純文学に挑戦!

 10月になった。


 僕は純文学を書いてみようかな、と唐突に思った。


 安部公房ショック以来、主に新潮文庫の文豪の作品を中心に読みあさり、すっかり虜になっていたのだ。


 10月は、ちょうど講談社の群像新人文学賞がある。下限枚数も設定されていないし、ちょうどいい。


 温めていたアイディアがあった。


狗頭くず」というタイトルの作品だった。


 飼い犬の頭が、ある日突然、ラフレシアのような巨大な花になってしまう話だ。


「デンドロカカリヤ」のような語り口を意識して書き始めた。ストーリーはひたすらシュールに展開していく。すらすらと進めることができたが、書き終わってみたら予想したほど枚数は伸びず、50枚ほどだった。


 それでも、この手のジャンルを意識して、初めて書き上げた作品だ。無意味な挑戦ではなかったはずだ。


 僕は念入りに文章の細部に気を配って、調整を行った。


 群像新人賞については、花村萬月さんが『裂』という作品で内情を語っており、作品を書く上でも参考になった。


 あまりに苦もなく書けたので、拍子抜けしたくらいだった。


 締め切りギリギリまで推敲して、大きなアクシデントにも見舞われず応募することができた。これが2013年最後の応募になった。



 ちなみに、群像新人賞はこの次の回から70枚以上と条件が加えられた。当時の僕は、自分があまりにくだらないものを送ってしまったせいではないだろうかと被害妄想に取り憑かれたものだ。

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