夢を!諦めるな!③

「戻りました。彼らの洗脳を解いてきましたよ。解いて、再洗脳しました。」


「お疲れ。」


「そろそろドリーム・チャレンジャーの顧客データが消える頃ですか。」


「ああ。こっちもネットで叩きまくる準備万端だ。」


「それは、どのように?」


「数百円で記事を書いてくれる自称ライターなんて腐る程いるからな。まずはそいつら数十人を使ってSNSに暴露記事を連続投下する。」


「たった数十人で何か変わるんでしょうか。」


「ネットの世論なんて簡単だ。まずは“本気”の奴ら数十人に情報を持たせて、一つのプラットホームに集中投入する。」


「そうやって作った火種を、うちの会社が持ってるBOTアカウントで拡散させまくる。対象を恨んでいる人間が多くなくとも、詐欺まがいのビジネスは美味しいネタだ。一部の奴らの目に触れれば、火種が娯楽に変わる。」


「積極的な少数が火種を作り、消極的な多数が娯楽として楽しむ。これが炎上だ。」


「さらに、炎上ネタにはネットニュースやまとめサイトも群がる。うちでもまとめ記事を出していくぞ。一石二鳥だ。」


「あなたいつもそんなことしてるんですね。」


「テレビメディアだって似たようなことしてんだろ。ネットも同じだよ。」








 ***










「はい!皆さん!世間のデタラメに騙されてはいけません!弊社は安心と信頼をモットーに事業を営んでおります!」


「せーの!ドリーーーーーーーム!」



「「「うるせー!!!!」」」

「「「金返せ詐欺業者!」」」



「落ち着いてください!少し説明をさせてくださ・・・」



「お前みたいな詐欺野郎は消えろ!!!」

「そうだ!日本の恥さらし!」

「クソみたいな製品ばっかり持ってきやがって!」



「落ち着いて落ち着いて・・・。」



「クソ製品に何千万も払わせやがって!」

「犯罪者!詐欺師!」



「・・・。」



「そんな虚業で飯食って恥ずかしくねーのか!」




「ふっ・・・“虚業”ですか。」


「皆さん、好き勝手仰いますけど、ちゃんと契約書を確認して、承諾した結果でしょ?」


「その責任をこちらになすりつけられては困りますね・・・。自己責任でしょう。」



「あんなに大量の細かい字を一々全部読むかよばーか!」



「逆にお伺いしたい。「細かい字」というだけの理由で契約書を読まず、自分の金を数百、数千万と事業に投じるなんて、どんな神経をされているのかと。」


「契約書の内容が弊社の意図です。それを読まずに一部の方々が“勝手な勘違い”をしただけですよ。」


「・・・。」



「事業にリスクはつきものです。まぁ今回の件で、お互いちょっとした“行き違い”はあったかもしれませんが、失敗の責任をこちらに負わせようとするのは筋違いです。」



「う・・・む・・・。」

「いや!何納得してんだよ!あんなクソ製品を売りつけようとしたんだぞこいつは!」

「そうだ!ものづくり大国の人間として恥ずかしくないのか!」



「はぁ・・・。クソ製品ですか。」


「言っておきますが、弊社が取り扱っている製品は全て純国産。その、“ものづくり大国日本”とやらに生まれた数多くのベンチャー、中小企業の製品ですよ。」



「「「えっ!?」」」



「製品を作るだけ作って、売り方も分かってないようなベンチャーや中小企業は沢山あります。その在庫の販売権と皆さんをマッチングさせているのが弊社です。」


「皆さんがクソだと言ったその製品も、一応志ある“ものづくり企業”が作ったものです。製品の文句はそちらへどうぞ。」


「大体、物を作っていれば虚業じゃないとでも言うんでしょうか。有形の物を称賛し、無形の物を嘲罵する。理解力の乏しい原始人にありがちな思考です。虚実の本質はそこじゃないでしょう。」


「・・・。」



「実在する物体しか理解できない人間の“ものづくり信仰”のせいで、日本は3次産業で他国に遅れを取ったんです。そして、3次産業を柔軟に取り入れた国に2次産業分野でも差をつけられている。」


