二十. 壊劫の波間②



 近藤に長期の不在を詫びて、沖田の隣でさっそく仕事に取り掛かった冬乃は。

 はたして早くも、仕事中らしからぬ表情へと気を抜けば陥る己の顔面筋肉に、必死で抗っていた。

 

 真隣に一緒に仕事をしている沖田。

 唯それだけで、嬉しくて大変なのに、

 

 何度も冬乃は彼の真剣な横顔を盗み見てしまっては、

 とどめの如く。

 (頬肉が・・!)

 崩壊してゆくのだから。


 (総司さん・・なんでそんなカッコイイの・・・?!)

 

 反則級なのだ、

 好きな男の真剣な顔というものは。

 

 さすがにここまで仕事にならないとは思っていなかった冬乃は、安易に一緒に仕事させてと願い出た己の浅はかさをすでに反省する心境になり始めていて。

 

 (あれ。てか、この次なにするんだったっけ)

 

 しょうもない事態で。

 

 

 「・・・冬乃。そこ、書き出す位置まちがえてる」

 「次取り掛かってほしいのはそれじゃなくて、こっち」

 「書き損じが多いな、悪いがもう一度初めからまとめて」

 

 まるで上司に面倒かけてばかりの使えない子状態に、

 

 今までこんなに酷い仕事ぶりだったのかと、絶対に沖田は驚き呆れているに違いないと冬乃はもはや涙目になり。

 

 「どうしたかな、」

 あまりに指摘が飛び行くさまに、ついに近藤が振り返った。

 

 「久しぶりでいろいろ忘れてしまってるのだろう。冬乃さんは、普段そんなに間違えたりしないんだ」

 なんとも有難いフォローを入れてくれた近藤に、冬乃は内心で感謝の土下座をしつつ、

 

 久しぶりといっても、ここでは二か月なれど冬乃にとっては半日も空いていない事に更なる罪悪感をおぼえる。

 

 「・・そうですか」

 

 沖田が小さく息を吐いた。

 

 「先生、少し席を外させてください」

 (え)

 「ん?ああ、構わんよ」

 沖田が立ち上がった。

 驚いて見上げる冬乃を彼の困ったような顔が見下ろし。

 「ついてきなさい」

 

 冬乃は蒼くなった。

 

 

 

 

 

 「何かまた悩み事?」

 

 沖田の部屋へと連れてこられ、冬乃は部屋の中央に縮こまって座りながら。お説教が来るかと項垂れていたのにその心配そうな第一声を受けて、どきりと顔を上げた。

 

 「さっき日付を伝えた時、また何か思い悩んだ様子だったから」

 

 (あ・・)

 沖田はあのとき冬乃の心に奔った苦悶を感じ取っていたのだ。

 

 「この先を知っている事で貴女がどれ程辛い想いをしているか、俺には想像もしてやれない。それでも俺に明かすことで楽になることがある時はそうしてほしい。一人で抱え込んで苦しんでほしくない」

 

 「総司さん・・」

 

 その言葉だけで、救われる想いです

 

 冬乃は、

 「ありがとうございます・・今は、まだ何を言っても大丈夫なのか何はだめなのか、判断ができなくて・・でも、」

 ありがとうございます

 と涙が滲みそうになりながら頭を下げた。

 

 「俺ならいつでも聞くよ、・・覚えといて」

 「はい・・!」

 顔を上げた冬乃を彼の優しいいつもの眼差しが迎える。

 

 「それから仕事のほうは無理して手伝ってくれなくてもいいから、今日はゆっくり休んでて」

 だが次に掛けられたその言葉に、冬乃は目を見開いた。

 

 「いやです、傍にいさせてください・・!」

 

 (あ)

 

 おもわず露骨な本音を叫んでしまい、冬乃は固まる。

 仕事にならない事はもう散々分かったのに、まだ傍に居たいがために続けさせてと頼むなど、今度こそ叱られても仕方がない。

 「ごめんなさ・・」

 

 項垂れた冬乃の視界が。大きな影で遮られた。

 

 同時に深く抱き締められた冬乃は、今や完全に視界を覆った沖田の着物に目を瞬かせる。

 「貴女は、」

 頬に直に響く、大好きな低い声。

 「俺の我慢など簡単に押しやる」

 

 (・・え?)

 

 「・・ただでさえ」

 どこか掠れた、その響きに。

 「二月ぶりだというに、・・拷問もいいところ」

 冬乃は顔を上げて。

 

 見上げた瞳に映ったのは、

 あの、熱をちらつかせた眼。

 (総司・・さん・・?)

