ウェザーリポート
7時50分、僕は公園に着いた。簡素な公園だ。滑り台、砂場、ブランコ、それが小さなスペースに押し込められている。
「おはよ」
深雪はブランコに座っていた。久しぶりの私服は、何だか彼女を別人みたいに見せている。
「おはよう、晴れたね」
「うん、もしかしたらそういう力持っているのかな、わたし」
「どうなんだろう、今日もやってみたら?」
「いや、今日はいいや」
深雪は一向にブランコから降りようとしない。
僕は深雪の隣のブランコに座る。鉄の鎖が冷たい。
「もしわたしにそういう力があるとしたら、天気のことなんかに使うのはやめるよ」
深雪はブランコの上に立ってゆらゆらと揺れ始める。一度ブランコに立ってしまうと、今日みたいに地面が緩い日はもう座ることができない。
「じゃあ、どんなのに使うの?」
深雪は無視してブランコから飛び降りる。
体操選手みたいに着地して僕の方を向く。
「一つだけ、言わないといけないことがあるんだ」
「うん、お金が足りないとか?」
「そうじゃなくて」
深雪は黙り込んで、僕はどうしようもなく遠くを見る。
車道に人が見えた。小さな男の子と女の子。男の子に見覚えがあった。あのくつを飛ばした子。
あの子の願いは叶ったのかな。
「じゃあ言うよ」
「うん」
大きく息を吸い込んで
「実はね……」
ウェザーリポート キツノ @giradoga
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