ミステリ以外も頑張るんだよ!
8月上旬。
僕は純文学系雑誌『すばる』を買うため書店へ走った。すばる文学賞の一次通過者が発表されているのだ。
純文学の新人賞では最終選考に残ると選考会前の直しを入れるらしいので、この時点で連絡がない僕は予選落ちが確定している。
それでも一次を通っているかは気になるでしょう? さて結果は……と雑誌を立ち読みすると――あった! 一次通過者リストに自作のタイトルが確かに掲載されていた。
もうこれだけで報われた感じがした。いや受賞しなきゃ一次落ちも最終落ちも同じじゃんと言われそうだが、そんなことはない。純文学は「型」というものがまるで掴めないので、自分の掘り進んでいる方向が正しいのかすらわからない。けれど一次だけでも通っていれば、最低限方向性は認めてもらえたことになる。なりませんか?
そういうわけで僕は自信を得ることができた。残念ながら二次では落ちていたが、心理描写を一切書かないというスタンスでもう何作か書いてみようと決めた。
続いてお盆過ぎ。僕の職場はこの時期が一番忙しいのだが、珍しく小刻みに休みをもらえたので家でダラダラしていた。
そんな時、前の年に描いた漫画のネーム原作を見つけた。21年のジャンプ+で開催された原作賞に二本出したがどちらも落選。その時、実は連載前提の話を並行して描いていた。
これは2020年に脚本、ネーム、ラノベと三種類の方法で書いた「花修羅丸伝」という戦国伝奇ものの一部を改変した作品だった。
戦う女の子が描きたいと思って女性主人公にしたが、あとから仲間になる男の子を主人公に置いた方が映えるエピソードをいくつか思いついていた。なので設定を変えて一から描き直し、でもどこにも送らなかったという経過をたどっている。
ネーム原作賞を調べてみると、ガンガン系以外の雑誌は読み切りのネームを求めているところが多い……と思ったが、ジャンプ
これ、いけるんじゃないか?
そう思って何気なく2話目を描き始めたら急に気分が乗って、数日で5話分、計250ページも描いてしまった。
4、5話を外すだけで賞に参加できるがどうするか。考えた末、SQ編集部に先に見てもらおうと決めた。賞のページにも「迷ったら編集部に相談を!」と書いてあったので、電話をかけてみた。
持ち込みであればページ制限はないので全部見てくれるという。出来がよければ編集さんが預かって賞レースにかけてくれるそうだ。
1枚ずつコピーして郵送した。これが8月下旬の話。返事は翌週、9月頭にきた。
曰く、
王道のストーリーで読みやすい。
ヒロイン二人がとてもいい。
だが主人公のためのドラマが作れていない。自分で作画するならこれでも勝負できそうだが、原作として考えるともう少しひねりがほしい。
――とのことだった。
今まで何度かネームを見てもらってきたが、実は褒められたことが一度もない。褒められたポイントがあったというのはそれだけで前進である(前向き)。
僕はコマ割りなど訊きたいことを質問し、賞には描き直して送ることを伝えた。
そこから3週間かけてまた最初から描いた。主人公のための物語であることを常に頭に入れて物語を構築した。
あとはこざかしい話だが、入選だとジャンプSQでの連載権がついてくるので、そうなった時の体裁も整えておいた。例えば、1話は左ページから始まって2、3ページは見開き絵とタイトルがドーンとか、4ページ目は白紙であるとか。
そんなこんなで全3話、191ページが完成した。
SQの連載作品をしっかりと手元に置いて、この作品が本になる! というイメージで作り上げた。全力は尽くせたと思う。
この原稿を10月下旬に送り出した。20年から毎年どこかでネームを描きたくなる時期が来るな、と感じた。いろんな表現方法を模索していきたい。
最後に書いておくと、現時点(2023/2/7)のジャンプSQ連載陣の中で個人的に一番推しているのは六内円栄先生の『Thisコミュニケーション』です。デルウハさん最低すぎてホント好き。
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