 「正直に言うと。思った以上に、冬乃に隣に居られると俺は落ち着いて仕事もしてられぬ事を先ほど自覚した」

 

 だから手伝ってくれなくていいと。

 

 (うそ・・)

 そんな素振りなど全く無かったではないか。

 さすがに冬乃を諦めさせるための口実ではないかと、冬乃は咄嗟に思って首を振っていた。

 

 「信じませんっ、総司さんに限って!・・お願いです、もう一度機会をください、一緒に働かせてください・・!」

 

 冬乃のそんな抵抗への応えは。

 

 

 噛みつくような、口づけだった。

 

 

 「……ッ」

 

 手首と腰を捕らえられ、一瞬で身動きを完全に封じられた冬乃はなすすべなく。

 まして侵入してきた舌に力強く歯列を割られ、冬乃の逃げ惑う舌は絡め吸われ、

 

 冬乃はまたたく間に息も絶えだえになり、やがては頭の中が真っ白になる感に襲われ出した頃、


 気づけば背後へ押し倒されて、背にひんやりと畳を感じ。

 (総司さ・・っ)

 続く、首すじへの強い口づけと。襟内を潜り込む大きな手が冬乃の乳房を攫い。

 「ひゃっ…んっ!」

 武骨な指に頂を弄られながら、落とされてゆく変わらず強い口づけが冬乃の首すじを下って痕を散らしゆくさまに冬乃は、

 急速に立ち昇る快感と同じほど戸惑いにまみれて、

 

 「総司…さん…っ!」

 

 このまま、進んでしまっていいわけがないと。

 「…お……しご…とが……っ…まだ」

 慌てて沖田を止めようと冬乃は、呑まれてゆく自分自身さえ止めようとして、

 

 「だめ…です……!」

 懸命に制止の声をあげていた。

 

 「こんどぅ…さまが待っ……てます…から…っ」

 

 こんなに性急な沖田は、第一初めてで。

 

 

 ぴたりと、

 突然、沖田の動きが止まった。

 

 刹那に、ふーっと盛大な溜息が降ってきて。

 

 (・・え・・・?)

 

 「よかった、・・いま止めてくれてなかったら」

 冬乃の上から身を起こし沖田が、

 「最早、続けてたよ」

 

 未だ激しく熱の残るその眼を向けてくるのへ、冬乃は心臓を跳ねさせる。

 

 「自制など効かなくなりそうな程、俺がいま冬乃を求めてる事を」

 

 そして沖田は自嘲に嗤うように。

 「これで信じたろ」


 「わかったら、今は休んで。俺のために」

 

 冬乃は半身を起こした。

 「・・・俺のためなんて・・ずるいです」

 そんなふうに言われたら、もう冬乃には従うしか選択肢は残らないことを。まるで知り尽くしている沖田に。


 それでも。

 「総司さんが・・仕事中にそんなはずないのに」

 

 冬乃は、抗った。

 これから暫く離れていなくてはならないのだと思えば、

 「今度こそきちんと仕事しますっ、だから・・お願いします・・!」

 やっぱり諦めきれずに。

 

 

 「今のでもまだ信じないの?」

 

 (え)

 押し殺した低い声が冬乃の耳を掠めた。

 

 刹那、

 冬乃の視界は反転し、

 

 再び畳を背に受けたと同時に。

 

 大きな手が、冬乃の口を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だったら教えてあげるよ

 

 その体に。

 

 

 それが、

 冬乃が確かな意識の残るうちに聞いた、最後の言葉で。

 

 冬乃は深く口を塞がれたままに。何度も仰け反って、幾たび顔を背けても、

 

 どんなに激しく揺さぶられても。

 冬乃の喉を抜ける嬌の声を堰き止めるその大きな手が外れることはなく。

 

 ついには呼吸が追いつかずに冬乃はやがて、目の前で光が弾けた最後の瞬間にやっと解放された唇で激しく吐息を乱しながら、

 強烈な眠気に引かれるようにして冬乃を覆うままの光の内へと意識が、まるで螺旋を描いて落下してゆくのをみて。

 

 

 目が覚めた時には、辺りは暗くなっていた。

 

 いつのまに敷かれたのか、冬乃は布団の中にいて。服も着せられていた。

 これでは結果的に“寝かしつけられた” も同然で、つまり沖田の意図した通りに仕事から離れて休んでいる状態であることに、冬乃は次の瞬間には思い至って、

 

 (&%$#*@!!)

 言葉にならない言葉をおもわず心で叫んだ。

 

 仕事をこなせなかった上に駄々をこねた冬乃が悪いのは重々承知している。だけど、してやられたような気分に陥る。

 

 (そ、それにまっ昼間の屯所だったのに・・・っ!!)

