ヒカリ輝く新事業②

自分で言うのも何だが、俺は頭が良い方だと思う。

中学高校と、いつも周りが馬鹿に見えた。

自分の成功を疑ったことなんて、これまで1度も無い。

今は清倫の下につくような形になっているが、奴は俺の踏み台に過ぎない。




ビジネスで成功したい時、その方法は大きく二つある。

自力で成功するか、成功した奴に乗っかって成功するか。


資金や信用、ノウハウを一から築くのには長い時間がかかる。

だから、多くの起業家は成功者に乗っかろうとするし、成功者の周囲にはそんな奴らが群がる。


確かに、堂徳や清倫は胡散臭くて油断ならない。

しかし、成功の方法は知っているし、金も持っている。

俺を利用するつもりなのだろうが、逆にあいつらを利用してのし上がってやる。


奴らをスポンサーにつけて半年が経つ。

俺が運営する動画チャンネル「kimura サクセスチャンネル」のフォロワーは現在50万人。

購入したフォロワーを抜きにしても、かなりの数だ。


高級車や高級時計など、ありとあらゆる“グッズ”を清倫からレンタルし、動画で公開。

企画にも大金をかけている。

俺を金持ちと信じている馬鹿は、間違いなく一定数いるだろう。


芸能界と同じようなもので、ネットの世界でも人気は作れる。

結局は、どんなスポンサーをつけて、金に物を言わすかだ。


動画についた頭の緩いコメントを見る度に、カモが順調に集まっていることを実感する。





「・・・そろそろ、狩り時だ。」









 ***









「動画チャンネルのフォロワーが順調に増えてんのは認めるよ。で、どうやって情報商材まで誘導すんだ?」


「動画サイトで直接はやりませんよ。輝村には、クロージングまでにいくつかクッションを挟むように指示しています。」


「具体的には?」


「まずは会員制ウェブサイトにカモを誘導します。サイトの会員になるためには個人情報の登録が必須。登録者にのみセミナーを案内し、セミナー参加者をクロージングするという流れです。」


「何か、まどろっこしいな。」


「こうしないと、悪評がすぐ拡散するんですよ。情報商材は、実態がバレる前に収益を稼ぐのが鉄則です。」


「ああ。」


「悪評を広めるのはアンチ層です。ですから、彼らの目に触れる場所での販売行為はNGです。」


「なるほど。だから動画で直接やるのはダメってことか。あのウェブサイトにしたって、具体的なことは何も書いてないしな。」


「会員制サイトに個人情報を登録して、セミナーの案内を受け、会場まで足を運ぶアンチは多くありません。」


「悪評の拡散を抑えられるし、セミナーに集まるのは大体カモってことだな。」


「そういうことです。」


「要領は分かった。」


「では、今後も「kimura サクセスチャンネル」を各メディアでゴリ推ししてください。」


「そのチャンネル名、なんだかなぁ・・・。」










 ***













「「「キャー!!!」」」





「「「キムラさーん!!!」」」






「・・・皆、今日はチャンネル登録者50万人記念オフ会に集まってくれて本当にありがとう!」





「「キムラー!!」」





「正直こんな集まると思ってなくて。多くの人に会えればと思って、こんな会場を用意しました。」






「「こっち向いてくださいー!」」






「応援ありがとなー!ありがとー!」





300人入るホールが満員。


自分の人生が上手くいってない連中ほど、他人に夢でも見るんだろうか。

こいつらを見ているとそう思うことがある。


こいつらは、きっと俺が自分の人生を変えてくれるに違いないと信じている。

俺に自分の人生を預けに来ている。


そんなんだから、いつまで経っても負け組だということに気づかないんだろうか。

・・・いや、気づかないんだろうな。


どうすればこいつらが喜ぶのかは理解しているが、どうすればこんな生物が生まれ育つのかは理解不能だ。








「皆!今日は!俺の師匠を紹介するから!」






ザワザワ・・・







「皆さんこんにちは!清倫と申します!初めまして!」




「「誰?」」




「「え・・・誰?」」




「「何だー?」」




ザワザワ・・・





「皆!俺が金持ちになったのも、この清倫さんと仕事をしたことがきっかけなんだ!今日は是非、話を聞いて貰いたくて呼びました!」



「これで皆も絶対成功できるから!俺を信じて、とりあえず清倫さんの話を聞いて!」



「輝村君、皆も少しビックリしてるようだし、僕達が出会った頃からこれまでの話をしてみない?」



「あ、いいですね。じゃあ、あのビジネス立ち上げた時の話しません?」



「あー、あれ?あの時は大変だったよねぇ・・・億単位の商談が飛びかけて・・・」



「そうそう!あの時は・・・」










 ***












「清倫さん、お疲れ様です。」


「お疲れ。次は?」


「明日は名古屋です。10時からで。500人の集客を見込んでます。」


「OK。流石の人気だね。」


「いえ!清倫さんのおかげです!」


「よく分かってるね。君の実力は2割程度で、あとは私のノウハウとプロデュース能力のおかげで成功しているに過ぎない。今後も謙虚にね。」


「はい!承知しています!」


「それじゃまた明日。お疲れ。」


「はい!お疲れ様でした!明日もよろしくお願いします!」






嫉妬してんじゃねーよバーカ。

そんなに自分の手柄にしたけりゃ、最初から自分でやってみろって話だ。


お前みたいなスポンサーを味方につけるところから、俺の実力だろ。







踏み台が偉そうな口利いてんじゃねぇよ。

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