ハレンチ学園演劇部オーディション(原著者:青瓢箪さん)

 本日は、本誌のインタビューに貴重なお時間を割いていただき、本当にありがとうございます。


「かまわないわ。でも、わたしのインタビューなんか、いまさらわざわざするまでもないと思うけどねえ。毎日舞台に立って演じているんだし」


 いえいえ。みなさんは、エリカさんの演技が本当に演技なのかどうか、興味津々なんですよ。


「もちろん、演技よ。舞台で本番はできないわ」


 そうですよね。さすがに法律上……。


「そういう意味じゃないわよ。本当にヤると芸じゃなくなっちゃうからね」


 ううむ。さすがプロでいらっしゃいますね。


「当然よ。だてにこのトシまで演じ続けてないわ」


 御年、八十六歳になられましたね。


「レディーに年の話なんかするもんじゃないわ。アレの話ならいいけど」


 はっはっは。これは一本取られました。


「まだまだね。一本取られたじゃないでしょ。一本ヌかれましたでしょ」


 すみません……修行が足りませんでした。


「女とベッドに恵まれてないってことね」


 ううう。どっちがインタビューされているのか、わからなくなりました。


「そろそろ本番に入りましょう」


 すみません、脱線して。


「なに言ってんの。本番と聞いたら、すかさずオンナの腰に手を回すくらいじゃないと」


 ええと。くすん。


「いい男が泣くんじゃない。流すなら、アソコから白い唾液を流しなさい」


 エリカさんがこの道に入られたきっかけをお伺いしたいんですが。


「ちっ。わたしのツッコミを無粋にかわしたわね。まあ、いいわ。きっかけは演劇部のオーディションよ」


 おいくつの時ですか?


「まだ十五。ハイスクールに入ったばかりね」


 それまでのキャリアは?


「ナッシングよ。ウブな生娘ってことね」


 エリカさんに、そんな時代があったとは……。


「バイブ持って生まれてくる女の子なんかいないわよ」


 そ、そうですね。


「その頃は、エロのエの字もなかったわ。ただ、演劇部の部長がスーパーエクストラファインだったの」


 どストライクってことですね。


「もう、彼のためならなんでも演じちゃう。じんじん痺れたの」


 アソコが、ですか?


「いいえ、その頃はまだ未開発だったから」


 部長の視姦だったんですね。


「どうでしょ? 彼は本当に役作りを考えてたみたい。そっち系のケはなかったわね」


 それは意外だ!


「演劇というのは、感動だの芸術だのくっさいこと言ってたんじゃ、客を呼べないの。まずネタよ。板に立つなら、がっつり受けるネタが要るわ」


 それがシモだったんですか?


「もちろんよ。そっちメインというより、舞台度胸とアドリブ力、演技力、客を引き込むガッツ。部長は、そういう素質を見抜きたいって考えていたんでしょ。だからあえてえげつないネタを振った」


 あまりにえげつないと思いますが……。


「まあね。普通の高校なら本来は即テイガクものでしょ。うちの高校が特別ホーニーだったってことね」


 ほーにー……ですか。


「日本風に言えば、『おっ立ってる』ってことよ」


 とんがってる……じゃないんですか?


「まあ、似たようなものよ。イクまで五分十分の差でしょ」


 五十歩百歩……いや、それでどのようなリクエストだったんですか? まさか、すぐに脱衣……とか。


「さすがにないわね。他の子もいるし、机の上だとイタいから」


 ちーがーうーでーしょー。


「まあ、いいじゃない。彼のオーダーは三つよ。それも立て続け」


 ほう。どんな?


「ミレー作、チン毛拾い。パコ太郎作、ペンおっぱい恥部アップペン。太郎くんと花子さんの手による生殖行動」


 うーん……。


「どうなさったの?」


 いまいちネタとしては際どさに欠けるような。


「オトナの汚い世界じゃないわ。正しく光り輝く青少年なのよ。当時のわたしたちには十分際どかったの」


 確かに。それを演じきったのですね。


「もちろんよ! わたしの愛の力をもってすれば、シモネタレベルのことなら瞬殺ね」


 その情熱で、部長も瞬殺されたんですか?


「いいえ。部長は芸の道に厳しかったの」


 なるほど……それはそれこれはこれ、ということなんですね。公私混同なさらなかった、と。


「ううん。部長は真性のゲイでね。ノーマルに引っ張り戻すのに時間がかかったの」


 さいですか。


「それでも、愛するスズキ部長とのコンビで、わたしはその道を極めたわ」


 そこから先は、みなさんが知っておられるエリカさんの偉業に結びつくわけですね。


「そうよ。カーネギーホールを常時フルチン……もといフル填できる大物女優になった」


 そして、今は……。


「ええ、スズキ部長は、それからずっとわたしのプロデューサーであり、かけがえのないパートナー。あ、夫がわたしを呼びにきたわ」


◇ ◇ ◇


 エリカさんに容赦なくツッコミまれ、取材時間が予定を大幅超過していた。私は、大統領首席補佐官のスズキ氏に睨まれて、慌てて取材を切り上げる。


「大統領閣下。本日は取材をお受けいただき、本当にありがとうございました」

「ほほほ。ごめんなさいね。これから全国民に向けて、テレビでむらむらっとくる演説をぶちかまさないとならないのよ。これで妊娠検査薬の売り上げがばんばん増えるわ。全米の人口減少に歯止めをかけないと、公約違反になるからね」


 にっこり笑った大統領は、私に向かって中指を突き立てた。


「やー、まざふぁっか!」



【おしまい】


 原典 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885027194/episodes/1177354054885027198

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