友情合体!モラル・サクセス・ホールディングス!

新会社、「株式会社モラル・サクセス・ホールディングス」を立ち上げて3ヶ月。

俺の堂徳商事とネオ・サクセスのシナジーは想像以上で、その成長率には驚いている。

まとめサイトとマルチ商法の親和性の高さは、牛丼レベルだ。



一緒に仕事をしてよく分かった。

清倫は素晴しい。


自分の魅せ方、弁舌の爽やかさ、頭の回転、周到な準備。

そして何より、こういう商売に引っかかる人間の性質をよく理解している。

別にマルチ商法なんてしなくても、こいつは何かしらの道で成功していたんじゃないか。


それなのに敢えてマルチをやっている理由は何だ。

正攻法でやっていく自信が無い?

単なる儲け主義?


間違いなく、こいつは俺のことを1ミリも信用していないだろう。

それでも、リスクとメリットを天秤にかけてメリットを取ったわけだ。



・・・何をそんなに焦るんだか。

いずれにしろ、これは付け入る隙だな。


どうにかしてこいつを取り込めないもんかね。


「あ・・・。」






「・・・清倫。」


「はい?」


「ちょっと、外していいか?」


「・・・?」


「飯。腹減った気がするんだ。」


「は?」


「お前も来るか?牛丼屋だけど。」


「いや、まだ昼食には早いんで。」


「そうか。じゃあ俺一人で行ってくる。」


「早く戻ってきてくださいよ。」


「早く戻るのは無理だ。飯はゆっくり真面目に食べないといけない。」


「はぁ・・・?」


「じゃあ、もう行くわ。」


「・・・ご勝手に。」




堂徳が油断ならない男であることは理解している。

と言うより、この世界に裏切り、裏切られは付き物だ。

実力ある人間には大体野心もセットだから。


それでも、奴は“使える”。

運営するサイトのPV数が証明するように、奴のマーケティング能力は抜群だ。

まるで、こういう話にハマる連中の脳みそを鷲掴みしているかのように。


奴がネットで人間を集め、僕が現実でクロージングする。

危うい男だからと言って、このシナジーを逃す手は無い。


会社は次第に支配していけばいい。


そのためには・・・



「ねぇねぇ正田さん。」


「ハ、ハイ?」


「まさか同じ大学にこんな仕事をしている人がいるとは思いませんでしたよー。」


「イ、イヤー・・・。」


「堂徳さんって食いしん坊なんですか??それとも朝食取ってないだけ?」


「ク、食いしん坊・・・なんですかね。多分朝食は取ってますし、アレで昼食もちゃんと取りますからね。」


「何それ。じゃあ1日4食?」


「ゴ、5~6食らしいです。よくお腹が空くみたいで・・・。」


「へぇ・・・。」


どうやら、堂徳はこの正田という男に目をかけてるらしい。

間抜けな顔をした奴だ・・・。

うちの子会員達も口を揃えて「カモ」と言っていたが・・・。


「正田さんは堂徳さんと付き合い長いんですか?」


「モ、もう1年以上になりますね。」


「私、堂徳さんのことがまだよく分からないんですよ。ほら、あの人ちょっと強面でしょ?話しにくくて。色々教えてくださいよ。」


僕が本当に聞きたいのは、お前が堂徳のことをどう思ってるかだ。

切り崩すなら、身内から。


「ハァ・・・。イヤ、ボ、僕も堂徳社長のことはよく分からないですよ。あんまり自分のこと話す人じゃないですし。」


「そうなんですね。何ででしょうね。」


「イ、イヤーどうなんでしょうね・・・。」


「昔、凄い悪いことしてたりして。」


「エッ!・・・アレ、でも僕達もそんなに良いことやってないような・・・。」


「確かにそうでしたね!ハハハ!」


「ソ、ソウ言えば、清倫さんってその・・・マルチの・・・?やっていらっしゃるんでしたよね・・・?」


「そうですよ!あ、その節は申し訳ない。うちの子会員が正田さんのことを勧誘したみたいで。」


「イ、イエ・・・。大学生相手にマルチの勧誘って、そんなに儲かりますか?大学生ってお金持ってないですし・・・。」


「持ってますよ。」



「エッ!?」



「大学生は、金持ちが沢山います。」


「ソ、ソウデスカ・・・?」



「正田さんって、実家暮らしですか?」


「ハ、ハイ・・・。」


「じゃあ、実家にお金入れてます?」


「い、いやぁ・・・・入れてないですねハイ。」


「学費は?」


「親に払ってもらってます・・・ハイ。」


「ということは、バイト代はほとんど自分のお金ですよね。世の中には毎月数万の小遣いしか使えないサラリーマンもいるというのに。」


「アッ、言われてみればそうですね・・・。」


「学費と生活費を親に負担させながらバイトしている大学生なんて、全然珍しくないですよね。だから彼らって、自分の趣味に結構な額を費やすじゃないですか。毎月それだけのキャッシュフローがあるなら、私達のターゲットとしては合格点ですよ。」


「ナ、ナルホド・・・。」




「あとは奨学金ですね。」


「ヘッ!?」


「一種二種合わせれば、毎月十数万円入るでしょ・・・。」


「イヤイヤ!ソレって学費とか・・・」


「やだな正田さん。学費なら毎月十数万も借りる必要ないじゃないですか。そんなに借りたら、学費を差し引いても結構な額余りますよ。」


「ア・・・。」


「では、過剰に奨学金を借りている学生は、その残りを何に使っているのか・・・。」


「・・・ちょ、貯金ですか?あとは生活費とか・・・?」


「そういう人もいるでしょうね。でも、そうじゃない人もいますよ。」


「ソ、そうじゃない人?」



「余った奨学金ツマんで遊んでる馬鹿ですよ。」


「エッ!?エッ!?」


「いやいや。いますよそういう大学生。全然います。」


「つまり大学生っていうのは、社会経験が無くて、自由に使える金が多くて、その使い方にも計画性が無いんです。」


「・・・。」


「マルチ業者にとって、これ以上条件の揃ったカモいないでしょ?」


「ハ、ハァ・・・。」


「あ、そんな引かないでくださいよ。」


「イヤ・・・シャセン・・・・。」


「こうして一緒に仕事をする仲間になったわけじゃないですか!」


「ハ、ハイ・・・。そうですね・・・。」


「それに、正田さんはエンジニアなんですから、こっちの販売現場を経験する必要もないわけで。」


「ハイ・・・。」


「正田さん達が集めたカモを、私達がガッツリ勧誘してるだけですから!」


「エェ、ハイ・・・。」



ふーん・・・。

何となく、正田という男について少し分かってきた。

じゃあ、こういう話でもしてみるか。



「・・・まぁ私も、いつまでもこんな商売してたくないんですよね。

近々マルチから足を洗って、もっと“真っ当な商売”をやろうと思うんです。」


「エッ!?そうなんですか!?」


「そりゃ、今は仕方なくやってるだけに決まってるじゃないですかー。」


「ヘ、ヘェ・・・。」


「でも、堂徳社長はどうなんでしょうねぇ?あんまり白とか黒とか拘る人じゃなさそうだからなぁ。」


「・・・。」




つまりこの正田という男は、金は好きだし、そのために多少の悪事も働けるが、徹しきることはできない。

そういう人間だ。


僕はこういう人間を五万と見てきた。

「金が全て。そのためには何だってする。」と口では言うが、クズにもなりきれないクズ中のクズ。


まぁそれだけに、コントロールも容易い。











さて、この種をどう芽吹かせるかな。

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