見えない相手に言い訳する

 ラブコメを書き始めた4月の頭。


 カッパ・ツーの結果は6月に発表と判明した。

 それまでにミステリーズ!新人賞にも応募した。


 4月には電撃小説大賞があるが、出せそうな原稿がない。

 新人賞の情報を集めて回り、星海社FICTIONS新人賞に何か原稿を出そうと思った。8日締め切りである。


 新作を書く時間はないが、数年前に書いた「魂市たまいち」を何度も改稿していたのでこれを応募してみよう、と決めた。


 4月中旬時点で、3作品が結果待ち状態となった。


 ここからがきつかった。


 まず5月末。

 ミステリーズ!新人賞で一次落ちを叩きつけられた。


 そして6月下旬。

 カッパ・ツーの最終候補者が発表された。僕の名前はなかった。前年の11月から結果を待っていて、しかも主催の出版社の編集さんに励ましてもらったことで書けた原稿が散った。


 それから数日して、星海社FICTIONS新人賞の結果も発表された。

 編集部座談会では取り上げてもらえず、一行コメントでさくっと片づけられていた。


 痛すぎる三連撃であった。

 以前ならこれを受けて「仕方ない、次を書こう」となったのだが、そういう気持ちがまったく起きなかった。


 祖母の介護は変わらずに続いていた。

 そしてこの年から職場のベテランが一人抜けたのだが、新しく入ってきた人がなかなか仕事を覚えてくれなかった。

 話を聞いているのか怪しく、同じミスを毎日する。しかも相手は60代。40近く年の離れた相手に仕事を教えるというのは苦痛だった。よくわからない申し訳なさで苦しくなるのだ。


 そんなこともあってただでさえボロボロのメンタルはさらに追い詰められていた。


 ネタだけなら山ほどある。構築済みのプロットだって複数ある。

 なのに本文が書けない。

 根本的に気力が湧かないのではどうしようもない。


 唯一快調なのは、新人賞に応募する気のないネット小説だけだった。


 さすがにこれより落ちることはあるまい、というところからまだ何か起きるような状態だった。


 それでも、もっと苦しい環境で書いている人もいるのだろう。それは理解するが、だからお前はまだ耐えられるはずだ、と言われたらさすがに反論する。というか、こういう存在してもいない敵と論戦している時点でメンタルが怪しすぎた。


 で、こんな状態のまま上半期が過ぎていったのだった。

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