第30話 古の地下迷宮 再突入

 ドワーフ族の姉妹、リディとロッティの活躍で無事に魔導砲が修復されたので、キィンロナ村の護衛問題は解決した。


 後は再び古の地下迷宮へと赴き、その最下層に眠るという災禍の王を討伐すれば、このミュルゼアの地に平和が戻る。


 リュミヌーと激しく愛し合い、英気を養った俺は早速ヴェーネ達と共にイザルス山脈の頂上へ向かうため、村の入口にやって来たのだが。


「遅いわよっ! アラド!」


「リディ!? それにロッティ! お前らどうしてここに!?」


「決まってるでしょ、私達も一緒にその古の地下迷宮ってところに行くのよ」


 当然でしょ、と言わんばかりの態度で腕を組むリディ。

 その隣には、相変わらず眠そうなロッティ。


「お前らなあ……、遊びじゃないんだぞ」


「そんなこと、言われなくてもわかってるわよ。話は聞いたわ。災禍の王ってヤツのせいで、ロッティが呪われてしまったんでしょ」


「ああ、まあな」


 災禍の王の身体から噴き出しているという、邪悪な魔力の奔流である魔障。

 これに長時間さらされると、呪われたり、正気を失ったりするという忌まわしき存在。

 ロッティが呪われていたのは、もちろんその魔障のせいだ。


「そんなヤツを野放しにしてたらまたいつロッティがひどい目に遭うかわからないじゃない」


 リディ、お前が妹思いなのはわかった。だが、


「それでもこれから向かう場所は、お前らみたいな子供がうろつけるような生易しい場所じゃないぞ」


 俺がそう忠告すると、リディは「ふふん」と勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


「甘く見てるのはそっちじゃないの?」


「なに?」


 リディは懐から何かを取り出し、少し離れたところの岩へとそれを向けた。


「それは……!」


 リディが構えているのは金色の『銃』だ。

 彼女が引き金を引くと、レーザーが発射され、向こうの岩を木っ端微塵に砕いた。

 確かになかなかの威力だ。

 昨日フレイムワイバーンを屠った魔導砲と比べると迫力不足だが、並みの攻撃魔法より上だろう。


「どう?」


 得意げにウインクするリディ。

 リディの話では、ロッティが開発した『魔法銃』という武器らしい。

 これがあれば、魔法の心得がない者でも魔法と同じような攻撃が出来るという優れモノだ。

 ただ、定期的に整備しなきゃいけないらしいので、ロッティも連れていって欲しいそうだ。


「ねえ、アラド。今は少しでも戦力が欲しい時だし、いいんじゃない?」


 ヴェーネがそう耳打ちする。

 確かに一理あるかもしれないけどなあ……。


「シャンテはどう思う?」


 俺が訊ねると、シャンテはいつものクールな表情を崩さず、


「リーダーはお前だ。お前の思う通りにするといい」


 片手を上げてそう言った。


「……わかった、リディ、ロッティ、力を貸してくれるか」


「もちろんよ!」


「……うん」


 リディは元気よく、ロッティは気ダルそうに返事した。

 正直ちょっと不安もあるが、戦力が欲しいのも事実だ。

 なので彼女たちもパーティーに加えることにした。


「よし、じゃあいくぞ!」


 こうして俺達はキィンロナ村を出発して、イザルス山脈へと向かった。



◆◆◆◆



 イザルス山脈の頂上にある古の地下迷宮に入り、1層の最初の大広間にたどり着く。

 すぐ右手の方に光の渦みたいなものがあった。

 俺は迷うことなくそれに近づく。


「ちょっと、アラド、そんなのに近づいて大丈夫なの?」


 リディが心配そうにこちらを見ている。

 まあ、冒険者じゃなければこの反応も当然か。


「リディ、あれは『追憶の扉』といって、一度たどり着いた階層にワープすることが出来るものなのよ」


 ヴェーネが俺の代わりに説明してくれた。

 するとリディは顔を赤らめて一つ咳払いし、


「し、知ってたわよ、それくらい。ちょっと試しただけよ……」


 そう言ってぷいとそっぽを向いてしまった。

 何ていうか、負けず嫌いな奴だな……。

 ちなみに『追憶の扉』は何故かダンジョンの入口付近に必ずある。

 ここ古の地下迷宮とて例外ではなかったわけだ。


 俺達は『追憶の扉』をくぐり、デスクラブと死闘を演じた10層の大広間までワープした。

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