Act.0003:わたくし、死ぬかと思ったニャ!
まず結果だけ述べれば、
そう、
それはもう過去。
今は、1機も立っていない。
なぜなら、4機とも
そしてその
それは信じられないような出来事だった。
そして完成した
逆に言えば、魔力供給者との接続を切ってやれば、
「――というわけで、
「そんなことわかっていますニャ! でも、ぜんぜん簡単じゃないニャ!」
言うは易く行うは難しだが、それを
いや、
「わたくし、死ぬかと思ったニャ!」
「いやぁ~怖かったですね」
「あなたは、なーにもしてないニャ!?」
「作戦の立案と、罠の作成はおこなったじゃないですか」
「でも、わたくし1人で囮でしたニャ! 1人で
「ボクにはできませんから。軟弱なんで!」
「すがすがしいほど、恥じずに言い切りましたニャ!」
確かに、彼の作戦はすごかった。
ほぼ完璧だった。
内容的には、非常に単純。
まずは周囲にあった蔦を切り、より集めて太い縄を作り、一定間隔で配置する。
すなわち罠である。
それを短時間で準備するのは、かなりの重労働だった。
しかし、自分を軟弱だと言った
もちろんアニムは「これに何の意味があるのか」と尋ねた。
すると彼は手を休めず、楽しそうに説明してくれた。
「まず
「そ、そうなのニャ?」
だから、四型にそんな特徴があったこともよく知らなかったのだ。
「それからもうひとつ、四型……というか、一型から四型までに共通した弱点があります。それは襟の内側の首。なぜかインナーフレームの首の部分が丸見えなんです」
「でも、そんな狭い隙間、狙いにくいですニャ。あまり意味がニャい――」
「あまい! そういう隙こそ、狙われるのが定番でしょう!」
「定番!?」
「そうです。そして、ボクらもそこを狙います。話は簡単です。罠で転ばせたら、貴方が首元に行き、首のインナーフレームに雷の魔法を叩きこむ。インナーフレームに直接、電気を流すのはかなり強力なんですよ。いわゆる
「でも、首元に辿りつく前に、体勢を直されてしまうのではないですかニャ? それに手をつかれては……」
「四型は14.3メートル。肩の可動範囲、腕の動かし方などから手をつくだいたいの位置は予想がつきます。そこの近くに待機して手をつこうとしたら、その地面をへこませてバランスを崩してください。拡張十属性の雷が使えると言うことは、基本四属性の地と風は、かなり使えますよね。なら、地面をへこませたり、風の魔法で高速移動や、ある程度の飛翔もできるでしょう?」
「で、できますけどニャ……」
魔法は確かに使える。
しかし、そんな言うほど簡単に作戦が遂行できるはずはない。
とは言え、他に方法もない。
仕方なく一か八か、出会ったばかりの男の子に賭けてみたのだ。
そして、アニムは賭けに勝った。大勝利だった。
言われたとおりに囮行為をすると、彼が予想したように敵は動いた。
足の動かし方、視界の見え方などから予想したと言うが、アニムから見たらそれ自体がもう予言魔法のようだった。
1回だけ予想が外れ、縄を避けられたがその対策も指示されていた。
単純だ。足がつく場所の地面を横に転ぶようにへこませればいい。
それだけで四型はバランスを崩したのだ。
「四型は正直、欠陥
その話を聞いて、アニムは恥ずかしくなる。
まさにそれは、自分の国。
「しかし、パイロットの質もあまりよくないですねぇ。足運びから大したことないかなと思っていたけど、腕が確かならあの程度で転んだりはしないからなぁ」
「……で、でも、彼らは1時間以上も操縦していたニャ。きっと疲れて――」
「1時間ぐらい大したことないでしょう。ボクの知っているパイロットは、適正レベルならみんなそのぐらいできると言っていましたよ」
「そ、そうなのニャ……そう……」
恥じいるあまりうつむいて言葉が紡げなくなる。
自分がエリートだと思っていた兵士は、そんなにレベルが低かったのか。
確かに「エリート部隊」と言われている人数は、全体の半分はいる。
少し多いなとは思っていたのだが、日本王国に占領されていない、数少ない国でもあるという誇りもあった。
すなわち「自分の国はすごい」という己への欺瞞が、目を曇らせていたのだ。
「まあ、でも笑っちゃうぐらい上手くいってよかった。これで逃げられますね」
確かに気絶したパイロットたちは、彼らが衛士として持っていた拘束具で逆に動けなくしている。
無論、武器も
これで追っ手はいなくなった。
なんだかんだ言っても、1人でこの状況にもっていくことは不可能だったであろう。
変な男だったが、命の恩人にアニムは頭をさげる。
「あ、ありがとうございますニャ……」
「いえ、それはいいのですが。できたら、近くの街まで案内してもらえませんか」
「それはもちろんかまいませんニャ。お礼もなにか……」
「お礼とかは別にいいです。ボク的には実験が巧くいっただけでも成果ありましたから。あ、この
「あ、はいニャ。しかしですニャ、せめてお礼に――!?」
轟音が、アニムの言葉を遮る。
空気を揺らし、空を覆う影が頭上にかかる。
遅れて木々が震え、風が舞い踊り、2人の髪を巻きあげる。
「あ……あれは……」
翼はなく、飛翔ではなく跳躍。
陰を脱いで現れたのは、太陽を感じさせるオレンジのボディ。
それは2人を通り過ぎると、今度は少し離れた場所で大地を震わせた。
そしてメキメキと木々が折れる音で、アニムの心を震わす。
「珍しい機体だな。あのデザインは、グロリア社製のクリムゾン系?」
その
「そうニャ。クリムゾンのカスタム機体【ディヨス】。パイロットは、【プサ・ハヨップ・タオ聖国近衛隊】で最強を誇る三大衛士のナンバー3【ヒンディ・ルー】。簡単に転んでくれる相手ではないのですニャ……」
予想外の追っ手に、アニムは下唇をかるく噛むのであった。
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