「もう日本は、ものづくり大国ではありません。今あるのは、皆さんの思い込みが作り出した虚像だけです。」



「そ、それとこれとはまた話が別だろ・・・。」

「そうだ!話を逸らすな!」



「はいはい。まぁ、これで分かりました。今日で弊社はしばらく休業します。」


「詐欺をしたわけじゃありませんよ?訴訟ならば、弁護士を雇い、証拠を揃えて出直してきてください。皆さんにそんなオツムと行動力があればの話ですが。」









***











ドリーム・チャレンジャーが消えるまで1ヶ月もかかりませんでした・・・。

顧客リストが削除され、評判まで悪くなったのですから、会社を存続させる理由が無くなったんだと思います。


堂徳社長達は恐ろしいです。

恐ろしいですが、詐欺まがいの会社を潰したわけで、これは珍しく善行だったのではないでしょうか?


いや、僕が今やっていることも大概ですから、人の商売をどうこう言えませんが・・・。

ちょっと最近、お金のために自分をどこまで売れるのか、考え始めました・・・。

僕は堂徳社長達のようになれる気がしません。



「正田!」


「ハ、ハイ!!」


「今回はよくやった。」


「ハ、ハイ・・・。」


「お前があの会社を潰したと言っても過言じゃないな!」


「ヒ、ヒェッ・・・。」


「シ、しかし、何であんな商売をするんですかね・・・。もっと普通にお金を稼げばいいと思うんですケド・・・。」


「お前が言うか。」


「イ、イヤ・・・。」


「経済アウトローやってる奴らだって、最初から悪事をしていたとも限らない。」


「エッ!?」


「最初は割と真面目にキャリアを積んでた奴も多いってことだ。」


「そうなんですか・・・。」


「まぁただ、ちょっと人より野心と能力があると、起業しちまうんだよ。起業して、失敗して、再起して、また失敗してってのを繰り返してるうちに、曲がっちまうんだ。」


「サラリーマンに戻ることはプライドが許さない。しかし、起業家として真っ向勝負するには力量が足りない。そんな奴らが誘惑に負けて、昔取った杵柄で詐欺まがいのことをする。」


「真面目に積み重ねてきたスキルやノウハウは、悪事の役にも立つってことだな。」


「・・・。」


「ド、堂徳社長も・・・ですか?」


「は?俺?俺は節操が無いだけだな。商売に善とか悪とか、黒とか白とか無いって考えてるタイプ。」


「エエッ!?」


「俺は最初から今の商売で起業してるからな。真っ当な商売なんてやったことないぞ。」


「エエッ~!?」


「・・・アレ、そう言えば今日、清倫さんはどこへ?」


「あいつは今、重要な仕事に取り掛かるところだ・・・。」


「重要な仕事・・・?」


「丁度良い。俺も今から様子を見に行こうと思ってたところだから、お前も来い。近くのビルのセミナールームだから。」


「セ、セミナールーム!?」








 ***










「はい、皆さん!おはようございまーす!サクセース?」



「「「「サクセース!!!」」」」



「「「「うぇーい!!!!」」」」



「元気一杯のサクセス!ありがとうございます!」


「悪徳業者ドリーム・チャレンジャーは潰れたようです!やはり、悪はまかり通りません!」


「本日!皆さんには!弊社のお勧めする!貴重な健康食品の!販売権をご提案します!これは期間限定です!」


「通常1パック5,000円・・・のところを!この会場にいる皆さんのみ!何と定価から6割引!2,000円で仕入れ、販売することができます!」



「「「「おお・・・・。」」」」



「さ・ら・に!通常ならば仕入れは1,000パックからなのですが!今ならお試しで100パック単位で仕入れることが可能です!リスクが低くて、良いですよねぇ!?」


「皆さん!これで人生一発逆転!一緒にサクセスしましょう!!」



「「「「うおおおお~~~~~!!!!!」」」」






「アッ・・・アッ・・・。」


「正田、見てみろ。凄いだろ。」


「コ、コレハ・・・。」


「ドリーム・チャレンジャーから奪った顧客リストをそのままにするわけないだろ。カモの総取りだ。」


「競合を潰し、まとめサイトのPVを伸ばし、カモまで集められる。一石三鳥だな!ハハハ!」


「・・・。」


「・・・ん?どうした?」


「イ、イエ・・・。」









やはり、堂徳社長達には血も涙もありません・・・。

僕はようやく、自分のやってること、関わってる人達のことを理解し始めました。

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