 しかもよりによって近藤の仕事を一時抜け出していた間である。

 

 それなりの時間の経過のわけを近藤には一体なんと言ったのか。想像すれば冬乃は眩暈がしてきた。

 

 それにしても一年近くも我慢してくれていたあの沖田と今日の沖田が、とても同じ存在だとは思えない。

 冬乃はいつまでたっても謎なままの沖田に、やるせない溜息をついた。

 否、男という生き物自体をまだ冬乃は全然理解できていないのだろうか。

 

 

 「起きたね」

 

 不意に襖が開き、冬乃は現れた沖田を目に、がばっと身を起こした。

 (あ)

 勢い良すぎて視界に星が散り、冬乃は慌てて片手を後ろに突く。

 

 「大丈夫か」

 とたん心配そうに尋ねてきた沖田に、冬乃は「はい」と小さく答えながら、

 「近藤様には何て・・・」

 怖々と問い返した。

 

 布団の真横まで来た沖田が、その場で袴を捌いて胡坐を掻いた。

 「未来から戻ったばかりで疲れているようだから寝かせた、と、寝つくまで傍に居た」

 

 「・・・」

 悪戯な眼で微笑う沖田に、冬乃はもう何も言えない。口を始終塞がれていたとはいえ、本当に一切聞こえずに済んだのだろうか。怖くて知りたくもないけども。

 

 「よく眠れた?」

 あろうことか、さらに悪戯な眼差しで冬乃を覗き込む沖田に。

 

 そして冬乃は、

 小さな抗議を示すべく。頬を膨らませてみせた。眼を見つめていられないので顔は背けたが。

 

 

 伝わったのか伝わっていないのか、

 不明ながら。

 

 冬乃はなぜか、激しい抱擁で迎えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜番から戻った沖田が、おとなしく自室に留まり、冬乃への夜這いをかけずに今度こそは自制を果たした翌朝。

 

 目の下に派手にクマをこさえた冬乃を井戸場に見つけた。

 

 「・・・どうした。眠れなかったの」

 変な時間に寝てしまったせいで、夜の寝付きが悪かったのだろうか。

 

 沖田の声掛けに、だが冬乃は青白い顔を上げないまま、手拭いを手に持ちながらふるふると首を振った。

 「大丈夫です、なんでもありません」

 と。

 

 「・・・」

 

 女のこんな態度のなんでもないの台詞ほど、なんでもなくて済んだためしが無い。

 冬乃もその例に漏れそうになく、どころか、あからさまに俯いてそれ以上は無言になってしまった彼女に、沖田は心配になっておもわず片手を伸ばし。

 小さな頬に添えて、そっとその顔を持ち上げる。

 「冬乃」

 目を逸らす彼女に、促すべくその名を呼んだ。

 

 なおも沖田に目を合わせてはくれず。

 まさか昨日の、少々むりやり抱いたことに対して、未だ剥れているわけでもなかろう。とは思いつつも、

 後から反省ぎみの沖田としては、気懸りでもあり。

 

 あのとき頬を膨らませてきた冬乃の可愛い抗議に、御免も言いそびれたことを思い出したのは、暫しのち。

 抱き締めてまもなく、帰屯した土方が慌ただしくやってきて、沖田は新たな書簡仕事に副長室まで駆り出され、

 

 そのまま冬乃とは、夕餉の時間も終わりかけの頃に、広間で顔を合わせただけだった。時間の迫る中、あまり言葉も交わせずに食事を掻き込んで沖田は夜番へ向かい、

 そして今に至る。

 

 

 「なんでもないように見えない」

 

 沖田は率直に尋ねることにした。

 

 「昨日の事で怒ってる?」

 

 

 冬乃がとたん驚いたような目になって見上げてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 夜に沖田が部屋に来てくれなかった。

 

 夜更けまで待っていた冬乃は、いつのまにか灯りも点けたままに寝てしまって。

 (ばかみたい・・来ないのがあたりまえなのに)

 

 それなのにいちいち寂しがってがっかりしている己が腹立たしい。

 しかも眠気で欠伸の絶えない冬乃はそんな事態にも呆れながら、顔を洗って早く目を覚まそうと井戸場へ出てきたところで沖田に見つかった。

 

 きっとクマが酷いことだろう。こんな顔を見られたくないと、伏せていたのに、

 しっかり持ち上げられ。

 恥ずかしさに目を合わせることもできずにいたら、思ってもみなかった質問を投げかけられ、驚いて目を合わせてしまった。

 

 そこには心配そうな、いや、申し訳なさげな沖田の表情。

 

 (・・・昨日の事)

 

 受けた質問を脳裏に再生し。すぐに意味が分かった冬乃は、そしてそのまま顔を赤らめた。

 

 「そんなことないです」

 口奔るように返してしまいながら、昨日の映像が脳裏に続けてみるみる想い起されてゆく。

 これ以上熱くなる顔をとてもじゃないが見せていられなくなった冬乃は、慌てて沖田の片手から逃れて顔を背けた。

 

