いは、あのデスクラブをも上回る、今まで経験したことのない激戦になるだろう。
もしかしたら、これが最後になるかもしれない。
そう思ったら、自然と俺はリュミヌーを部屋に呼び出していた。
俺はリュミヌーを部屋に入れると、ドアを閉めて鍵をかけた。
「アラドさ……」
リュミヌーが何事か言う前に、俺はその華奢な肉体を抱きしめた。
そして、無理やり服を脱がして全裸にし、ベッドに押し倒した。
リュミヌーの瞳に僅かに恐怖の色が浮かんだような気がしたが、すっかり欲情した俺は構わず彼女を求めた。
リュミヌーはすぐに両目を閉じて俺を受け入れる。
別に戦いを恐れているわけじゃない。
だが今晩だけは、全てを忘れてリュミヌーの白磁のような身体を楽しみたかった。
悲鳴に近い絶叫を上げるリュミヌーの身体を、まるで不安を振り払うように激しく揺らした。
結局その夜、俺は5回も発射した。
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