015_王道から逸れた『おふざけ作品』にPVや評価が集中しやすい

 ウェブ小説の評価の傾向を定期的に分析するに、『おふざけ作品』に評価が集中しやすい傾向にあるのではないかと感じるようになった。


 極端な例で言うなら、

 王道の物語を真面目に書く作品は評価はされず、

 ケツからビームを出して世界を救うような作品には評価が入りやすい。


 ウェブ小説は若年層の人のアクセスがメインであるので、目の肥えた30代以上の層に比べれば、王道作品は訴求しやすいのではと想定していたが、どうやらそうでもないようだ。

 若者たちは、既にテレビやゲームなどを通じて多くの王道作品を体験してきているようで、王道という作品自体に『慣れ』と『飽き』を慢性的に感じるようになってきている。

 王道は既にお腹いっぱいになっているので、むしろ、ウェブ小説に対しては、王道から外れた『逸れ』を求めているのではないだろうかという予測をしている。


 『王道を逸らす』という需要なんだろうかという点について、改めて振り返ってみよう。


 割と色んなパターンがある。

 例えば、原作があるコンテンツで、もしも、主人公が別のヒロインとつながったら、どのような展開になるのだろうかという作品。

 他にも、本編で死んだはずのキャラが生き残っていたらとか、敵がもしも良い奴だったらというものなど、ifをモチーフにした二次創作関連は逸らしと言える。


 また、厳しい修行を経て頂点に上り詰めなくてはいけない物語に対し、チートを使って一気に上り詰めるというのも、王道壊し作品も逸らしの一つ。

 今もっとも若者たちに需要がある作品は、『王道壊し』だと断定しても良い。

 常識を覆す爽快感が、若者のハートをガッチリ掴んで離さないでいる。


 テレビやゲームでは見られないような別ルートの物語を消費者たちは求める傾向があり、王道ルートは、そもそもテレビやゲームがあるから良いという役割分担が、見えないところで成立しているのではということだ。


 ウェブ小説は一個人で制作しているからこそ、物語の裁量はいくらでも都合をつけることができる。

 多くの作品があれば、いくつかはクリーンヒットするだろう。


 ……

 ……


 王道壊し作品の最大の特徴は、大きく光を放つが、すぐに消えてしまう花火であるということだ。


 ケツからビームを出して世界を救うと言えば、若者世代には聞こえは良いので、とりあえず見る人はいるだろうが、それを5年とか10年愛される作品に出来るかと聞かれれば、難しいのではと思う。

 訴求しやすい一発ネタの作品というのは、最初の内は面白いだろうが、次第にネタが尽きて王道ルートへと戻ってしまう傾向がある。


 マンガとかでもよくあることだが、4巻とか5巻付近の作品を見ると、タイトルに書かれているキャッチフレーズはどこに消えたのだろうかと言わんばかりに、王道ルートの作品へと収縮している。


 商業作品を見てもらえれば分かるとおり、ケツからビームを出すような一発ネタの作品が長く愛されているものなのないだろう。

 その手の要素で、アニメ化した作品もいくつかあるが、それが人気を継続し、2期に続いたモノはあるだろうか?


 あったとしても、特例中の特例作品だけで、多く存在はしていない。

 つまり、コンテンツとして大成功させる手法とは、現時点では言えないことになる。


 ……

 ……


 ライトノベルでも見てみようか。

 一発ネタで書籍化した作品が、2巻を超えて出される確率というのを知っているだろうか。


 ライトノベルは膨大な数が出ているので、明確な数字までは調べないが、あまり高いとは言えない数字だろう。


 理由は明確。

 1巻のインパクトの良さを売りにしているのであって、作品自体のクオリティについては消費者は求めていないからだ。

 作者は真面目に書いているのだろうが、残念ながら、一発ネタの作品を通じて、大きく市場を広げることは相当に難しい。

 インパクトだけで本を売っているに過ぎない。


 出版社もそれを理解して、本を出している。

 単発打ち切りでも、ある程度の会社の売上になれば良い。

 運良く本が大きく売れようものなら、改めて販売計画を考えていこうというスタイルだからだ。

 

 冷たい考えだなと考えている人。


 甘い。

 本は売れなきゃ意味が無い。

 程々に売れそうな物に手を出し、伸びたら本腰入れていくのは、企業としては当たり前のことだ。

 

 商業視点から言えば、一発ネタの作品なんて、そんなものだ。

 それなりに売るための一商品として取り扱っているに過ぎない。


 ……

 ……


 色々書いているうちに話がそれてしまったが、今回のまとめといきましょうか。


【まとめ】

 ●ウェブ小説では、王道作品は基本的にノーセンキューだが、稀に人気作品なら受け入れられる傾向がある。


 ●若年層のニーズとしては、ケツからビームが出るような、王道壊しに人気が傾いている。


 ●『おふざけ作品』で人気を経て、書籍化等に発展しても、消費者は物語のクオリティというよりは、ただインパクトにつられて本を買っているので、基本は続編を出しても売れにくい。


 ●じゃあ、続編を出した際にウケが良い王道作品を出せば良いのかと言われれば、いやいや王道作品は、そもそも最初の部分で人気が出にくいので本を出すまでの流れに至らない。


 結果として、単発で終わる短い花火のような作品を乱立させることしか出来ず、出版社は、その中から運良く大きな花火が上がることを、指をくわえて待つことしか出来ない状況でいる。

 一言で言うなら、自転車操業とでも言うべきか。


 そもそも、ウェブ小説市場的には、書籍化した『おふざけ作品』が売れることは、なんともむず痒い心境なのではと予測される。

 本当に面白い作品こそ、売り出したいというのは、出版社としても確実に持っている目標だろうから、そのギャップは少なからずあるだろう。

 まあ、その心境は編集者ごとに大きく異なるだろうから、一概には言えないが。


 ……

 ……


 ちな、これらは全て予測なので、いちいち真に受けないように。

 では、今回はこのへんで。

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