 

 大体。冬乃が沖田にならば何をされたって許してしまう、どころか時に悦んでしまう・・ことくらい、彼なら気づいていないはずがないだろうに。だから昨日だって、沖田の行為に冬乃が怒るわけがないのだ。

 それが少々、むりやりでも。

 

 むしろ冬乃はあの時、てごめにされているような、そんな“いけないこと” を他の誰でもない沖田からされているその状況に、胸を高鳴らせてしまった、

 だなんてことは絶対に口が裂けても言えないが、沖田ならそれすら、お見通しだったはずではないのかと。

 

 

 冬乃はもちろん怒ってもいなければ、もう剥れてさえいなかった。冬乃の今朝の『なんでもなくない』原因は、当然に全く別のところにある。

 

 かといって、

 怒ってない、と冬乃が真っ向から言葉にのせて否定すれば、あのときの冬乃の恥ずかしい心境を真っ向から声高に肯定することになってしまいそうで。

 だったら濁しておきたいと冬乃は切に願う。怒っているとまでは思ってほしくないけども、まだ剥れて拗ねているくらいにはしておきたいものである。

 

 

 「おうい、こんなとこで痴話喧嘩はじめるんじゃないぞー」

 

 井上の間延びした声が突然、冬乃の背後で響いた。

 

 冬乃は跳ねるように顔を上げて。これ幸いと、井上のほうへ顔半分で会釈を送ると沖田に背を向け、部屋へと逃げ戻った。

 

 

 

 

 ぱたぱたと駆けてゆく冬乃の小さな背に、沖田は本格的に溜息をついた。

 

 「なんだ、どうしたんだい珍しい」

 冬乃の雰囲気に井上は半分冗談で声を掛けたのだろうが、冬乃が去ってしまったので、まさか本当に喧嘩しているのかと井上は驚いたように目を瞬かせている。

 

 「いや、そういうんじゃないですよ」

 そういうんじゃないが。

 沖田は今一度溜息をついた。

 

 これは少々、対応の仕様がややこしそうだと。

 

 「ちょっと失礼します」

 沖田も井上に会釈すると、冬乃を追って彼女の部屋へと歩を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 「あ」

 この時間に珍しく。お孝がすでに部屋に来ていた。

 

 「ややわ!どないしたんそのクマはん」

 冬乃の顔を見るなり瞠目するお孝に、

 (クマはん?!)

 お孝のクマの呼び方に冬乃のほうが瞠目しつつも、冬乃は急いで首を振ってみせる。

 「よく眠れなかっただけです・・」

 

 朝からそれなりの気温だ。ほんのり滲むのだろう汗をお孝がそっと拭いながら、

 「眠れへんかっただけ・・ねえ」

 フフと、これまた見透かしたように微笑むので、冬乃はもはや押し黙った。やっぱりそんなに分かりやすいのだろうか。

 

 「仲良うしてはると思てたけど、冬乃はんは言いたいことまだ言えへんこともあるんやねえ」

 

 「・・・」

 やはり、お見通しのようで。

 お孝とは昨夕も二か月ぶりの再会を果たし、もとより以前も時々部屋で顔を合わせて話をしているので、彼女はもちろん沖田が冬乃の想い人どころか晴れて恋人になっている事まで既に知っている、とはいえ。

 

 「逢いとう思うてたのに逢えへんかったような顔、してはるえ」

 

 どこまでお見通しなのだ。

 

 「でも先ほど井戸場で逢いました・・」

 

 冬乃が仕方なさげに手拭いを掲げてみせると、お孝は小首を傾げた。

 「まあ。逢いとうないときには逢うてしまうんやね」

 まったくである。

 

 「せやけど沖田様やったら、そないクマはん気になんてしはらへんやろ」

 慰めてくれるお孝に、

 そうかもしれないけど、と冬乃は弱く微笑んだ。

 もうすでに、冬乃は沖田から逃げ帰ってきてしまった。この後、どう繕おうかと冬乃は内心困っている。

 

 「逢いとう思うてた気持ち、素直に伝えなあかんえ」

 

 「・・え」

 

 仕事着に着替え終えているお孝が、行李を押し入れに仕舞うと今一度冬乃を向いた。

 

 「我慢してても、なあんも良い事あらへんし」

 

 なんでも我慢せえへんことが一周まわって夫婦円満の秘訣

 と、お孝が片目を瞑る。

 

 (秘訣・・)

 

 「ほな、またね」

 冬乃の前を通って、まだ開いたままの障子の隙間から出て行こうとしたお孝は、

 

 「あら沖田様」

 ぴたりと止まった。

 

 (え!?)

