011_新ジャンル開拓は高難易度だが、成功は爆発的

 異世界小説やガチャ小説が蔓延まんえんしている中で、新たなジャンルを開拓するというのは、かなり苦労を要するものである。

 人が元々興味がなかった物を一から説明した上で、面白さへと丁寧に誘導する必要があるからだ。


 更にそれを大衆に受け入れてもらわないと大きな評判にはならない。

 小さな成功を収めている人はいつつも、大きな成功となるケースはかなり稀ということになる。


 今となっては当たり前のジャンルになっているが、オンラインゲームとかアウトドアとか部活モノとか格闘モノは、第一先駆者がまだ市場にないジャンルとして参戦し、時間をかけて市場に浸透させていったものだ。


 新しいもの目当てに見る人間もある程度いるだろうが、大抵は新しいものに対して反感意識を持って毛嫌いする人間のほうが多い。

 別に悪い意味ではなくて、新しいジャンルを吸収することには非常に大きな労力とエネルギーが必要になってくるため、その力が足りないという人がいるというのが理由だ。


 料理を食べて腹8〜9分目でお腹いっぱいなのに、別の料理を食べてみませんかと言われているようなものだ。

 興味本位が強い人でない限りは、なかなか箸を出す人はいないだろう。


 しかし、料理に手を出して、何だこいつは美味いじゃないかという評判が大衆に広がれば話は別だ。


 この料理はうまいらしい――

 どこの会社が作っているんだ?

 ここの会社が作っているらしい

 他の会社はつくっていないらしい

 よし、ここの会社の、この本を買おう!


 ――という流れになり、集中してその作品の売上にブーストが掛かる。


 しかも新開拓事業というのは、他社が全く力を入れていないので、実質独占事業としてジャンルを押し出すことが出来る。

 人た途端に集団で新ジャンルという欲求を求めるようになって、まるで空腹のヒグマのように胃袋が満腹になるまで無我夢中になり続ける。


 人々の無限の欲求を満たし続けることで、その作品とコンテンツという物自体に強い信頼と安心を抱くようになり、数年という期間を経て一つのコンテンツが開拓される。

 他の企業が追っかけて類似コンテンツを出したとしても、第一先駆者という強いブランドは中々崩れるものではない。

 他企業が追っかけて作る二番煎じは、二番煎じなりの成功しかありえない。


 こんな大それた成功は、確実に個人の力でなんとかなるようなものではない。

 出版社のプロモーションは当然のことながら必要だし、SNSによる偶然を賭けてのバズりを期待する必要もある。

 出版以外のグッズ等での囲い込みもする必要があるし、人による動画やイベント等を絡めた継続的なリアルプロモーションも重要になってくる。


 要は、一致団結した多くの人員でコンテンツを盛り上げることで、初めてコンテンツが大成功するための環境が整うということだ。

 一致団結が必要であるということは、個人で作った独特の世界観を無理やり他人に押し付けるような状況では、まず環境が整わないということになる。


 コンテンツの成功は売上という形でしか結果は出ない。

 独特の世界観を作るのは大いに結構。

 だが、それを人に正しくプレゼンテーションする自信はあるだろうか。

 物語の理屈を全て説明した上で、面白さを伝えることは出来るだろうか。


 売れている作品は、ほとんどが面白さの理屈を理解した人間がサービスを提供している。

 今一度、着手している作品の面白さを自ら問いただしても良いかもしれない。

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