第7話 カメオ(その三)
紅茶の甘い香りが強くなったと
淹れ直した紅茶をトレーに乗せて彼女が戻ってきたのだ。
「
「そう、今を守ることにしたのね」
「そうよ。……それで、カメオを付喪神にする話なのだけど、認めるわ」
「それは……嬉しいのですが……条件はどうなるのでしょう?」
恐る恐ると、どのような条件が出てきてもみっともない反応しないよう慎重に
「今はまだ会えないけれど、彼に会おうと思った時には手伝って貰いたいの」
「お手伝い?」
「そう身構えなくてもいいわ。会う前に私を勇気づけてくれるとか、その程度だからね」
「その程度なら……。では早速、カメオに付喪ベビーを憑依させますので、ご用の時はカメオを握って僕を呼んでくださいね」
「たまには遊びに来てね」
玄関で彼女は
「お茶菓子も出るなら、また来てもいいわ。紅茶美味しかったし」
「判ったわ。用意しておく」
・・・・・
・・・
・
「彼女は急に許可してくれたけれど、どうしてだろう?」
彼女の家を出た後、
表情が違う二人の顔を夕日が照らしていた。
難しい顔をしている
「気付いたからでしょ。あのカメオは彼女が逃げた証でしかないって」
「ふーん、そういうものなのかなぁ。彼と会う気持ちにいつなるんだろうね」
「再び会うことなんて無いわ」
「え? でも……」
「馬鹿ね。私達に話した思い出……あれは彼女なりの懺悔のようなものよ。付喪神にすることを認めたのは、お布施みたいなものよ」
「懺悔?」
「そうよ。誰かに話して、気持ちを整理したかっただけ」
「何故、僕たちに話したんだろう?」
「私達は、彼女が生きる社会と関わることがないからね。現在の人間関係に影響しない私達になら話せたの」
「つまり、何も変えるつもりはないってことかぁ」
「そうでもないわ。表向きは何も変わらないかもしれない。でも……彼女はもう過去を振り返らないんじゃないかしら」
夕日に照らされて赤く染まった
「
「尊敬した?」
「うん、ちょっとね」
「惚れた?」
「いや、そこまでは……」
「私と一緒に過ごしたいなら、惚れて尊敬しなさい。
「そこまで自分に自信持てるのは、いつも思うんだけれど、どうしてなんだい?」
「誰にも恥じることがないもの」
キッパリと言い切る
これまで、生意気な付喪神としか
「ハハハハ、さすがは
「不安だったの? 気に入らないわね。それにしても付喪ベビーって誰が名付けたの?」
「縄文さまさ。霊体を憑依させると言うよりは気持ち悪がられなくていいだろうって」
「ふーん。いいけれど、もっとセンスある呼び方ないのかしらね」
「そんなこと言ったら、縄文さまはきっと怒るよ。忙しいのにそんなことまで考えていられるかって」
「そう。さ、帰るわよ。縄文さまへの報告は
おい、一緒に行かなくていいのかよと言う
そして昔ならこの時間でもまだ子供達が遊んでいるはずの、今は誰も居ない公園を横切ってスウッと消えた。
「やっぱり自分勝手だな」
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