 

 「おはようございます、お孝さん」

 沖田の穏やかな声がした。

 いつから居たのだろう。早くも冷や汗をおぼえる冬乃の前、

 「あいかわらず、ええ男はんねえ・・!」

 お孝がとびきり明るい声を出した。

 

 そのいきなりの挨拶返しに沖田が少し驚いたような顔になるのを、冬乃はそっと覗いてみた縁側の先に見とめる。

 「邪魔者は消えまひょ」

 そんな冬乃の視界にそそくさと石段へ降り立つお孝の背が映りこんだ。

 

 台詞通りあっというまに去ってゆくお孝から、冬乃はそしてどきどきと沖田へ視線を戻せば、


 「冬乃」

 優しく愛しそうに呼んでくれる沖田が、冬乃を見上げて。

 

 冬乃は動きが止まったまま茫然と見つめ返すしかない。

 「上がるよ」

 沖田のほうはさっさと縁側へ上がってくる。

 

 「逢いたかった、というのは、・・つまり」

 冬乃に視線を絡めたまま、後ろ手に障子を閉め切った沖田の、

 「昨夜、ってことか」

 問いに。

 

 そして冬乃は観念して、小さく息を吐いた。

 「・・はい」

 

 

 「だったら、我慢するんじゃなかった」

 

 同時に零されたその言葉を、

 (・・我慢?)

 

 冬乃が咀嚼する前に。沖田の力強い腕が冬乃を抱き寄せた。

 

 「・・っ」

 もう逃がさないと。示すかのようで。

 その深い抱擁に冬乃が、躰だけでなく容易く心ごと捕らえられてしまうことを、当然の如く分かっているかのように。

 

 「此処に戻ってすぐ続けざまでは辛いだろうと」

 冬乃を抱き締めたまま耳元で囁く沖田に、冬乃はうっとりと、とうに魂まで囚われたままに顔を上げる。

 

 「それで昨夜は、逢いに来るのを我慢した」


 内に熱を抑え留めるような眼が、そんな冬乃を見下ろした。

 

 「夜番の後で冬乃に逢えば、抱いてしまうから」



 冬乃は小さく吐息を零した。

 

 (そんなの、)

 それを望んでいるのは、むしろ冬乃のほうなのに。


 「私が・・嫌がると、お思いですか・・?」


 素直に伝えなあかんえ

 お孝の忠告を冬乃は思い起こす。

 

 冬乃のわがままが沖田にとってわがままではない事と、きっと同じなのだ。先に伝えるか、後に伝えるかが違うだけで。

 

 本当はこうしてほしかったと、

 それを伝えることを躊躇わなくてもよかったのだと。

 

 

 「昨夜だって、どんな時だって本当は・・総司さんと少しも“離れて” いたくないんです」

 

 冬乃は沖田の眼を見上げたまま、想いを言葉に託す。

 

 「ですからいつだって・・・来て・・」

 だが言いながら、また好色だと思われること確実だと今さら気づいて羞恥に語尾が弱まりながらも、どうしようもなく。

 冬乃は只々耳まで熱くなった顔を俯かせ、額を沖田の襟に押し当てた。

 

 (も、もう)

 これでは昨日の昼間の事も、冬乃が怒っているはずがないどころか悦んでいたぐらいに改めて確信されてしまったに違いない。

 

 

 「冬乃」

 

 愛しげな。

 冬乃の大好きなその呼び声が。

 

 

 「最早、俺は夜番のたびに夜這いしそうだ」

 

 清々しいほどの声音を伴って降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 そしてそのたびに、翌朝は部屋食になる。

 

 

 と冬乃は内心で嬉しい溜息をついた。

 今朝もさっそく部屋食になっている冬乃たちである。


 (だけど)

 沖田の夜番のたびに翌朝これでは、

 この先、土方に気づかれるのも時間の問題な気が。

 

 朝が弱い土方が、自身もよく給仕に持ってこさせて部屋食をしている事も多いのが救いだ。広間に冬乃たちが居なくても、そんな日ならば知られることは無いだろう。

 だがそうかと思えば、時々ものすごく早く起き出していて朝食もしっかり広間で食べているものだから、油断も隙も無いのである。

 


 はあ・・

 

 蕩けて気だるい躰を沖田に後ろから支えられながら、先程から冬乃は背後の沖田に甲斐甲斐しく食事をさせてもらっていた。

 冬乃に食べさす合間に自分は飄々と平らげてゆく沖田を背に、そして冬乃は、今度は本当に溜息を零してしまった。

 

 「どうしたの」

 すぐ後ろで沖田が微笑う。

 分かっているくせに。

 

 冬乃は押し黙る。

 

 代わりに朝蝉の声が、少し開けてある障子の隙間から生ぬるい風とともに届いた。

 

