最強黒猫は少女を魔女へと育てるそうです。〜黒猫チート〜

七浜ユウキ

エピローグ+出会い。

ここは魔法世界だ。冗談を言ってるつもりは無い。この世界は魔法が当たり前にあり、料理や移動、はたまたトイレを流す水までもが魔法によって管理される世界。


俺、黒井獅子は政治家の父と女医の母の間に生まれた。キラキラネームは気にしないでくれ、俺も気にしているんだ。


俺の親は結構縛ってくるタイプで正直きつかった。毎日勉強は当たり前だし、武道やピアノ、英会話から茶道まで習い事も一通りやらされた。某有名大学に入る為必死で勉強しているが今年で二浪だ。


親から褒めてもらったことは一度もないし、三人揃ってご飯を食べたことももうしばらく無い。


父は二浪している俺を見限って愛人を作り、母は母で段々ヒステリックになってしまい今は母方の実家で療養している。


友人も俺が大学を落ちた途端にほとんどが離れていった。生活費だけは貰っているから俺はこの広い家に1人っきりだ。


この世界に意味を見いだせない俺はおかしいのかな?いやおかしくないよな……あー出来ることなら小さい頃一度だけ買ってもらったあのファンタジー小説のような世界に生まれたかったなど考えるようになった。


そんな俺が3度目の受験日の朝、居眠り運転のトラックと事故ったのは偶然でないように感じる。


俺は死んでしまったのか?なんだろう頭の中に声が響く……。


『簡単なアンケートにご協力お願いします。』

アンケート?俺どうなったんだ?

『あなたはお亡くなりにりました。』

まああの角度からぶつかったらそうだよねー。

『もう一度繰り返します。簡単なアンケートにご協力お願いします。』

OK。なんでも聞いてよ。どうせ死んだんだし、時間はいっぱいあるからね。

『それでは始めます。あなたはこの世界が好きでしたか?』

いや全然。

『あなたが1番欲しいものは何ですか?』

自由がほしいかな。

『あなたが憧れる世界とは?』

ファンタジーな世界かな。魔法とかあるとグット。

『好きな色は?』

うーん俺は黒が自分に似合うと思うんだよねー苗字も黒井だし。

『好きな食べ物は?』

肉よりは魚が好きかなー。

『好きな動物は?』

ライオンって答えて欲しいかもだけど猫が一番好きかなー。

『将来の夢は?』

親は政治家か医者になって欲しかったみたいだけど俺は先生になりたかった。尊敬される先生に。

『今やりたいことは何ですか?』

のんびり暮らしたい。

『幸せになりたいですか?』

別に特別幸せではなくてもいいけど前よりは幸せになりたいかな。

『前と言いますとかなり最低レベルですがよろしかったですか?』

うん今より良いなら何でも。

『アンケートありがとうございます。次で最後の質問となります。走馬灯はご覧になりますか?』

いやいい。別に特に面白くもない人生だったし、父の顔は一生見たくない。

『最後に何かありましたら申し上げてください。』

んじゃあ。もし今度生まれ直させて頂けるなら今度は人間はやめて欲しい。人間は面倒だし……もうコリゴリ。

『かしこまりました。それでは三途の川コースを通ってあちらの白線の上を歩いていってください。』

三途の川ってコースだったのかよ。ていうかなんか大きな病院の案内みたいだな。

『なにぶん人員不足で……それでは時間ですので失礼致します。あなたに光が指すことを祈っております。』

そりゃどうも。


それからの記憶は曖昧だがびしょ濡れで川を渡ってたと思ったらいつの間にか眩しいところに来た。


どうやら俺は生まれ変わったらしい。てか眩しい……映画館から出てきたみたいだ……。これは寝そべっているのかあまり体を動かすことが出来ない。


薄目をやっと開けることが出来た。隣には黒い毛をビショビショに濡らした何かがいる。目も慣れてきてその姿をはっきり見たがそこにいたのは産まれたばかりの子猫が数匹。


待てよ。そういうことは俺も猫か?待て待て待て待てよく思い出してみよう……。たしか俺は猫が好きで、黒が好きで、魚が好きで、自由になりたくて……人間になりたくない……ねこーーーーー!


そうかーその条件だとそうなるのかー……まあ前よりはいいか……。


はあ何はともあれお腹すいたな……ミルクくれないのかな?あれ?母猫さんどちらに行かれるんですか?おーい。子供まだいますよー。おーい。


…………置き去り!まさかの置き去り……!兄貴だか弟だか知らないけどこいつらも置き去りなの?!おーい!帰ってきてくれー!


母猫は帰ってこない。


ちょっと酷すぎませんかね……折角新しい世界に来てリスタートなのに……普通強くてニューゲームとかじゃないんですかね?!もう絶望エンドが見えるんですが!


あれから2日はたっただろうか……母猫は帰ってこない。横でニャーニャーうるさかった兄弟達の声ももう聞こえない。そういう俺ももう限界に近い……。


あーあ異世界に転生してすぐ死んじまうのか……次はどんな世界だろう……もう不幸すぎるとかの話じゃねぇぞ……。


「あらあらこれは大変ねー。急いで連れて帰らないと……」


うお。なんだ!?体が浮いぞ……誰かに持ち上げられてんのか?


