平成最後の夏の、とある台風
【前回までのあらすじ】
昨夜の台風の時間の流れを書き留めておく。
夕方、確か五時より前にはえらい風が吹いていたと思う。時折豪雨も取り混ぜながら、奴は関東地方に侵入して来たのだ。
ちなみに昨日もわたくしこと
そして、曇天も雨天も、私は、湿度さえ高くなければ大歓迎である。
何故なら、忌々しい日の光を浴びずに済むからだ。近年はほぼ一年中体感温度余裕で30度越えのあいつを愛する余裕はない。
日なただけ暑く、日陰は冷たい空っ風のせいで冬……それが最近の夏以外の太陽が我々にやらかす基本的な仕打ちである。そして、夏場はどんどん長くなり、秋は消えつつある。最早暦の上だけでの存在になりつつあるのだ。
暑さは我々から、メランコリックになったり、フォーリンラブさせる余裕すら、奪おうというのか―
これは仮説だが、一部の唐突なわいせつ行為で法の裁きを受ける事になってしまう人物達も、もし、秋が季節的にカウント出来るくらい長かったら、真っ当な関係を被害者になった方、もしくはどこかの理想的な誰かと築けていたかもしれない。
箇条書きにするとこうだ。
・夏はみな薄着になるので、ガツガツしてると思われたくない為、
『そこのYOU。私の見たまんま……どう思う?』(大意)
という活動が控えめになる。
・昔なら秋口の服装になった辺りでそれとなく
『ンンwwwあたしぃ、お、お、〇〇(人名)さんの事が好きですwwwおっおっおっオゥフコポォwww』(大意)
というアプローチが出来たが、今はほぼ秋がない。
・冬になると日頃は興味ないスタンスの人でも、不意に人肌恋しくなるもの。しかし、秋の内にそれを育む余裕どころかきっかけすら掴めなかった為に、
『ついカッとなって、行きずりの異性にそれを求めたばかりか、私の理想年齢とは異なる層にアプローチしてしまった』
という結果になってしまっているのではないか。
『秋さえあれば……うう……』
と、自分ではどうする事も出来ない地球規模の変遷の時期に生まれた事、図らずもその時代の先駆者として生きなければならぬ事実に苦悩しながら、その様な不幸な流れから加害者となってしまった人々は、取ってはもらえるが実は自腹のカツ丼を、割り箸でちょんちょん突付いているのかもしれないのだ。
ここは是非その可能性を吟味して、
『あたしゃあ、痴漢等で逮捕された人間達のその仕組みを研究し始めて、かれこれ40年程、こちらに仕事を
チェック分野を挙げましょうか。そう、例えば戦後と言われた時代から近年までの社会情勢の移り変わり。
『アメリカの犯罪を10年遅れて追いかけている』
と言われる我が国の犯罪事情。
犯人となってしまった人間、逆に被害者となってしまった人達の人間関係、生い立ちなどを俯瞰して調べてるんですがね……面白い事が分かったんですよ。
ただ、犯罪関係の研究としてはやはり、猟奇犯罪やサイバー犯罪よりは緊急性が求められないとかで、つまりはマイナー扱いなんだ。研究費の捻出がどうにもならなくてね。予算がなければ人も材料も集めるのは至難の業っちゅう事です。
例を挙げれば
『小麦アレルギーがただちに命を損なうものではない』
という事で、それに苦しむ方々の対処方法がもう数十年も変わらないんですが(知人が言うには変わらないそうだ)、それと似た様なもんですわ』
という感じの立場の方に、国会での仕事をさぼった某政党辺りの給与相当額を全額バシッと気前良く与え、良くも悪くも立証させてみて欲しいものだと思う。
話がそれた。
とにかく日が完全に落ちた辺りからの奴の暴れっぷりは凄まじかった。
強風で我が家の屋根を破壊したのか、天井裏に直に水が当たる音がしたり、日除けの為に窓に貼ってあったブルーシートをべりべりと、レイプ魔、もしくは陰湿系同性愛者が唐突な凶暴さ&欲情から繰り出した腕の様に引っぺがしたり、
『おや? 外から
『このタイミングでなら言える』
とでも言うかの様な、男の絶叫に似た何かが聞こえる。
その正体、果たして、神か魔か……』
みたいなえげつない轟音がしたり、築ン十年の我が家がまさにギシギシと、
『どういう事? もしかして、わたくしの部屋以外の全戸でまさに今この瞬間、
『今ならどれだけ法悦の声を上げようとばれぬはず!』
と思って、激しく愛を紡いでいるとでも言うの? ご高齢のおうちも確かちらほらあったんですけれど、
『獣欲の成すがままに』
って奴なの?』
とばかりに揺れて軋んだり、
『あー、これ間違いなく物干し竿が外れかかっている音だ! どう考えても外れかけてる音にしか思えない!!
昔これでほっといたら翌日無くなってたし!』
と察するに十分な、ドラム缶をアスファルトに転がす様な音がしたりした。
一時的に音が収まり、窓を開けて物干し竿の様子を見ると、隣室との境のプレートが無残にむしり去られており、そしてそちらのお宅の洗濯機がその上に、身を横たえていた。
何かの配達のバイクの音も今はなく、ただ街灯が、人っこ一人いない夜道を照らしているだけだった。
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