 (・・そういえば)

 今じっとしていれば冬乃には問題ない気温だが、沖田には少々暑いのではないか。こんなふうにくっついていたら余計に。

 

 だからといって離れたくない冬乃は、後ろの沖田を窺い見た。

 心配したほどには暑がっているようでもなさそうな顔が冬乃を見返し、微笑んだ。

 「次、冷奴いける?」

 

 冬乃が次の食事をねだったと思ったらしい。沖田が問いつつ冷奴の器を二人の横に置いた膳から取り上げる。

 「・・おねがいします」

 たしかに、エサ待ち冬乃である。

 

 「口開けて」

 冬乃が言われた通りに背後の沖田のほうへ横向きに口を開けると、箸の上に乗った冷奴が口の奥へと押し込まれた。

 崩れて唇に少しついた豆腐のかけらを沖田が例の如く舐め取ってゆく。

 「…ン」

 と思ったら、今回はそのまま口づけが続いて。

 

 (お・・お豆腐っ・・)

 があるのに。侵入してきた舌に冬乃が驚いているうちに、少しもらうよとばかりに豆腐を絡め取られる。

 「んんっ…」

 返してー。冬乃が唇を塞がれたまま唸った、時。

 

 ゴホン!!

 

 (きゃっ)

 

 外からの突然の咳払いが響き、

 冬乃は目を見開いた。沖田が一寸のち仕方なさげに冬乃から唇を離し。

 

 「覗きとは良い趣味ですね。土方さん」

 剣呑な声で言い放ち、膳の向こうの障子へ向いた。

 

 (土方様!?)

 当然、冬乃は沖田の腕の中に隠れ込む。


 「覗きじゃねえッ障子開けてっから見えたんだよ!大体おめえ、俺が来てから接吻はじめただろ、いやがらせかッ」

 (え)

 

 「ったく部屋にも広間にもいねえから、どこ行きやがったかとおもえば、朝っぱらから此処で何してやがる!?」

 「朝餉」

 見ての通り分け合っていた。

 ニヤリと返す沖田に、土方がすぱーんと障子を全開し。

 

 「どういう食事の摂り方だよッ」

 

 

 ・・・いちいちツッコミで応酬する土方は、やはり沖田ととても仲良しだと思う。

 と冬乃が内心思ったことは秘密だ。



 「で、何用ですか」

 土方の反応に哂ったのか笑みを含んだ声音が沖田から向かった。土方が腕を組む。

 

 「今さっき黒谷から呼び出しが来た。・・戦の件だろう。近藤さんと俺の両方が呼ばれた。おまえにも護衛としてついてきてもらう」

 「了解です」

 「未来女、おめえはしっかり留守番してろよ」

 

 「・・・かしこまりました」

 沖田の腕の囲いから少し顔を出し、冬乃はまたすぐに引っ込む。

 あまり長く見られるとまた、彼のものすごい洞察魔力が発動して、今朝の“屯所では禁止の事” に気づかれかねないと。

 

 「近藤さんの支度が出来次第すぐ出る。総司おめえも支度始めろ」

 土方は命じ終わるとくるりと背を向け、さっさと去っていった。

 

 ほっと冬乃は息をつく。

 沖田が名残惜しそうに冬乃をぎゅうと抱き締めてから、優しく離した。

 「行ってくるよ」

 

 「行ってらっしゃいませ」

 冬乃は微笑み返して、暫しの寂しさに覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 戦の件。長州征伐の事だろう。

 

 冬乃は思い廻らしながら何度もいたたまれない想いで胸奥が潰されそうになっては、此処、近藤の部屋にてハタキの手を懸命に動かす。

 

 

 「・・冬乃ちゃん?」

 

 (あ)

 少し驚いたような声音に振り返れば、庭との風通しのために開け放っていた廊下側で藤堂が目を丸くして冬乃を見ていた。

 

 昨夜、藤堂とは夕餉の広間で再会を済ませている。彼がいま驚いているとすれば、

 

 「そんなに無心にハタキ振って、どうしちゃった・・?」

 

 頭の中に浮かぶあらゆる想念を振り払おうと冬乃が、必死の形相でハタキを振り回していたせいだろう。

 

 「ほ・・埃が取れなくて」

 下手な言い訳をする冬乃に、藤堂が心配そうに首を傾げる。

 「何か悩んでる事とかあるの?」

 

 冬乃はぶんぶん首を振った。

 「悩んでなんてないです」

 「俺、いつでも聞くよ?」

 (あ)

 「ありがとうございます・・!」

 

 結局御礼を口にしてしまってから、これでは悩み事があると認めたようなものだと気づくが遅い。藤堂は、少し苦笑した後、だが冬乃が話したくなった時に話すと思ってくれたのか、

