GA文庫大賞を駆け抜ける
GA文庫大賞について語ろう。
僕は2022年11月、GA文庫大賞(後期)に「鈍足高耐久は使えないと言われた太っちょ冒険者、機動力を手に入れて人生逆転する」という異世界ファンタジーを応募していた。
これは22年2月にpixivで開催された漫画原作小説コンテストを狙って書いたものだ。お題が四つあり、すべてなろう系ファンタジーを意識したものになっていた。そのうちの一つが「追放」で、この時期はなろうの流行を研究していたこともあったので書いてみることにした。他は「転生」「内政チート」「やりなおし」。
鈍足高耐久というのは主にポケモンで(一部の人が)使っている言葉だ。防御や特防が高く、素早さが低いポケモンのことをこう呼ぶ(人もいる)。
主人公は防御に特化した能力を持っていて仲間を守れる――はずなのだが、足が遅いのでいつも間に合わない。そんなことを繰り返していたらついにパーティーを追放されてしまい……という出だし。
そこから逆転物語が始まっていくのだが、タイトルをかつてなくネタに寄せている分、内容は王道をしっかり攻めようと意識した。
こうして書き上げた作品は、原作小説コンテストであっけなく一次落ちを食らった。そのまま放置して春、夏、秋と過ごした。
で、11月。
ここ2年、連続でGA文庫大賞に応募していたこともあり、今年も何か出そうと思った。そこでふとこの作品のことを思い出した。
あのコンテストはちゃんとお題に沿って書けていたのだろうか? なんのハードルも設定されていない通常の公募ではどういう結果になるだろう?
そんな気持ちになり、「鈍足高耐久」を送ることに決めた。原稿を読み返して直しを入れ、枚数チェックをしてから余裕を持って投稿。
そのまま年越しをして、1月をダラダラ過ごし、2月に入った。ここで僕は、ファンタジア大賞を目指してラノベミステリ(一つ前のページ参照)を書いていた。
GA文庫大賞後期の一次通過者発表は2月15日。時間も18時と決まっている。僕は当日、発表まで新しい原稿を書き続けていた。そして時間になると新人賞のページをひらいた。
通過者は五十音順。僕はア行だが、仲間が多くて最初の画面には名前がなかった。ヒヤッとしたものの、少しスクロールしたら無事に三行食っている長いタイトルを見つけることができた。
と、ここまでは高確率で行けるのだ。問題は二次以降。
ラノベミステリを完成させた僕は、応募先をファンタジア大賞からMF文庫Jライトノベル新人賞に切り替えていた。3月には創元ミステリ短編賞と文藝賞の原稿を同時進行で書く予定を立てている。
そんな月末、28日。
二次通過者が発表された。
ア行の仲間が一気に減って、ひらいた瞬間に名前とタイトルを発見した。
二次通過は久しぶりだったので、思わず両手を思いっきり叩いていた。
3月もワクワクしていていいんだ! それが嬉しかった。
前年の選考をさかのぼってみると、どうやら三次通過者と受賞者は3月末に同時に発表されるらしい。つまり3月前半は気楽に過ごしてよさそうだった。
僕はミステリと純文学の原稿を並行して進めながら結果を待った。
そしたら不意に来たのだ。
3月15日に三次通過者を発表しますという公式からの告知が。
僕は21年のこの時期にも二次を通過していたが、ここで落ちた。だから大きな山場である。
当日はそわそわして過ごした。早めに風呂に入り、上がったのが17時。発表まで中途半端に時間がある。僕は応募した原稿を読み返すことにした。
「面白いじゃん……」
応募してから時間が経って、冷静な目で読んだつもりだ。それでも面白いと感じた。だから、仮にここで落ちてもこの作品には自信を持っていたいな、と思った。
そうしているうちに18時が過ぎていた。
発表ページをひらくと――名前があった。
最終候補。
ミステリ新人賞では経験があったが、ラノベでは初めてだ。
すぐ、母と弟に報告した。二人ともすごく喜んでくれた。
こうしてさらに月末まで待つ権利を得ることができた。
しかし万一のことは考える癖がついている。すでに短編二本と長編一本が書き上がっており、カバーできる態勢は整っていた。
発表まではそちらの推敲を繰り返して待った。そのあいだにWBCで日本代表が優勝。野球経験者として最高に盛り上がった大会になった。栗山監督が途中から4番を吉田正尚にした判断は本当に素晴らしく、それがなかったらメキシコ戦のスリーランもなかったわけで(長文につき以下自重)
さておき、3月最後の週。
GA文庫大賞の受賞連絡は、噂によると結果発表の直前らしい。発表日の31日は金曜日だ。週明けすぐ電話が来る可能性は低そうだし、ありえそうなのは火曜日から木曜日まで。
そう考えて、毎日落ち着かない気持ちで待った。
しかし……とうとう最後まで電話は鳴らなかった。
31日、受賞者が発表されて落選を突きつけられた。自分自身は覚悟していたので、家族をがっかりさせてしまったことへの申し訳なさの方が強かった。
とはいえ、877作品のうち最後の11本まで残れたのだ。これは間違いなくいい経験になった。
僕は待機させておいた三本の原稿を一気に応募して、次の結果待ち態勢を作った。
こうして5回目の最終選考もあっけなく終戦。
でもここまで勝ち上がれたのだから、やっぱり1回目のコンテストではちゃんとお題に沿って書けていなかったのかもしれない。
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