金を信じる人達
「皆、今日は記念オフ会に集まってくれて本当にありがとう!」
ザワザワ・・・
「イエーイ!」
ザワザワ・・・
「どうした皆ー?元気ないぞー!?」
・・・何だ?今日のセミナー参加者は随分とノリが悪いな。土地柄か?
「皆!今日は!俺の師匠を紹介するから!」
「皆さんこんにちは!清倫と申します!初めまして!」
ザワザワ・・・
「「おい、あいつだ・・・」」
ザワザワ・・・
「「アヤシー・・・」」
ザワザワ・・・
「えー、私と輝村君は長い付き合いで・・・」
何だこの空気は。
昨日と全然違うじゃないか。
***
「清倫さん!お疲れ様でした!」
「ああ・・・。何か、今日のセミナーは昨日と違うね?」
「すみません!ちょっとノリが悪かったと思います!僕の力不足でした!」
「と言うよりも、何か別の・・・」
plll
plll
・・・堂徳から電話?珍しい。
「清倫です。」
「おい!大丈夫なのかそっちは。」
「え?」
「カモどもの様子だよ。ネット見てねーのか!?」
「朝から準備してましたからね。ネットが何か?」
「・・・お前の過去と、輝村との関係がリークされてんぞ。」
「えっ・・・。」
「あちこちのネットメディアが公表してる。まとめサイトも飛びついてるとこだ。」
「だからカモ達の反応があんな・・・」
「あ?やっぱ何か問題起きてんじゃねーかよ!」
「・・・いえ。問題ありません。今からツアーを止めたら逆に怪しまれますし、予定通り行います。」
「まぁそれがいいだろうな。リークが深夜帯だったせいで、こっちも対応が遅れてる。今、抱えてるブロガーどもに記事を書かせてるとこだ。噂をやんわりと否定するような内容で。」
「・・・どうも。」
「リーク元についてはこっちで調査する。そっちは頼んだぞ。」
「大丈夫です。こういう商売をするなら炎上は付き物ですから。乗り切ってみせますよ。切ります。」
「・・・。」
「き、清倫さん・・・?あの、今確認したら、僕のSNSに変なリプが大量にきてるんですが・・・。」
「輝村君、今はツアー中だ。動揺している場合じゃない。今後のことを考えるのは帰ってからにしよう。」
「は、はい。取り乱して申し訳ありません・・・。」
***
「・・・ひっでぇなこりゃ。」
最初のリークから数日経つが、特大のネタが連日投稿されている。
今日は、清倫のマルチ商法についての解説だ。証拠付きで、詳細に。
まぁ、叩けば埃がキロ単位で出てくるような奴だからな・・・。
こうなると、清倫と輝村の知名度が裏目に出る。
まとめサイトやSNSの拡散速度も半端じゃない。
各ネットメディアが公表のタイミングを揃えているのも気になる。
誰かが仕切ってる?誰が?
いや、それよりも、このままじゃホールディングスの看板がヤベェ。
これを理由に清倫を解任・解雇して、関係を切った方がいいか。
グループとしては、知らなかった体で・・・通じるだろうか。
短期的には炎上の対象になるだろうが、中・長期的にはそれで難を逃れられるか?
・・・そうだ。
SNSやブログでの擁護は止めて、悪いのは清倫と輝村って方向にシフトさせるか。
ホールディングスとの関係を否定しなくては。
考え事が一気に増えた。
忙しい忙しい。
「戻りました。」
「ああ。件の清倫さんお疲れ様。セミナーはどうだった?」
「散々ですよ。カモの大半がシラフになっていました。」
「状況については分かってるか?」
「大体は。」
「清倫、悪いんだけどさ、もうこうなったらお前と仕事すんのは無理だ。辞めてくれねぇ?」
「はぁ?こんなタイミングで私を切るんですか?」
「いやぁ、まさかお前が昔マルチ商法をやってたなんて、俺は知らなかった。恐ろしい男だよ。」
「ふざけないでください。そんなことをしたら、あなたが運営してるまとめサイトとこの事務所の住所をセットで世間に公表しますよ。私との関係も添えて。」
「・・・それはシャレにならねーな。」
「お互い心臓握り合ってるようなもんなんですから、裏切りは無しでお願いしますよ。」
「はいはい・・・。」
「とりあえず、沈静化するまで下手なことすんなよ。これから、匿名掲示板やSNSに業者を放つから。」
「業者?」
「おめーのこと叩きまくってる奴らを押さえ込まないといけないだろ。」
「ネットでどうやって?」
「炎上っていうのは、消極的な多数の娯楽に過ぎない。積極的に暴れてるのは一部だけだ。」
「後者はどうしようもないが、前者は溜飲さえ下がれば何でもいいんだよ。今回はたまたまネタがお前ってだけで、別にお前じゃなくてもいいわけ。」
「だから、業者を使ってヘイトを散らす。ストレス解消が目的な馬鹿どもの相手は業者で十分だ。」
「・・・騒動に便乗したデマ情報がかなり流れてます。ついでにそっちもどうにかなりませんか?」
「名誉毀損で訴訟でもするか?かなり間抜けなことになりそうだが。」
「・・・止めときましょう。そっちはあなたにお任せします。とりあえず、輝村は一旦活動休止ですね?」
「何かソレっぽい理由つけてな。謝罪なんて一切するなよ。」
「分かってます。この世界、認めたら終わりですからね。上手いことやり過ごしますよ。」
「ってか最悪・・・」
「まぁ、輝村は切ることになるかもしれませんね。大丈夫。代わりはまだいますから。」
「こんだけの騒動になってもまだ信者いんの?教祖様は凄いな。」
「信者と書いて「儲」です。人徳が人を寄せ付けるのではありません。金が人を寄せ付けるのです。」
「・・・ああ、名言っぽいよ。それ。」
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