 「近藤さんは?」と此処を訪ねた本題に入ってきた。

 

 「え、と。いま急な御用でお出かけなされてます」

 

 冬乃の返事に藤堂は残念そうに肩を竦めた。

 「じゃあまた次の機会にする。掃除がんばってね!」

 

 あっさり去っていく藤堂の背を見送り、冬乃は目を瞬かせた。

 

 (なんだったんだろう・・・あ)

 

 つと胸奥を掠めた一抹の感に冬乃は息を呑んだ。

 

 気づけば、藤堂が近藤たちと袂を分かつまでに、もう一年を切っているではないか。

 といっても未だ、彼にそんな兆しは見られないのだが。

 

 

 (藤堂様・・)

 

 藤堂は、山南のまだ居た頃に江戸から来て入隊した伊東の、同門であり弟子でもあり。

 

 伊東を新選組へ引き入れたのも藤堂だった。

 その伊東は、

 翌年になれば、仲間を引き連れて組を分離してしまう。

 

 そして、藤堂は伊東についてゆくのだ。長きに生死までも共にした近藤達を、・・親友の沖田達を、置いて。

 

 それでもそれは脱隊ではなく、

 分離という形であり。それが彼らにとってもしも表向きであったとしても、認識はあくまで分離した新選組の別部隊であって。

 だからこそ、そののちに起こる悲劇など、分離の時点では想像されていなかったとしか冬乃には思えない。

 

 悲劇――伊東も藤堂も、近藤達の『裏切者』として粛清される未来。

 

 

 (本当は・・きっとそんなはずない)

 

 

 冬乃には何ができるのか。

 藤堂の、望む死が・・何かを。

 その答えを冬乃は、もうずっと探している。

 

 

 

 あいかわらず生ぬるい風が漂うように吹き抜ける中、

 冬乃は止まっていたハタキを再開すべく、次の掃除箇所へと移動した。

 

 (どうして)

 のちにあの悲劇が起こってしまうのか

 

 再開したはずのハタキを手に、だが早くも冬乃の思考も再開し。

 冬乃は早々に諦めてハタキを下した。

 

 

 

 先の、幕府使節団への二度目の広島随行の時点から、近藤と伊東は長く別行動をしていたといわれる。

 すでに互いの思想の違いが、そこに顕れていたのかどうかは分からない。

 

 (・・でも)

 

 別々の時期に帰京した二人だが、顔を合わせればにこにこと話をしているし、時々飲みにも行っている様子で、とても仲違いしている雰囲気は無い。

 それどころか近藤は伊東を尊敬して接しているように見える。

 

 伊東もまた、さすが人望を謳われるだけあって、その切れるような才覚と相反してどこか山南のように人を包み込む柔らかさがあり、

 そして時折ものおもいに耽る姿は気品さえ纏い。

 

 仲間を裏切ったり騙したりする、そんな形容が重なるような人では全くなく。

 

 

 だから、

 

 (めざしていたものが同じでなければ、いくら藤堂様の誘いだからって入隊してこなかったはず)

 

 その違いがあったなら、伊東がそれに気づかなかったはずがない。

 まして違いを見抜きながら意気投合したふりをして本心は近藤を変えてゆくため、まして新選組を乗っ取るため、そんなまるで騙すような入隊であったはずもない。

 

 (伊東様はそういう人じゃない・・)

 

 

 (でも、だからこそ何で・・?)

 

 

 ――気懸りがあるとすれば。

 

 伊東が、山南と同じほど傷ついた顔をしていたことで。冬乃は今もはっきりと覚えている。

 

 天狗党処刑の第一報が、届いた時。

 伊東が、顔を背けてそっとその場を立ち去ったことを。

 

 昔に尊王攘夷活動にも励んでいた伊東なら、天狗党に知己もいたのではないか。

 

 

 (山南様は・・幕府に絶望して、組のために死ぬ道を選んで・・伊東様は、)

 

 幕府に絶望しても、

 生きる道を選んだのだとしたら。

 

 生きて、彼が行おうとする事は、なら・・・

 

 

 

 (あ・・)

 

 

 それはきっと、“倒幕” であって。

 

 

 (単純な倒幕なんかじゃ、・・ない)

 

 

 同じ惨劇をこれ以上起こさぬように、

 

 幕府そして国そのものの体質を変えてゆくことだったのではないか。

 

 

 その結果が、いずれ倒幕となるか、

 ならないかは。

 

 ならば未だ今の時点では、わからない。

 幕府が変わるなら。それで目的は達するのだから。

 

 そして、

 倒幕そのものが目的ではないからこそ、

 

 近藤と今も、同じ道を歩んでいる。

 

 近藤もまた、天狗党の惨劇に涙し、幕府を、国を良くしていこうと願っている一人なのだから。

 

 

 

 (・・だとしたら・・・)

 

 この先の伊東の行動も、また決して近藤達を裏切るものではなかった・・?

