014_消費者は付加価値のある作品に初めてお金を出す
小説が面白い作品であるというのは当たり前。
小説が無料で見ることが出来るのも当たり前。
作者は可愛い女の子のイラストを上手に描けるのも当たり前。
もちろん、その絵を無料で見られるのも当たり前。
今更言うことでもないが、2021年の現在、小説は消費者の中ではお金を払うものではないという傾向になっている。
小説家になろうが社会的メジャーになってからなので、ここ10年以内の変化といっていい傾向だろう。
SNSや小説投稿サイト、イラスト投稿サイトがいずれも無料で使用・閲覧できる時代になった現代、コンテンツにお金を払おうという意識は確実に薄れ始めている。
……いや、薄れ始めているというよりは、もはや無いに等しいのではと感じている。
消費者は、いかに自身が楽しいものを無料でたくさん楽しむことが出来るかということに思考がシフトされていて、まずお金を準備して〜というステップを踏む方法を忘れているというのが10代の若者の傾向だと思われる。
まあ、お金を稼ぐ手段が限られている世代なので、当たり前と言ったら当たり前の思考。
数年前に騒動となった、漫画が無料で読めるナンチャラ村に若者が群がる理由はよく分かる。
あの手のサイトは、閲覧者側も犯罪扱いしなければ、消費者の考え方を是正することは確実に不可能だろう。
20代ともなると、仕事を初めて給料をもらい、好きなものを手に入れられれるようになってくるが、それでも極力お金を払いたくないという点では、基本的思考は変わりないと思う。
好きなものにはお金を出すが、ちょっと興味があるコンテンツはネットサーフィンを駆使してでも無料で閲覧したいと躍起になる。
この論文を読んでいる人は、心当たりはありますか?
30代以降は仕事を通じてビジネス観点を理解するようになってくる人も多いため、コンテンツに対してお金を支払おうという考えが確立してくるようになるので、一顧客としての質は格段に上がる。
ただし、その時点でアニメやゲーム、ライトノベルといった若者向けコンテンツに目を向け続けている確率は、確実に減少している。
結果、小説(ライトノベル)のターゲットである10代、20代の顧客は無料でコンテンツを探そうとするために、有料コンテンツを退けてから作品を探そうとする考えに至るのだ。
なので、本を出版して、はい発売しましたよ!!というだけでは売れないという結果になる。
……
……
消費者は別段、面白いコンテンツを上から順番に探して見ているというわけではない。
中には微妙な作品もあれば、二番煎じ三番煎じというべき低価値な作品も人気コンテンツに紛れ込んでいたりする。
まあ、作品のクオリティがどうだろうと、売れてしまえば偉いと言えば偉い。
いくら作者が面白い作品を作り出していこうが、最終的に売れる作品を作るほうが出版業界的には偉いのだ。
レベルで言うなら『神』と『道端のゴミ』というくらいの差があると言っても良いはずだ。
少々過激だが、事実なのだからしょうがない。リアルな話だ。
じゃあ、消費者はどのような基準を持ってコンテンツを選定していくのか。
一番の検索条件としては『付加価値』が絡んでいるのではないかと思う。
面白い、面白くない以前に、この作品に価値があるのかという基準のことだ。
例で言うなら、SNSでバズっている作者が書いた作品だったり、まとめサイトで何かしらの記事として取り上げられ人気が出たもの、はたまた炎上商法等による偶発的発展から、マーケティング会社によるお金が絡んだ徹底的宣伝効果など。
つまり、社会的認知度が高い作品のことだ。
消費者は、そのような認知度が高い作品からマグネットで吸い寄せられたかのごとく順にコンテンツを消費して、はたまたお金を払っていこうとシフトする。
逆に、認知度が低ければ、たとえ全く中身が同じ内容でも、誰も振り向こうともせずに、結果全く売れずに絶版になる。
社会的認知度が高い作品は、自身にとっても広告で身近さを感じるし、他の人も同じ作品を見ることによる価値観の共有、人気コンテンツを読んでいるという作品の価値自体の安心感がある。
つまり、作品自体の爆死率が低いと考え、安心して消費者は手を出せることになる。
……
……
さて、ここまでで売れる作品になるためには、面白い作品を作るというよりは、まず付加価値を付けるべきだと書いてきたが、じゃあ、その付加価値を付けるためにはどうすれば良いのかという点について最後に書いていきたい。
結論から先に書いてしまうと、付加価値を付けられるのは『運』だと思っている。
ここ数年で売れた作品の中には、運で売れた作品が入り混じっているのが分かる。
『がんばるぞい』でSNSでバズったり、
『すごーい』でSNSでバズったり、
社会風刺をラフ画で描いて商業漫画までこぎつけたり、
まとめサイトで取り上げられたり。
これらは計画的な宣伝というものではなく、本当に一消費者の偶然のSNSでのツイートが結果的に強烈な起爆剤となって拡大していったのだ。
作者からしたら、人生の運を全て使い果たすレベルと言えよう。
結果、作品の中身で評価というよりは、SNSで人気という付加価値がつくことによって、作品に対して消費者がお金を払うようになっていった。
面白いというのは二の次で、まずは人気の作品を買おうという流れだ。
仮に、マーケティング会社が無理やりSNSでバズらせようとしても、消費者が付いてこようとしなければ、火が付かずに鎮火してしまうのが関の山。
むしろ、企業が介入してバズらせようとしているとわかった瞬間、悪い方向に炎上し、コンテンツ自体を殺してしまうというリスクがある。
バズりに企業が立ち入ることを、消費者は過剰なまでに嫌っている。
SNSのバズりというのは、マーケティング会社でも作り出すことが難しい特殊な宣伝方法へと変化したのだ。
諸々書いていったが、つまり小説というものをいくら面白いものを書いたとしても、トドメの『付加価値』というものを付けられなければ、いくら努力したとしても、永遠に成就することはない。
断言できる。『絶対』に成就しない。
……
……
小説を上手にかけるのは当たり前。
絵を上手にかけるのも当たり前。
今の時代、バズらせる以前に、クオリティが高くないと、まずバズる候補にすら上がらない。
ハイクオリティ作品の中で、更に一握りの幸運者だけがバズりによって作品を話題に持ち上げてもらえる。
更にその中で、消費者に受けがいい作品として着実に人気が上がっていけば、そこで初めてコンテンツ自体を『無料』で見てもらえる。
更に更に、そのコンテンツが長く続き、書籍化、実写化、アニメ化、グッズ化と発展していくことで、消費者は初めて『有料』でコンテンツを楽しもうとしてくれる。
更に更に更に、その作品が大人気となる可能性もほんの一握り。
そこも運、消費者が長く愛してくれることを信じ続けるしかない。
うむ、小説が人気になって、お金をもらえるようになるまでというのは、今の時代、なんとも長い道のりであり、難易度が高いものだと言える。
出版業界も苦難するし、難航しているわけだ。
終わり
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