プロローグ

相生隆也

プロローグ

燦々と輝く太陽の下、皆が忙しく働いている。

「なぁおっさん!これくれよ!」

5、6歳くらいで癖毛のある茶髪な髪の男の子が露天商に頼んでいる。母親からのお使いであろうか、食材の書かれているメモを片手に最低限のお金で買い物をしている。その様子を通りを歩く人や露天商たちは微笑ましく見守っていた。

彼らは皆、男の子の弟の体が弱く床に臥せっていて母親がそれにつきっきりなのを知っているのだ。少しでも母に楽をさせたい、手助けをしたいと泣きながら思いを語る男の子を皆が覚えている。


「おい、坊主。これもおまけだ。」

そういい果物屋の店主は、瑞々しい果実を手渡した。

「おっさん!こんな立派なターナを貰ってといいの?」

男の子は、戸惑いながら聞いた。

「勿論だ。これはな、食べることには問題はないが、よく見ると小さな傷が付いててな売り物には何ねぇんだわ。だからな、これ食って精をつけろよ。」

男の子は嬉しそうに

「ありがとう!おっさん!」

礼を言って走り去って行った。

「早よ、食べろよー!」

店主の声が、男の子を追う。

男の子は、今日あった出来事を母に早く伝えたくて必死になって走った。


「え?」

家には、冷たくなった母と弟がいた。

暫く呆然とし、荷物を落としターナの実がころころと、弟との顔の横にまで転がっていった。

「うわぁぁん。」

男の子は、大声で泣き喚いた。男の子の家は町の外れにあったが、近くを通った人が気づき、男の子に良くしていた色んな人が心配して男の子を見に来た。


果物屋の店主が男の子を抱きしめる。

「泣くな、泣くんじゃねぇ!男なら泣くな!」

男の子は目に涙を溜め、店主の顔を見る。

「おっさんだってぇ、泣いてんじゃねぇかよ……。」

堪え切れ泣くなり、2人して泣き出してしまった。


翌日から、男の子は果物屋の世話になった。

あの後、母と弟を丁寧に埋葬してくれた。

そして、なりより

「坊主、おめぇよ、これからどうすんだ?当てなんてねぇだろ?…もし、おめぇさえ良ければ、俺んとこ来ねぇか?」

不器用だけど、不器用なりに心配して俺を引き取ってくれた。

だから、今日からは

「おい、親父!もうお天道様は登ってんだ!早く起きろ!」

親父って呼んでもいいよな?

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プロローグ 相生隆也 @carlot

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