 

 

 

  

 冬乃は、握り締めていたハタキを落とした。

 その場で座り込み、記憶の底を掘り起こしてゆく。

 

 


 薩摩が。

 

 同じく幕府を変えていこうと、幾たび虐げられてもなお奮闘し続け、だがその想い空しく。幕府に遂に見切りをつけ、討幕へと舵転換をしたのは、

 いつだったか。

 

 

 冬乃の知るかぎり、それは今上天皇である孝明帝亡き後の、翌年慶応三年五月末、

 四侯会議と呼ばれる雄藩の元藩主らが集まっての幕府改革、実質第一歩目ともいえる試みが、失敗に終わった後だ。

 

 西郷などは、もっと早い段階で心積もりしていた可能性も高いが、薩摩のトップ自らの舵転換はこの時期以降だろうといわれる。

 

 そもそもこの四侯会議は、その後の朝廷会議の事前準備としての会議だったのだが、四侯による決議に至るまでも激論が絶えず、

 なんとか穏健な決議が出てからも、まず薩摩家中の激派である大久保の働きかけによって変更が為され、或いはその事も影響したか親幕派の土佐が完全に離脱、続いて薩摩をも含めた残りの三侯も朝廷会議への欠席を表明する事態で、幕府改革以前に四侯会議側が分裂していた。


 一方で幕府の権威を死守すべく朝廷会議で粘った慶喜の知略によって、この幕府改革の第一歩とも呼べる試みは阻止される事となる。

 

 

 これまでは、

 孝明帝が。こういった幕府をないがしろにするかのような改革の一切を、認めなかった。

 

 序列を重んじ、あくまで幕府の絶対的権威を回復維持し、そのうえで諸侯が従い改革を行ってゆく事こそが泰平への道とする孝明帝の想いは、当時、まだまだ当たり前の考え方であり、そして、

 

 当たり前でなくしようとすることが、薩摩らのめざした幕府改革であった以上。

 或いは到底、相容れるものでは無しに。

 

 

 

 この先、最後まで見切りなどつけず見捨てず。幕府を支えての改革を求め続けた亡き孝明帝の想いを引き継ぎ、忠義を貫いた近藤達と。

 

 幕府を変えることを諦め、新しい国を立ち上げる道を選んだ討幕派の志士達は。

 

 それでも初めから終わりまで、より良い国を求めたことならば同じだった。

 

 (・・なのに)

 同じ終点をめざしながら、

 そのために採った相容れない道の統一に、最後まで両者は、血で血を洗う惨劇を繰り返した。

 

 

 

 この先の近藤も伊東も、また同じように、やがて互いの道が離れてしまうのだろうか。互いの手を、取り合えなくなるほど遠くまで。

 

 だが天狗党の結末に心を痛め、もう同じ惨劇を起こさぬ国をめざすと、きっと亡き山南にも誓ったであろう伊東が、

 武力による討幕へ向かってゆくとは、冬乃にはどうしても思えない。

 

 本当に、近藤と伊東達はのちに殺し合わなくてはならないほど、思想を違えていたのだろうか。

 

 

 

 伊東たちの分離は、薩摩の舵転換つまり四侯会議の失敗よりも前だ。

 

 未だ四侯会議を足掛かりとする幕府改革の実現に、期待が残っていた時期で。

 

 この時点で伊東達と近藤達の歩む道が掛け離れていたかというと、さすがに疑わしい。

 

 たとえ近藤が、亡き孝明帝の願いに忠実に、幕府の権威回復をまず第一に考えていようと、

 そして伊東が、幕府改革においては、それを第一に考えてはいなかったのだとしても。

 

 二人のめざす終点が同じ――動乱の終息――である以上、本来、紙一重の違い。

 

 それともその紙一重が。すでに表裏ほどの掛け離れた違いだったというのだろうか。

 

 いずれ修復しようもなくなるほどの。

 

 

 (だとしたら、私には・・どうしようもできないの・・?)

 

 この歴史の大波を止めることなど叶わなくても、

 

 せめて二人の別離の歩みだけでも。もう互いの手の届かないところまで離れてしまう前に。

 

 (・・きっと何か、できることがあるはず)

 

 

 冬乃は震える息を細く吐き出した。

 落ち着いて、この先の二人の言動に気を張って、冬乃にできる方法を探ってゆくこと。

 

 冬乃は決意を胸に、今度こそハタキを手に立ち上がった。



 (絶対に、)

 

 藤堂を裏切者として喪うなんて未来は。

 

 

 (変えてみせる)

 

 

 

 

 

   


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