ケース2「旧き者」

『久方ぶりですね、此処に命有るものが来るのは。』


念話と言うものがある、《肺と喉を介した発声》に依らない会話、直接精神に語りかける物。


『生憎と、此処にはもう、何も無いのです、錆びた塊か、そうでなければ朽ちた塊か。』


風の強い日のような、洞窟の入り口のような、ごうごうという《声》とは別に、深い知性となお深い諦めのしみた《声》で。


7メートルを越える身体と複数の脚に錆びた鉄の様な甲殻を纏う《彼女》は。


『それでも此処に踏み入ると言うのなら、《小さきもの》よ』


静かに。


『貴方は何を求めているのですか。』


問いかけてきた。

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異世界ケースバイケース 目木土 @sikenya

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