「あんた大変だったわね。もう大丈夫だからね。」


なっなんだ……なんか温かいなー……やべ意識が……。


黒猫となった俺レオの人生?猫生はそれから幸せだった。俺を拾ってくれたのは知識の魔女と呼ばれる大魔法使いの魔女で年齢は70歳を超えてるらしいが見た目は20歳から30歳くらいだ。その魔女はたくさんの本に囲まれたオンボロ屋敷に住んでて、俺に色々教えてくれた。この世界のことや魔法のことなど色々だ。


元人間である程度の言葉は知っていたこともあり、身振り手振りで表現してたら言語魔法、翻訳魔法、発声魔法を俺の首輪に埋め込んでくれた。


俺は異世界から来たことや前世の記憶があること、違う世界のことを話してやったら魔女の野郎大層喜んで聞いてたよ。そんな魔女との暮らしが20年くらいたった頃俺にも遂に寿命が来たみたいだ。前の世界には未練なんて無かったがこの世界にはかなり未練を感じてる。


高位の魔女はかなりの長寿らしく200年位は生きられるらしい。魔力回路の活性化とかなんとか言ってたけどよく分からん。


神様なのか天使様なのかは分からないけどこの世界に生んでくれて本当にありがとう。出来れば魔女以外の人間にも会ってみたかったが俺は満足だ。心残りと言えば先生になりたかったったな……俺も結構色々教えてもらったから魔女くらいなら育てれる自信があるのにな……まあしょうがないか。


そろそろお別れみたいだな。今度も生まれ変わるなら猫がいいな……そんなに泣くなよ。お前はこれからも頑張って生きたくれよ。んじゃな。


黒猫は猫生を全うし、安らかに眠った。


……と思われた。あれ俺まだ生きてる……ていうか体もすごく軽いし……若返った気さえする。何でだ?


「良かった。成功したみたいね……」


はあ?何でお前が倒れてんだよ!どうしたんだよ!


「あなたにはもっともっとこの世界を見てほしい。」


なんだよそれ!んなんだこの本。


【相続魔法】

他者に自分の全てを相続することが出来る。


はあ?どういう事だよこれわよ!


「あなたに私の全ての魔法知識、魔力、そして寿命をあげたわ。あなたはこれから世界を回って色々なことを見てきてほしいの楽しいこと。美しいこともいっぱいあるわ。その反面汚いこと、苦しいこと、目を背けたくなることも沢山ある。いつか話したわね私はある大罪を犯してここに追放されたって……だから私は一生ここから出れないんだって……」


だからって俺なんかに託すことないだろ!お前ならいつかその呪いを解いてまた旅立てるだろ!


「私はあなたを失うくらいならあなたに生きてほしいのよ……幸い私の寿命はあと100年近くあるわ。それであなたの夢を叶えてね。そうね先生って言うのになりたいならば魔女を育ててみるのはどうかしらきっとやりがいがあるわよ。私以上の魔女を育てられるのか賭けをしましょうよ。もちろん私は育てられるにかけるわ。だってあなたを信じてるもの……もう時間が無いみたいね……クロちゃん……元気でね……またいつか輪廻のその先で会いましょ……」


おい!おい!何勝手に決めてんだよ!何勝手に死んでんだよ……俺だってあんたに死んで欲しくなかったよ……なあ……なあ……なんとか言えよメリー!


知識の魔女メリーは禁断の大陸に眠った。彼女は愛する人を生き返らすために大陸を1つ枯らしてしまった大罪人であった。しかし彼女の努力でその大陸の殆どは元の緑ある土地へと姿を変えた。しかしその大陸は禁断の大陸とされ、立ち入りを禁止されていた。その大陸が開放されるのはそれから500年後のことである。


1匹残された黒猫は禁断の大陸から出て、様々な大陸を旅した。その途中で4人の魔女を育て上げた。一人目は生まれつき無限に近い魔力を持つ少女。二人目は新しい魔法を創り出す才覚に長けた少女。三人目は魔力を無効化する特異体質を持つ少女。四人目は不死の呪いに蝕まれた少女。


黒猫が育て上げた4人の魔女達は揃いも揃って、相続魔法により、黒猫に全てを託して人生を全うした。


五人の最高位魔女の全てを相続した黒猫は膨大な知識無限の魔力、新魔の才覚、魔法の無力化、不死の肉体を合わせ持つ怪物とも呼べる存在へとなっていた。


自分の存在を恐れた黒猫は禁断の大陸の奥地で1人眠っていた。


それはこの世界に来た時からもう1000年以上は経過していた。


あーあ。退屈だ……もう何年も人間に会ってないな……でもまあ俺強すぎるし……俺はここにいた方がいいに決まってるし、魔女もたくさん育てたし、もう充分やったよなー。


「いやーーーーーーー!!」


おっなんだ?こんな所に人間いんのか……てか今のは悲鳴か?ちょっと見てくるか……。


黒猫が重い腰を起こし、ノコノコ声のした場所まで言って見るとそこには1人の少女と3人の男が高位モンスターに襲われていた。


少女には手錠と鎖、男達はナイフやサーベルで武装している。


「ちっ仕方ねぇー!こいつを囮にして逃げるぞ!」


おいおい。あの少女は奴隷か?というかそうするとあいつらは奴隷商人か……ちっ胸くそ悪いことしやがる。


男達は少女をモンスターの前に投げ捨てると馬車に乗り込み逃げていってしまった。


「あ……あー誰か……助けてください……お願い……」


モンスターが少女に襲いかかった。


「きゃーーーーーー!」


仕方ねぇな。【切断魔法】ゼロスラッシュ。


ブシューーーー。モンスターの首から上が綺麗に切断され、血が吹き出した。


少女はモンスターの血を全身で浴び気絶した。


世界最強黒猫レオと後に世界を変える魔女見習いのライムの出会いは殺伐としたこの瞬間であった。

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最強黒猫は少女を魔女へと育てるそうです。〜黒猫チート〜 七浜ユウキ @yuukinanahama

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