「しんでもいいわ」


「あっ、しぬ、しんじゃう」

譫言のように熱く濡れたかたまりが口から吐き出される

視界も濡れて不明瞭だ

覆いかぶさる熱源の動きに合わせて

不規則に甘い母音がこぼれ落ち

同時にパタパタと塩辛い雨が降る


雨の正体を手繰り寄せようとふと視線をあげると

覆いかぶさる黒髪の束になった先から

雨だれのようにぽつりぽつりと滴らせていた

その雫がまるで水晶のように美しくて

掬い取ってみたくてそっと手を伸ばすと

その指先を捕まえられて

戯れるように節くれだった長い指が絡まる


「うん、おれのために、しんでよ」

吐息交じりの自殺教唆

甘く甘くおれの喉に絡んでやわやわと締めていく

それでいて

絡めた指で持ち上げた手のひらに

恭しく落ちる唇は

まるで許しを乞うているような仕草だから

始末に負えない

そんな甘い体温で懇願されたら

なんだって許してしまうしかなくなるじゃないか


不明瞭な視界

不鮮明な声色

不規則に溢れる荒い息の奥で

おれは密やかに微笑った



「おれ、おまえのためなら、」


しんでもいいよ

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BL詩集 @NATSUKI0414

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